行ってきまーす!
えー、更新時間ですが毎日22時くらいにしようと思います!今後とも、よろしくお願いします!
「ピチチッ!」
「うっ・・・うーん、起きてる。起きてるから・・・」
ボスっと音を立てて、ベッドで眠る私に飛び込んできたノーチェを撫でながら体を起こす。
「・・・・・・・・・」
昨日はこの世界に来てピンっと張られたままだった緊張の糸が緩み、みんなの前で泣いてしまった。
その上、泣き疲れて眠ってしまったらしい。
「・・・気まずい、恥ずかしい」
もう、穴があったら入りたい(泣
泣き疲れて寝るとか子供か!と思いつつもみんなの優しさは嬉しかったし、でも恥ずかしいっと一人悶々しながらノーチェをもふもふする。
「クルルっ・・・」
「(可愛い・・・)」
現実逃避も兼ねてノーチェを撫で続けているとコンコンっとドアをノックする音が聞こえた。
「はい」
「あらあら、起きていたのね。おはよう、彩君」
「おはようございます、リムさん」
部屋に入ってきたリムさんは持っていたものを私が座っているベットに置いた。
「これ、着替えね? 昨日、アムが作ったの」
「えっ、寸法したの昨日ですよね!?」
「ふふ、アムは裁縫が得意だもの。これくらい朝飯前よ」
パッチンとウインクをしたリムさんはとても嬉しそうだった。
私はノーチェをリムさんに預け、アムさんが作ってくれた服を広げる。
「わぁ〜、これいいですね!」
黒を基調にしたジャケットとデニムのストレッチパンツ。中に着るシャツは白だが胸ポケットに蔦の刺繍がしてある。
ぱっと見、男性用だが着こなしによっては女性用にも見える。
「アムが自信作だって、はしゃいでいたわ」
「アムさん、昨日の間にこれだけの物を作るなんて凄い・・・」
私だったら、シャツすら完成しないだろうなぁー。
「さあ、着替え終わったら食堂へいらっしゃい。ご飯にしましょう♫」
「分かりました!」
リムさんはノーチェを連れて、食堂へ向かった。
私も早く着替えて行かなきゃ。
「うっわぁー、手触りいいなー」
シャツは通気性がよくサラサラとした感触、パンツもピシッとしていて美脚効果がありそうな作りだ。
ジャケットなんて、とても軽い素材で内側には内ポケットまで付いている。
「アムさん、プロか・・・」
アムさんの職人並みの腕前に驚嘆しつつ、着替えを終え、食堂へ足早に向かう。
「アムさーん!」
食堂のドアを開け、お礼を言うべくアムさんを探す。
「はいはーいって、彩君似合うー!!」
私の呼びかけに厨房から顔を出したアムさんが飛んできた。
「この服、ありがとうございます!」
「お礼なんていいのよ! どう?どこかきついところとか無い?」
「いえ、ものすごく着心地いいです!」
きゃっきゃとアムさんと戯れ合う。
しかし、これだけの服を用意してもらったのに一文無しなのが辛い。
「この服のお代は働いて必ず払います!」
「あらあら、服のお代なんていいのよ?」
「そうそう、アムの趣味も兼ねてるし」
厨房から朝食を運ぶために出てきたリムさんまでアムさんの意見を尊重するらしい。
うぅ、だったら・・・
「じゃあ、給料から少しずつでもいいんで引いて下さい!」
これだけは譲れないとばかりに二人に詰め寄る。
何かをしてもらったのに何もしないのは嫌なのだ。
「うーん、それならいいかしら? ね、アム」
「うーん、仕方ないわね。リム」
渋々といった感じではあるが、二人は了承してくれた。
よし、勝った!
「さあさあ、ご飯にしましょ!」
「彩君、お代わりもあるからたくさん食べてね!」
「はい、ありがとうございます!」
三人一緒に席につき、朝食を食べ始め、ノーチェも止まり木近くに置かれた餌を突っついている。
なんとも平和な朝である。
「あ、そうだわ。今朝、神官様がいらしたの」
「えっ? ドラグさんが?」
「ええ、今日の昼前に彩君を迎えに来るって言ってたわ」
「確か、学校がどうとかって言ってたわね」
あ、召喚師育成学校の事かな?
住むところが決まったら、通ってもらうって言ってたし。
「あの、僕。召喚師になろうかと思ってるんです」
「「あら!」」
私が強い魔力を持っていること、ドラグさんから色々な職業の案内を受けたこと。
そして、私が召喚師になりたいと思った理由、全部話した。
「・・・動物をもふもふしたいからなんて彩君らしい理由ね」
「そうね、ノーチェを撫でている時の彩君は本当に幸せそうな顔をするものね」
頼むから、ものすごく可愛いものを見るような目でこちらを見ないで頂けないだろうか。
だって、しょうがないじゃないか!
「もふもふしてるモノを見るとどうしても撫でたくなるんです!」
そう言い切って、俯きながら食事に集中する。
「ふふ、お友達になってくれるといいわね?」
「はい!」
「大丈夫よ! 彩君は可愛いもの!」
アムさん、それは理由にならないと思います。
それから、みんなでわいわいと雑談しながら食事を済ませ、片付けを手伝う。
「はい、彩君。これ拭いてくれる?」
「分かりました」
受け取ったお皿を落とさないように拭き、食器棚の前にいるアムさんへ手渡して行く。
一人で片付けるのは大変だが三人だとすぐに終わりそうだ。
「チリリンッ」
ちょうど、片付けが終わりかけた時、宿屋の入り口の方から来客を知らせる鈴が鳴った
「ごめんくださーい!」
「あら、あの声は神官様だわ」
「彩君、ご案内してくれる?」
「はーい!」
パタパタと入り口の扉を開け、ドラグさんを招き入れる。
「おはようございます、彩君」
「おはようございます、ドラグさん」
にっこりと笑い合いながら挨拶を交わす。
なんか挨拶して返事が返って来るってすっごく平凡だけど、嬉しいよね!
「今日は君を召喚師育成学校へお連れします。多分、帰るのは夕方になると思いますから何か食べるものを・・・」
とドラグさんが言いかけたところですかさず、アムさんが私にはいっと何かを手渡す。
「はい、彩君。お弁当〜」
「ちゃーんと準備しておいたわ!」
用意周到ですね、お二人とも。
お弁当を準備されていたカバンに入れて入り口に立つ。
「ふふ、準備万端ですね」
「はい。リムさん、アムさん、ご飯美味しかったです」
「ふふ、お弁当も期待してね!」
「気をつけて、行ってらっしゃい」
手を振って見送ってくれる二人を振り返り、笑顔で言う。
「行ってきまーす!」
次の舞台はこの物語で一番大切な事を学ぶ場所である召喚師育成学校になります!
どうぞ、お楽しみに♫