1 月曜日・朝
朝突然、自分の背中に羽が生えていたらどうします?
それはいつもと変わらない朝8時15分。
私は、いつも通りの道を歩いて登校する。天気は晴天。悪くない気分。
いつも通り、まだ静かな商店街。シャッターが開くのは、もう少し時間がたってからだ。私は、ここを歩くのが好きだった。
(今日は月曜日…あー、体育があるや。ダル・…)
なんて、今日のことを考えながら歩く。すると、その商店街の店のうちのひとつから、悲鳴が聞こえた。
しかも、なんだかとっても聞き覚えのある。
(…これは。)
わたしは不信感を覚えて、音の発信源に顔を向けた。この声は、確か、私の幼馴染のそれの筈。
「……………おはよう。ミエ。」
私の予感は大当たりしていた。確かに悲鳴を上げたのは、私と付き合いが長いそいつで、私が家(正確にはお店から入ったのだけど)に入ると、奴は自分の部屋でシンデレラみたいに膝と両手を畳につけて、おまけにおでこまで地面に近くして絶望のポーズを取っていた。
この顔、知っている。この商店街の唯一の古本屋に住んでいる一人息子の原田卓也。
確かにそいつは原田卓也の顔をしていた。体つきも、声の調子も確かに、昨日学校で会った時のままだ。はらだたくや。
けれど、私がそいつを原田卓也と認識するのには、ちょっとした障害があった。
それは、卓也の背中についている羽のようなもの。物体。
そう、私はいま、原田卓也という人間の姿をした天使を見ていた。