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嵐のあとの静寂、あるいは約束の重み

「……ゼノス、ミレーヌ。君たちの熱意は、私の冷徹な心象風景メンタルに火を灯しすぎた。これ以上の干渉は、私の描く『孤高』の脚本プロットにノイズを混ぜるだけだ。……引き取りたまえ。君たちの忠誠は、夜空の星に預けておく」

シオンが極限までキザに、かつ「これ以上来たら本当に怒るぞ」という圧を込めて(ポエム的に)告げると、魔導師長は「おお……なんという慈悲深い拒絶! 殿下、そのお言葉、一生の宝といたします!」と涙ながらに退室していった。ミレーヌも名残惜しそうに、だが頬を染めて後に続く。

嵐が去り、離宮の談話室にはシオンと、腕組みをして仁王立ちするリーゼロッテだけが残された。

「……ふう。デバッグ完了だ。リーゼ、君の瞳という名の検閲センサーが、今日も私の平穏を守ってくれたね」

「……調子に乗らないで。あんな大物まで手なずけて、あなた本当に学園で『無能』として静かに過ごす気あるの?」

リーゼロッテは深いため息をつき、シオンの向かいに座り込んだ。

「来週からいよいよ『聖エリュシオン魔導学院』よ。あそこは王宮以上に『魔力こそ正義』という歪んだ価値観の塊。あなたの魔力0という判定、お兄様たちが学園中に言いふらしているわ」

「……フッ。兄上たちは、表層の数字に囚われた哀れな計算機だ。私という存在の『意味』を読み解くリテラシーがない。……学園の喧騒など、私のポエムを彩るBGMに過ぎないよ」

「……またそうやって。いい、シオン。学園には、他国から来ている留学生や、上位の貴族たちがひしめき合っているわ。彼らは王家内でのあなたの立場を狙って、直接的に嫌がらせをしてくるはず。……私がいない場所では、あんまり変なポエムを詠んで目立たないで。いいわね?」

リーゼロッテの声には、いつもの鋭さの中に、確かな不安と心配が混じっていた。

シオンは少しだけキザなポーズを緩め、窓の外を見つめる。

「……リーゼ。君は、太陽が雲に隠れたからといって、その輝きを疑うのかい?」

「……は?」

「私が『無能』を演じているのは、世界の法則を書き換えるための『沈黙サイレンス』だ。学園がどんな地獄であれ、私の手帳を汚すことはできない。……それに、君という太陽が私を監視し続けてくれる限り、私は闇に飲まれることもないだろう」

シオンは流れるような所作でリーゼロッテの手を取り、その手の甲に(彼女がツッコミを入れる隙を与えない速度で)軽く触れた。

「……約束しよう。学園での私は、誰よりも『無害な置物』であり続ける。君が私の隣で笑っていられる、その脚本を守るために」

「……シオン……。……もう、そういうことをサラッと言うから、変なミレーヌが寄ってくるのよ」

リーゼロッテは顔を真っ赤にしながら手を振り払ったが、その表情は少しだけ和らいでいた。

「わかったわ。じゃあ、入学式の日は私も同行するから。……もし何かあったら、私が全員ぶっ飛ばしてあげる。あなたは私の後ろで、せいぜい格好良いポエムでも考えてなさい」

「……ああ。君の背中は、どんな盾よりも強固な韻律リズムを持っているよ」

「だから普通に喋りなさいってば!」

二人は、迫りくる学園生活という名の激動を前に、束の間の「いつも通り」の時間を過ごすのだった。

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