表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
はぐれ召喚師の気まぐれライフ  作者: 柚子ポン酢
11/34

リーベルタール異世界人事情



「立ち話もなんですから、おかけになってください」


そう言って、ドラグさんが資料室内にある四人掛けのテーブルへと私たちを誘う。


「ありがとうございます」


宿からここまで団長さんの不幸のせいで走り回ったり、抱えられたりと少し疲れているのでご好意に甘えることにした。

ゼイブさんも同じようで私より先に

椅子へと座ってしまった。


「さて、彩君はこの世界についてどのくらい知っていますか?」


「えっと、この世界には私の世界と違う生き物が居る事と魔法が存在する事。そして、この世界には私以外の異世界人が居るという事くらいです」


「なるほど。では、リーベルタールのことはご存知ですか?」


「確か、異世界人によって作られたと聞きました(ついさっきですけどね!)」


「はい、その通りです。リーベルタールという街を一から作ったのは異世界から来た人々です」


「街を作れる程の人々がこの世界に飛ばされているのですか?」


これ程、大きな街を作ろうとする人々がいた。

一人や二人で出来ることじゃない、百人いやそれ以上の人がこの世界に飛ばされてきたという可能性に唖然とする。


「この世界に迷い込む理由は様々です。神隠しにあった者、事故にあった者、自ら命を絶った者、稀に自らの意思でこの世界に来た者。しかし、何故この世界に迷い込むのかは誰にもわからないのです」


私の他にも事故で飛ばされた人も居るってことか。

けど、自らの意思でこの世界に来るって事はそれなりの手段を持っている者に限られる、どんな人だろう?


「迷い込む理由が分からないのなら、元の世界に帰る術は・・・」


「残念ながら、確認出来ていません」


「そう、ですか・・・」


元の世界に帰れない。その事実は思いの外、私にショックを与えた。

思わず、テーブルに顔を隠すように突っ伏してしまった。


「彩君・・・」


ゼイブさんが私の頭を撫でる。

その手が優しくて、泣きそうになるけど泣きたくなくて。


「帰る手段はまだ、ありません。しかし、この世界で生きる術を示すことは出来ます」


「えっ?」


ゼイブさんに撫でられている頭はそのままにドラグさんへ視線を向ける。

ドラグさんはとても真剣でそれでも優しさを帯びた目をしていた。


「先ほど、説明したようにこの街は異世界人によって作られました。故に新たに迷い込んだ異世界人のために色々な制度や法律を作ったのです」


この神殿もその一つなのだと、ドラグさんは言う。

この世界に迷い込んだばかりの異世界人達はこの世界の事を何も知らない。だから、異世界人を利用しようとする者や虐げようとする者から守るために作り出されたと。


「その制度の一つに職業案内と言うものがあります」


「・・・こっちの世界には仕事を紹介するハローワークってのがありますよ」


「似たようなものかもしれませんね」


ぼそりと呟いた言葉にクスクスと笑うドラグさん。

その柔らかな雰囲気にささくれていた感情が落ち着きを取り戻してきた。


「この世界の職業案内は一つ検査を受けて頂かなければなりません」


「検査?」


血を取られるとかそういう痛いのはやだなぁー。

そう思ったことがゼイブさんにバレたのかよしよしと撫でられていた手の力が髪を掻き回すように強まった。


「ゼイブさん、髪がぐしゃぐしゃになります。やめてください」


「もう、ぐしゃぐしゃですからお気になさらず」


そういう問題じゃない!

そう言って、ゼイブさんの手を捕まえようとするがひょいひょいと逃げられて捕まらない。

その隙にドラグさんが席を立ち、近くの棚に置かれていたメロンくらいの水晶玉を持ってきた。


「痛いことはしませんから、安心してください」


痛くないのか、それなら安心だ。


「この水晶玉は魔力の有り無しを判別する事が出来ます」


「へぇ〜」


「魔力がある人と無い人では向いてる職業が違いますからね〜」


確かに魔力の無い人が魔法使いになりたい!って言っても無理があるもんな。無いなら無いなりに向いてる職業を探すわけか。


「ゼイブさんは魔力あるんですか?」


「ありますよー、微量ですが」


ゼイブさんの魔力は治療魔法を数回唱えられる程らしく、魔法職には向かなかったそうだ。


「さあ、水晶玉の上に両手をかざして下さい。色によって魔力の強さを測ります」


「はーい」


「頑張ってね、彩君」


突っ伏した体を起こし、水晶玉の上へと手をかざす。

出来れば、接近戦よりも中距離遠距離のがいいので魔力があって欲しいなー。


「フォンっ・・・」


音と共に透明だった水晶玉が光を帯びる。


「いいですよ、そのまま・・・」


水晶玉の色がゆっくり変化していくのが分かる。

なんだか不思議な感じがする。


「あっ・・!」


「おや、これは・・・」


様々な色に変化した水晶玉の色が止った。

色は深い海の色、群青色だろうか?


「おめでとうございます。彩君の魔力はなかなか強いみたいですね」


「おめでとう、彩君!」


ドラグさん曰く、色は属性を表し、色の深さが強さを示すらしい。

私の色は深い青。

水属性の強い魔力を持っているとのこと。


「ありがとうございます」


「これで案内できる職業が絞られましたね」


紹介された職業は魔法使い、人形使い、魔銃使い、召喚師。

他にも沢山あったけど、全部覚えきれないのでスルー。

どれも大量の魔力を使用する職業で魔力の弱い人には向かないとか。


「あの、召喚師というのは?」


「名の通り、人ならざるモノを呼び、使役しする者です。自らの接し方によって呼び出されたモノが友となるか道具になるかは変わりますが」


「友達になってくれるの?」


「貴方が望み、そうなるための努力を惜しまないなら、きっと」


まだ、この世界がどんな世界なのか本当の意味で理解は出来ていない。

その世界の中で私は一人で生きていけるだろうか?

面倒臭がりだし、屁理屈言うし、友達出来るか微妙だし。

だったら・・・


「決めました! 私、召喚師になります!」


「理由を教えて頂いても?」


「友達が欲しいから!あと、動物もふもふしたいです!」


「後半が本音に聞こえるよ」


ゼイブさんが呆れたような顔をしながら笑ってる。

ドラグさんもびっくりしたような顔して、ふわっと笑った。

私も笑う、帰る方法はわからない。

けど、進むことは出来るから私は笑って進む。


「だって、帰れないなら楽しむって決めたんで!」









主人公、決意の巻?ですかね(笑

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ