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アビゲイルの日常


菊と桜のパスポート

 霞が関の旅券窓口。

 アビゲイルは、手にしたばかりの真新しい「日本国パスポート」を、まるで聖遺物であるかのように恭しく掲げました。表紙に輝く金色の菊花紋章。数年前、ロサンゼルスの暗闇で孤独だった少女が、ついに魂の面でも一輝の家族――「神龍寺アビゲイル」となった証です。


「……見てセーラ、この重み。これが私の、日本のパスポートよ!」


 背後には、一輝から彼女の守護を命じられた女性イージス隊員・セーラが、鋭い眼光を周囲に走らせながら控えています。セーラは、アビゲイルの晴れやかな笑顔に、口元をわずかに綻ばせました。


「アビゲイル様、おめでとうございます。一輝様も、きっとお喜びになります」 「ええ、もちろん! だからサプライズなのよ!」


 アビゲイルはいたずらっぽく笑い、パスポートを胸に抱きしめました。


「ねえ、セーラ。今すぐダァドのところに行くわ。アポなしで突撃よ! これが、私の新しいパスポートのお披露目なんだから!」



 30分後。神龍寺ホールディングス本社ビル。

 全面ガラス張りの、天を衝くようなロビーにアビゲイルが足を踏み入れました。お気に入りのゴスロリ風私服を纏った彼女の姿は、ビジネスマンが行き交うロビーで異彩を放っています。


 アビゲイルは意気揚々と受付カウンターへ。制服に身を包んだ女性受付嬢の佐藤は、プロフェッショナルな笑顔を向けました。


「いらっしゃいませ。本日はどのようなご用件でしょうか?」

「ダァドに会いに来たわ。通してもちょうだい」


 佐藤の笑顔が、ぴたりと止まりました。


「ダァド……、とおっしゃいますと? 恐れ入りますが、当社の神龍寺会長をそのようにお呼びになる方は……」

「だから、神龍寺一輝よ。私のダァドなんだから、当然でしょう?」


 ロビーに緊張が走りました。新総帥の名前を軽々しく呼ぶ不遜な少女。佐藤はプロの仮面を崩さず、毅然と告げました。


「お嬢様、冗談は困ります。会長は現在、国政に関わる重要な会議の直前です。アポイントのない方は、例えどのような自称をなされても、お通しすることはできません」


「自称!? 私は正当な権利を主張してるのよ! ほら、これを見なさいよ!」


 アビゲイルがパスポートを叩きつけるように差し出そうとしたその時、佐藤の手が「警備員を呼びます」と内線に伸びました。



「……何の騒ぎだ」


 重厚な専用エレベーターの扉が開き、側近を連れた一輝が現れました。ロビーが墓所のような静寂に包まれます。佐藤は慌てて立ち上がり、震える声で報告しました。


「申し訳ございません、会長! 身元不明の少女が無理やり突入しようと……今すぐ排除いたします!」


 しかし、一輝の視線は佐藤を通り越し、涙目になっているアビゲイルへ向けられました。


「ダァド! ひどいのよ、この人たち! せっかくこれを見せに来たのに!」


 アビゲイルは一輝に駆け寄り、腕に飛び込みました。周囲の社員たちは、その呼び声に心臓が止まるかと思うほどの衝撃を受けます。一輝は、アビゲイルから手渡されたパスポートを宝物のように開き、そこに記された名を確認すると、口角をわずかに上げました。


「……アビゲイル。取れたのか。よく頑張ったな」



 一輝はアビゲイルを落ち着かせると、真っ青な顔で立ち尽くす受付嬢・佐藤の前へ歩み寄りました。佐藤は「クビ」を覚悟し、全身を震わせていました。


「会長……、存じ上げず大変なご無礼を……」

「顔を上げろ、佐藤」


 一輝の声は冷徹ではなく、理知的な響きを持っていました。


「お前の職務遂行能力は完璧だ。相手が誰であれ、アポイントのない者をこの聖域に入れなかった。その厳格さこそが、我が社の安全セキュリティの根幹だ。お前は、与えられた職務を最高に近い形で全うした」


 驚きに目を見開く佐藤に、一輝は静かに続けました。


「今日起きたことはイレギュラーだ。お前に非はない。……総務部へ伝えておけ。今月、佐藤には特別手当を出す。この鉄壁の守りを、今後も維持してくれ」


「……っ、ありがとうございます! ありがとうございます、会長!」



「もう、ダァド。私より受付の人を褒めるなんて!」


 アビゲイルはわざとらしく頬を膨らませ、一輝の腕を引きました。一輝は苦笑しながら、娘となった彼女を連れて専用エレベーターへ向かいます。


「セーラ、お前も来い。アビゲイルの帰化祝いを執務室でやる」

「……御意、一輝様」


 2027年。日本の心臓部で起きたこの小さな騒動は、一輝の「合理性」と「深い情愛」を象徴する出来事として、長く語り継がれることになりました。




この作品はAI40%、筆者60%で書きました。

原案100%筆者。

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