ショートショート・記念硬貨の使い方
記念硬貨の入金にも銀行が手数料を取るようになってから1年以上経つ。
竹下久美子が勤めるコンビニでも記念硬貨の受け取りは拒否することにしていた。
記念硬貨が溜まってしまうと銀行に手数料を取られるから、やむを得ない。
中には怒る客がいて、余計なストレスが溜まる。
ある日のことである。
ある男性客が、甲子園球場建築記念硬貨100円玉を1枚、持ってきた。
久美子はやむなく「お客様、申し訳ありませんが、当店では記念硬貨はお断りしています」と深々と頭を下げた。
すると別の客が、「その記念硬貨は、僕のお釣りに使っていいですよ」と声をかけた。
久美子は店長の顔を振り返って見た。
店長は頷いた。
久美子は甲子園球場建築記念硬貨を受け取ると、それをもう一人の客へのお釣りとして渡した。
久美子はお礼を言った。
「申し訳ありません。助かりました」
最初の客はなぜか店の外にいた。
そして、二人目の客と一緒に帰っていった。
翌日、前日に後から来た客が来た。
その客は甲子園球場建築記念硬貨100円玉を出した。
「申し訳ありませんが、当店では記念硬貨の受け取りはしておりません」
久美子は頭を下げた。
すると、前日先に来たほうの客が、「その記念硬貨は僕へのお釣りとして使っていいですよ」と声をかけた。
久美子は店長の顔を見た。
店長は頷いた。
記念硬貨を前の客から、一旦店のレジに入れ、後から来た客に渡す。
それが毎日のように続いた。
「店長、なんだか変じゃないですか?あの二人は知り合いみたいですよ」と久美子は店長に言った。
「だからといって、うちが損するわけじゃないだろ」
「そうかもしれませんが、あの記念硬貨は本物なんですかね?」
「わかった。それじゃ、あの硬貨は一旦店のものにして、銀行で調べてもらうか。もし偽物だったら警察に届ける。防犯カメラに映っているから、偽物ならあの二人は逮捕される」
その翌日も、同じ二人が来た。
初めの男が同じ記念硬貨を出した。
久美子は黙って受け取った。
そして、もう一人の男には普通の100円玉をお釣りに渡した。
店長はその記念硬貨を銀行に持っていった。
「この記念硬貨は本物でしょうか?」
銀行の窓口係は、その硬貨を持って奥に下がった。
しばらく別の行員が硬貨を見ていた。
そして窓口係が戻ってきた。
「これは本物です」と銀行員は答えた。




