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監視の韻律、あるいは逃れられぬ運命の糸

昼時の学生食堂。午前中の騒動(強制連行)が嘘のように、シオンは再び独りでテーブルを占領していた。

周りでは多くの生徒たちが昼食を摂りながら談笑しているが、シオンの周囲だけは透明な壁があるかのように、独特の静寂が保たれている。

「……ふむ。昼の光は鋭すぎて、私の思考の陰影を削ぎ落としてしまう。……ふふ。今の俺、白昼の喧騒に耐え忍ぶ『薄明の住人』って感じで深みがあるな」

シオンは手帳に目を落とし、午前中の出来事を回想していた。

(それにしても、驚きだ。リーゼの奴、他クラスの講義を受けていたはずなのに、なぜ私がテラスで紅茶を嗜んでいることに気づいたのだ? まさか、彼女の瞳には私の『存在ログ』を常に追跡する魔法でも組み込まれているのか……?)

シオンは顎に手を当て、深刻な面持ちで考え込む。

(……いや、あるいは彼女も私と同じく、世界の因果を読み解く『共鳴者』に目覚めたのかもしれない。……ふっ。運命のリーゼロッテが、文字通り私の位置情報を書き換えているというわけか。……くっ、今の解釈、最高にロマンチックで不気味だな。書き留めておこう)

「……何を一人でニヤニヤしながら、不穏なことを書いてるのかしら?」

「!!」

真上から降ってきた声に、シオンは珍しく肩を跳ねさせた。

そこには、トレイを持ったリーゼロッテが、獲物を見つけた猛禽類のような涼やかな笑みを浮かべて立っていた。

「……やあ、リーゼ。君の足音は、常に私の思考の結界を無効化するね。……ところで、君に問いたい。午前中の私を見つけ出したあの神速のサーチ能力……あれは、愛ゆえの執着か、それとも世界のバグが生んだ偶然かな?」

リーゼロッテは呆れたようにシオンの向かいに座り、サラダを口に運んだ。

「執着でもバグでもないわよ。あんたが『食堂に一番近い一階の教室』に連行されたのに、五分後には窓の外からティーカップを置く音が聞こえてきたの。」

「……音、だと? 私の優雅な所作から発せられる微細な振動を、君の鼓膜は捉えたというのか……。……ふふ。今の俺、五感を研ぎ澄ませた婚約者に追い詰められる『悲劇の逃亡者』そのものだ。……最高にスリルがあるな」

「開き直らないでよ。大体、モーニング紅茶なんて、学園広しと言えど午前十時に頼むのは一人しかいないんだから、食堂のおば様たちの間でも有名よ。……本当に、少しは後ろめたさを覚えなさいってば」

「……後ろめたさ? リーゼ、それは『己を偽る者』が抱く感情だ。私はただ、自分の魂が求める時間タイムに、正直に従っただけだよ」

シオンは堂々と胸を張り、冷めかけた紅茶を一口飲んだ。

「……ま、いいわ。その図太さだけは尊敬してあげる。……ほら、私のデザートのリンゴ、半分あげるから。午後の授業は寝ずに受けなさいよ」

「……ふむ。これは私に対する『懐柔デバッグ』の一環か。……いいだろう、君の慈悲、謹んで享受しようじゃないか」

リーゼロッテから差し出されたリンゴを齧りながら、シオンは「やはり彼女との因果は、どの術式よりも複雑で愛おしい」と、密かに手帳の隅に書き加えるのだった。

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