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逃亡の終着点、あるいは強制執行の朝

翌朝。シオンは昨日の「子供たちとの聖戦(鬼ごっこ)」で付いた泥を完璧に拭い去り、再び漆黒の正装に身を包んでいた。

「……ふむ。朝の光は、私の新たな野望(秘密基地)を照らし出すためのスポットライトだ。……昨日は子供という名のイレギュラーに阻まれたが、今日こそは私の『孤独の要塞』の礎石を据えてみせよう。……ふふ。今の俺、挫折を知らぬ不屈の建築家って風格だな」

シオンは誰にも見つからないよう、抜き足差し足……もとい、因果の隙間を縫うような優雅な足取りで裏門へと向かった。

しかし、あと一歩で「自由」という名の荒野に手が届こうとしたその時。

「どこへ行くのかしら、第四王子殿下?」

心臓が跳ね上がった。

門の影から、腕を組み、タップダンスを踊るようなリズムで片足を鳴らすリーゼロッテが現れた。その背後には、絶対零度の冷気が漂っている。

「……あ、やあ、リーゼ。……奇遇だね。君という美しい番人が、私の門出を祝ってくれるとは。……私は今から、世界の歪みを観測しに……その、少々、遠方のフィールドワークへ」

「はいはい、その見え透いたポエムは聞き飽きたわ。宰相様から聞いたわよ。『シオン殿下が土地の視察に行きたいと仰るので、しばらく学園の方は……』なんて、よくもまああんな嘘を吹き込んだわね!」

「……嘘ではない。私はただ、未来の予定を現在進行形プログレッシブで語っただけだ。……ふふ。今の俺、時空の概念すら超越する先駆者」

「いいから来なさい!!」

リーゼロッテの細い、しかし魔力のこもった力強い手が、シオンの耳元を正確にキャッチした。

「い、痛い、痛いよリーゼ! 私の耳は、愛の囁きを聞くための繊細な器官であって、牽引されるためのフックではない!」

「うるさいわね! 今日は実技試験の予習があるの! ほら、一歩、二歩! 足を動かす!」

シオンは抵抗虚しく、登校する生徒たちの好奇の視線に晒されながら、学園へと「強制連行(パッチ適用)」されていく。

(……くっ、不覚だ。私の因果操作も、彼女の『物理的な説教』の前では無力化されるというのか……。……だが待てよ。婚約者に連行される王子……。……それはそれで、周囲から『愛の束縛』と誤解される、最高にドラマチックな光景ではないか?)

シオンは痛みに顔を歪めながらも、流れる涙を拭い、手帳を(片手で)取り出した。

『自由を求める翼は、愛という名の鎖に繋がれた。……だが、その鎖さえも、私の孤独を彩る装飾アクセサリーに過ぎない。……よし。今の俺、完全に「運命に抗いつつも愛に屈する悲劇の主人公」だな。金文字で書いておこう』

「何書いてんのよ! 前を見て歩きなさい!」

シオンの秘密基地計画は、最強のデバッガー・リーゼロッテによって、再び「学園生活」という名の檻の中に閉じ込められるのであった。

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