量子という名の神
神龍寺本邸の地下、広大な研究区画。そこには、悦司が心血を注いで完成させた二台目の量子コンピュータ「レギオン・プロフェシー」が鎮座していた。
アビーの「ティアラ」が情報の盾と矛ならば、この「プロフェシー」は未来の設計図を描くための、文字通りの予言機であった。
「兄さん、準備は整ったよ」
悦司がモニターを指し示す。そこには、数兆通りのシミュレーションを経て生み出された「新素材」の分子構造が踊っていた。
「この常温超電導素材を使えば、既存の電力網は一新される。さらに……軍事面では、レーダーに一切感知されない完全透過型の装甲と、衛星軌道からピンポイントで敵軍を無力化する電子制圧が可能になる」
一輝は無機質なマシンの鼓動を聞きながら頷いた。
「武力は、使わずに相手を屈服させるためにある。……佳奈子さん、バイオ部門はどうだ?」
白衣を纏った佳奈子が、誇らしげに報告を上げる。
「量子演算によるゲノム解析で、癌の特効薬と、あらゆるウイルスを無害化するワクチンが完成しました。……これらは、日本国民には無償で提供されます。そして他国へは……『神龍寺のルール』に従う国にのみ、供給されます」
「薬と技術」による世界の支配。 銃弾を一発も撃つことなく、世界中の要人や国民が、生きるために日本に頭を下げる時代の幕開けだった。
さらに、一輝の野望は「領土」の概念さえも覆した。
最新の無人深海探査艇が、日本の排他的経済水域(EEZ)の底から驚天動地の発見をもたらす。
「一輝、これは……夢じゃないな」
モニターを見つめる晃一が、震える声で言った。
南鳥島近海、そして沖縄トラフの深層。そこには中東を凌駕する天然ガス田に加え、ハイテク産業の心臓部となる「超高品位レアアース」の巨大鉱床が、地平線の先まで続いていた。
「中国が資源を盾に脅してくる時代は終わった」
一輝は、深海の黄金を映し出す画面を見据えた。
「エネルギーと資源。自給自足を超え、日本が世界一の輸出大国になる。……アビー、今すぐこの海域を『不可侵領域』として封鎖しろ。近づく軍艦があれば、通信を焼き切って沈めろ」
『了解、ダァド。衛星レーザー、いつでもトリガーを引けるわ』
世界が「日本の異変」に震える中、六本木のタワーマンションのフロアは、柔らかな日常に包まれていた。
「あ、一輝さん! お帰りなさい!」
絵美里がリビングで声を弾ませる。彼女の隣では、玲子が赤ん坊の産着を丁寧に畳んでいた。そう、玲子の腹部には、晃一との間に新しい命が宿っていた。
「一輝様。晃一さんが、さきほど戻られました。……今夜は、一輝様の好きな山菜料理を用意しておりますの」
玲子の穏やかな笑顔。かつての「地獄」は、もう遠い記憶の彼方にあった。
そこへ、仕事帰りの晃一が、一輝と肩を並べて入ってくる。
「一輝。さっきの資源開発の件だが……アメリカの特使が泣きついてきたぞ。……まあ、お前の言う通り、たっぷり『手数料』を積ませることにしたがな」
「当然だ。……絵美里、玲子。晃一と今夜、ゆっくり飲ませてもらう」
リビングには、アビーが悦司から奪ってきた最新のゲームで遊ぶ笑い声と、佳奈子が持参した新薬の治験データの束が同居していた。
「最強の武力と、最強の慈愛」
一輝が作り上げたその帝国は、外側からは難攻不落の要塞として畏怖され、内側では愛する者たちが笑い合える、世界で唯一の楽園となった。
この作品はAI40%、筆者60%で書きました。
原案100%筆者。
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