帝王の系譜
静かに走り出したセダンの後部座席。父・藤吉郎は、まだ興奮が冷めやらぬ様子で隣の娘に問いかけた。
「雫、あのお方……神龍寺会長と、どうして知り合いになれたんだ?」
「お父さん、あのお兄さん……そんなに偉い人なの?」
父が路頭でペコペコと頭を下げていた姿が離れない雫は、質問を質問で返した。藤吉郎は深く息を吐き、言い聞かせるように口を開く。
「お父さんの会社にとっては、雲の上のようなお方だ。私は会社を三つ経営しているが、雫、お前は『帝都銀行』を知っているか?」
「私の貯金通帳に書いてあるところだよね」
「そうだ。あの方はその銀行をはじめ、情報、証券、セキュリティ……日本を動かすいくつもの企業を束ねる会長職にあるお方なんだよ」
雫は目を丸くした。
「へぇ……。あ、さっきの質問だけど、小学校からの友達の絵美里、覚えてる? あのお兄さんは絵美里のお父さんの親友なんだって。今、絵美里のパパがアメリカに行ってるから、その間の保護者を任されてるみたい」
「若いのに、あの神龍寺家が保護者を……。やはり代々続く『血筋』というわけか」
藤吉郎は独り言のように呟いた。その脳裏には、まだ学生の息子・孝義の顔が浮かぶ。 (孝義も、あの方のようになれればいいのだがな……)
「代々続く血筋って、どういうこと?」
雫の純粋な問いに、藤吉郎は襟を正した。
「お前も知っておいて損はない。あのお方の妹弟も、また怪物揃いだ。例えば『泉ブランド』は知っているだろう?」
「もちろんだよ! 今一番流行ってて、私のこの服もそうだよ」
「そのブランドを立ち上げたのが、あの方の妹さんだ」
「えっ!? あわわ、どうしようお父さん……!」
憧れのブランドのオーナーが、さっきの「お兄さん」の身内だと知り、雫はパニックになる。
「落ち着きなさい、雫。……驚くのはまだ早い。弟さんも二十代にして複数のエンジニア特許を持ち、製薬会社や豊本自動車をも動かしている」
「豊本自動車って……この車のメーカーでしょ? 化粧品や花粉症の薬も?」
「それだけじゃない。お母さんの着物も、私たちが通う高級料亭も……果ては、お前がよく行く『サエズリア』や『ミズ・ドウナツ』まで、すべてあの方のお母様が経営されている」
「そんな……」
雫は言葉を失った。自分たちが当たり前に享受していた日常のサービスが、すべてあの一家――神龍寺家の手のひらの上にある。
「そして極めつけは父親だ。レゾナンスハイアットホテルにJPL航空、造船株式会社に旅行会社、物流の大手までを掌握している」
藤吉郎は窓の外を流れる夜景を見つめ、静かに拳を握った。
(こんなお方と娘が知り合いになれたとは……。これは我が木下家にとって、一生に一度の好機か、それとも破滅の入り口か。何としてでも、この幸運を離してはならんぞ)
一方その頃。
一輝の車の助手席で、絵美里は静かに決意を固めていた。父が恐れ、親友の父が跪くほどの力を持つ「お兄さん」。彼なら、今の自分を縛り付けているあの悩みから、自分を救い出してくれるはずだと。
この作品はAI40%、筆者60%で書きました。
原案100%筆者。
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