虎穴への翼 ― マッハ5の外交
2026年、極寒の1月。
一輝のプライベート機「鳳凰」は、もはや航空機の常識を超えていた。核融合エンジンを動力源とし、大気圏外縁を戦闘機をも凌駕するマッハ5で突き進む、空飛ぶ要塞。
機内には、冷徹なまでの静寂が流れている。
傍らには、漆黒の戦闘服に身を包んだ美玲。彼女はこの極秘交渉の案内人であり、最強の守護者だ。
「……一輝様。祖父(美玲の祖父)から連絡がありました。北京の『奥の院』にて、『中国の父』と呼ばれる長老があなたを待っています」
美玲の祖父は、かつて大陸の裏社会を束ね、現主席ですら表立っては逆らえない「伝説の権力者」であった。
一輝の膝の上には、一つの小箱がある。中には、佳奈子と二台の量子コンピュータが完成させた、細胞の老化を極限まで遅らせる究極の新薬――『仙薬・万命』が収められていた。
中国人民解放軍のレーダー網が「鳳凰」を捉える。だが、一輝の背後に座るアビーがキーボードを叩くと、大陸全土の防空システムが沈黙した。
「ダァド、道を空けさせたわ。……今この国は、私の『ティアラ』の掌の中よ。誰一人、私たちに触れさせない」
一輝は静かに頷き、窓の外に広がる赤い大地を見下ろした。
北京の郊外、霧に包まれた古びた邸宅。
そこは現主席の命令すら届かない、中国という国家の「真の重心」であった。
一輝と美玲、そしてアビーが足を踏み入れると、そこには百歳を越えながらも、龍のような眼光を失っていない老人が座っていた。
「……神龍寺の若き龍よ。我が国の愚かな『小僧(主席)』が、お主の大切な愛娘を狙ったという。……その詫び、どうつけるつもりか」
一輝は無言で小箱を差し出した。
「これは、あなたの命をあと三十年繋ぐ『仙薬』だ。……条件は一つ。主席が動かそうとしている特殊部隊『龍牙』を即座に解散させ、ロシアとの共謀を白紙に戻すこと。……さもなくば、私は今夜、この国の全インフラを永久に凍結する」
老人は仙薬の輝きと、一輝の背後に立つアビー——世界をハッキングする少女——を交互に見つめ、低く笑った。
「面白い。……国の体面よりも、我が命、そしてこの国の『真の安定』を選ぼう。……主席には、私から『引退』を勧告しておこう」
その頃、六本木のタワーマンション。
交渉が決裂したと信じ込み、独断で突入を開始した「龍牙」とロシアの「スペツナズ」の混成部隊。
だが、そこには一輝の不在を守る最強の防壁、財津晃一が待ち構えていた。
「……ネズミ共。ここから先は、一輝が許可した者以外、立ち入り禁止だ」
晃一は、かつて一輝に救われた際に誓った忠誠を形にするべく、最新の電子干渉銃を手に、闇の中で微笑んだ。
さらに、絵美里と玲子が避難したセーフルームの前には、雅美が率いる「イージス」の精鋭が並ぶ。
一輝が北京で「根源」を断った瞬間、突入部隊の通信機から発せられたのは、撤退命令ではなく、本国からの「全隊、武装解除の上、自首せよ」という不可解な、しかし絶対的な指令だった。
数時間後。一輝を乗せた「鳳凰」は、夜明けの羽田へと帰還した。
タラップを下りる一輝を、晃一が、そして不安を乗り越えた絵美里と玲子が迎える。
「一輝、終わったぞ。……中露の特殊部隊は、今ごろ日本の公安に引き渡されている。……お前が北京で何を話したか知らないが、向こうの政府中枢は大混乱だ」
一輝は、駆け寄ってくる絵美里の頭を優しく撫でた。
「……ただ、少しだけ『古い友人』と話をしてきただけだ」
アビーは一輝の隣で、満足げに自分のデバイスを閉じた。
「ダァド、これで世界中の『核』も『悪意』も、私のティアラの支配下ね。……もう誰もおじさまたちを狙わせない」
2026年。
中国の裏の権力者を掌握し、核融合という「太陽の火」で世界を照らした一輝。
彼の覇道は、もはや地上の争いを超え、人類の歴史を次のステージへと押し上げた。
朝日が、六本木のタワーマンションを黄金色に染め上げる。
それは、一輝が作り出した、一滴の血も流さずに世界を統べる「黄金の帝国」の真の夜明けであった。
この作品はAI40%、筆者60%で書きました。
原案100%筆者。
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