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はぐれ召喚師の気まぐれライフ  作者: 柚子ポン酢
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召喚師と召喚獣


お待たせしました!



「さあ、あそこに見えるのが召喚師育成学校です」


ドラグさんと雑談しながら歩くこと約20分。私がこれから召喚師になるために通う学校が見えてきた。

外見は背丈以上の塀に囲まれ、大きな運動場を挟んだ向こうに校舎が見える。デザインは神殿に似た石造りで丈夫そう。

しかも、宿屋からそんなに離れてないから通学もしやすい。


「案外、大きいんですね」


「そうですね〜。あそこは生徒や教師の他に召喚獣も居ますから、大きくないと収まらないんですよ」


召喚獣か・・・。

呼び出した者の接し方で道具にも友人にもなり得る存在。

どんな姿をしてるんだろう?喋るのだろうか?

ワクワクする気持ちと少しの不安を抱えながら、学校を目指す。


「良い学校生活になるといいですね」


「私は協調性があまり無いと言われたことがあるので、ちょっと心配です」


・・・人間の友達もできるといいなぁ〜。


「神官様ーーーーーーー!!!」


「おや?」


「ドラグさん、呼ばれてますよ?」


思わず、立ち止まり声の主を探すと学校の方からドラグさんの名前を呼びながら走ってくる一人の男性。

学校関係者だろうか?


「あの方は召喚師育成学校の教師ですよ」


「へぇ〜、走るの早いですね〜」


ものすごく早いんだよね、あの人。

だって、学校からここまで軽く一kmくらいあったのにもう十m切ったもん。


「あの人の属性は風ですからね〜」


「属性関係あるんですか?」


「ありますよ。それぞれ、得意なことも違ってきます」


「そうなんですか」


属性によって、性格とかも別れるんだろうか? なんと言うか、血液型診断みたいだ。


「神官様ー!!」


「どうなされました、シエロ殿」


シエロと呼ばれた男性教師はふわふわとしたマロンブラウンの髪に淡い緑色の瞳を持った優しげな人。

ピシッと着こなされた黒い背広はまさに教師といった感じだ。


「今日、新入生を連れてこられるとの事でしたので出迎えに来ました」


「そうでしたか。こちらが新入生の彩君ですよ」


「はじめまして、辻鞍 彩といいます」


ドラグさんにぽんっと背中を押され、慌てて挨拶をする。

いきなり、紹介されたから心の準備が・・・(汗


「はじめまして、俺はシエロ・ジェード。召喚師育成学校で教師をしている、よろしくね」


「こちらこそ、よろしくお願いします!」


そっと差し出された手を取り、握手を交わす私達を微笑ましそうにドラグさんは見つめていた。


「彩君のお迎えも来たことですし、私はそろそろ仕事に戻りますね」


「ドラグさん、ありがとうございました!」


「いえいえ、君の新たな門出ですから」


ローブの端を握り、お礼を言う私の頭を優しく一撫でしてドラグさんは神殿へと帰って行った。


「それじゃあ、学校へ行こうか」


ドラグさんの姿が見えなくなるまで見送る私をそっと見守っていたシエロ先生が歩き出す。


「はい! 召喚師育成学校ってどんな感じなんですか?」


「んー、基本は普通の学校と同じようにノートと教科書を使った授業。それと召喚に大切な魔力のコントロールの仕方などを教えているよ」


「・・・私の世界の学校とほぼ変わらないです」


黒板見て書き取りかぁ〜、寝ないように気をつけなきゃ。


「あ、言い忘れたんだけど」


「なんですか?」


「僕が君の担任だから分からないことや困ったことがあったら気軽に相談してね?」


・・・この人、担任だったのか!

まあ、厳しそうな担任だと聞きたいことも聞けないし、シエロ先生みたいな人でラッキーかも?


「そうそう、学校に着いたら召喚の儀をしてもらうことになる」


「召喚の儀?」


先生が言うには召喚師には一番初めのパートナーを決める儀式のことを召喚の儀というらしい。

そして、そのパートナーと一緒に召喚師とは何なのかを学んでいくのだそうだ。


「最初はやり方もわからないし、一人で召喚するには危険も多いから教師が付き添うことになってるんだ」


「なるほど・・・」


「最初のパートナーはとても大切な存在なんだ。ゼファー!」


「っ!?」


シエロ先生がゼファーと叫んだ瞬間、ブワッと先生を包むように風が吹く。


「ほう、この子が新しい召喚師か」


風から目を守るために閉じていた目を開くとそこにはシエロ先生の肩に止まる大きな大鷲の姿があった。

その大鷲は淡い黄緑色のオーラの様なモノを帯びていて、微かに風を集めている様に感じる。


「こいつはゼファー。俺の最初のパートナーであり、相棒だ」


「よろしく頼むぞ、幼子よ」


・・・これが召喚獣。

自らの接し方で道具にも友にもなり得る存在。


「・・・・・・・」


「あれ? 彩君、固まっちゃった?」


「お前がいきなり我を召喚するからだ、馬鹿者」


「えっー! 俺のせい!?」


ゼファーを見つめたまま固まる私にシエロ先生が慌てて、ゼファーがそんな先生を叱る様に先生の頭を突っつく。


「すいません、もう大丈夫です」


「なかなか、復活が早かったな。幼子よ」


硬直から復活した私を感心した様に見つめるゼファーと突っつかれて涙目のシエロ先生。

力関係はゼファーの方が上なのだろうか?


「はじめまして、ゼファーさん。私は辻鞍 彩。よろしくね」


「さんはいらぬ。しかし、召喚獣に面と向かって挨拶するとは珍しい」


「そうなのですか?」


珍しいと言われて首を傾げる私にシエロ先生が苦笑いしながら教えてくれた。


「召喚獣を道具として見ている者も多くいるんだ。今はこうやって育成学校が出来たことで少しずつ変わってはいるんだけど、昔は酷かったらしい」


「そう、なんですか・・・」


「彩よ、悲しむことはない」


シエロ先生の言葉に俯いてしまった私の肩にゼファーがふわりと飛んできた。その大きな体に似合わず、ゼファーの体はとても軽くて暖かかった。


「彩君、召喚獣は召喚する者によって道具にも友にもなる。君はどうしたい?」


友達になりたい。

ドラグさんやリムさん、アムさんにも言った言葉。

それともう一つ、決めた事がある。

きっと、私は道具として扱われている召喚獣を放っておけないと思う。

だから、私に出来る範囲で変えていこうと決めた。

俯いていた顔を上げて、先生の目をしっかり見て高らかに宣言する。


「私は召喚獣と友達になりたいんです。そして、道具として扱われている召喚獣がいたら助けてあげたい」


「そうか。それは嬉しいな!」


「そうだな。しかし、無理するでないぞ」


「はい!」


本当に嬉しそうに笑うシエロ先生と私の髪を嘴で優しく撫でるゼファーに私も笑った。


「さて、到着だ」


「わぁーっ!」


学校に到着し、改めて見た校舎はとても大きくて威厳たっぷりだ。


「・・・あの迷子になりませんかね?」


「あははは、毎年新入生は必ず迷うよ」


マジか・・・。

地図でも作ろうかな。そしたら迷わないだろうし、何かあった時に使えるかもしれないし。


「さて、改めまして・・・」


くるりと私の方に向き直ったシエロ先生が笑う。


「ようこそ!召喚師育成学校へ!」








いよいよ、召喚獣が登場しましたね〜。


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