黄金の静寂と、深淵のAI
横浜の不穏な空気を切り裂き、黄金のセンチュリーは神龍寺の実家へと滑り込んだ。
重厚な門扉が開くと、そこには年配メイドの平友江、主任メイドの今井恭子、そして二人の若手メイドが整列して待っていた。
「お帰りなさいませ、一輝様」
恭子が進み出て一輝のコートを受け取る。美玲は少し緊張した面持ちで、しかし凛とした動作で帽子を取り、深々とお辞儀をした。
「美玲です。今日からお世話になります。友江さん、恭子さん、よろしくお願いいたします」
その時、パタパタと小気味良い足音が響き、二階から絵美里が駆け降りてきた。
「お兄ちゃん! 美玲ちゃん、待ってたよ!」
絵美里の屈託のない笑顔に、美玲の表情がふわりと和らぐ。
「美玲、部屋には清菱女子学園の制服が用意してある。絵美里に教えてもらって試着してみるといい。似合うはずだ」
「ありがとう、お兄ちゃん。……いってきます!」
華やかな少女たちの笑い声を背に、一輝は再び車を出した。実家を後にする彼の時計は、すでに午後五時を回っている。
夜の帳が降りた六本木。数多の欲望が渦巻く街を見下ろすように、ITCOホールディングスの最上階には灯りがともっていた。
地下駐車場から直通エレベーターで会長室に戻った一輝を、ただ一人残っていた雅美が迎える。
「会長、お帰りなさいませ」
雅美が丁寧に淹れたばかりのお茶をデスクに置く。湯気の向こう側で、彼女の青い下着を秘めた秘書スーツのシルエットが、仕事モードの硬質な雰囲気に色香を放っていた。
「……悦司の方はどうだ?」
一輝がお茶を啜りながら問う。雅美は手元のタブレットを確認し、報告を始めた。
「シールドルームへの量子コンピュータ移行設置には、あと五日。その後、アビゲイル様が来日され、自ら開発されたAI『ティアラ』をインストールされるとのことです。動作確認を含めると、実働までには一週間といったところでしょうか」
「久しぶりに、アビゲイル(Abigail)が来るか……」
一輝の脳裏に、アメリカの放浪時代に出会った、灰色の瞳を持つ天才少女の姿が浮かぶ。彼女が紡ぎ出すAI「ティアラ」と、悦司が組み上げた量子コンピュータ「レギオン」。
この二つが融合した時、一輝は文字通り、この世界の「全知全能」に等しい力を手にすることになる。
「会長……少し、お疲れでは?」
雅美が心配そうに一輝の肩に手を置こうとして、躊躇い、指先を止める。
「いや、心地よい緊張感だ。……雅美、アビゲイルが来たら忙しくなるぞ。今のうちに英気を養っておけ」
一輝の黒い瞳が、窓の外の夜景を射抜く。
上海の勢力、学園の腐敗、そして神龍寺家を取り巻く因縁。
この作品はAI40%、筆者60%で書きました。
原案100%筆者。
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