現実9
ドキドキドキドキ…。
私の心臓の音が高鳴る。
自分でも分かる程顔が熱い。きっと顔が真っ赤になっているはず!!
ぎゃぁー! 恥ずかし過ぎる!!
口を開けたら雄叫びを上げてるに違いない!
…落ち着くのよ私!!
考えちゃダメ!考えちゃ。無心、無心、無心…。
一度、深呼吸をしてから私はじっとした。すると美人さんは「クスッ…」と、笑った。
私の緊張ぶりに呆れたのかな?
そう思っていると、私の左頬にかかっている髪に手が当たる。そして、ゆっくりと顔が近づいてきた。
うっきゃぁぁーーー!!!
顔が顔がぁぁ!!
美人さんのアップに堪えきれなくなった私は目を閉じた。
「 A cute person … 」
ちゅっ
私の耳に暖かく、柔らかな感触が触れた。
ひやぁぁ!!!
「クスクス…。言葉が分かりますか?」
そのまま耳元で囁かれる。すると、
「ああぁぁぁぁぁあぁぁぁーーーー!!!!」
どこからか叫び声が聞こえた。
え???
「襲ってんじゃねーよ!! 俺に対する嫌がらせか?!」
私と美人さんの間を割って入ってきた。
「離れろよ! レイオ!」
「っ!!!」
真っ赤な色。ゆらゆら揺れる毛。
見覚えのある形。小さな体。
それは夢の中で出てきた真赤な毛をした猿ー!!!!
再び摑まれるの?
怖い。嫌だ!
「いやあぁぁぁぁぁぁっ!!!!」
ごつっ!!
私は猿から離れようとして再び壁に後頭部を強打。
同じ所を2度もぶつけた私。
痛い…痛すぎる!!!
「大丈夫ですか?」
「すげー音だな…平気か?」
「うぅぅ…」
唸りつつも、痛さを堪えて猿との距離を開けようと動く私。その動きに気付いた美人さんが、ひょいと猿の首根っこを掴むと私の居るベッドから離れた位置にある黒い壁の方へぶん投げた。
勢い良く猿が飛ぶ。
「うおっ!! 何すんだよ!!」
猿は壁にぶつかる手前で無事に着地。
「怯えているみたいなんですが? 何をしたんですか?」
美人さんはベッドから離れると猿に聞く。
「え? 何で?」
「それは私が聞いてるんですけど?」
「う~ん」
一生懸命考える猿。
「……」
私は美人さんの行動に驚いたけど、お蔭で落ち着いた。
そっか…。そうだよね。夢で出てきた猿にソックリだからって怯える事無いよね?
夢の中の出来事なんだし。現実と関係ないんだし!
うん。失礼よね私。
そう、冷静になると壁の前に居る猿が喋っている事に今更ながら気が付いた。
見かけに反して、低い声。
…え??
…猿って喋る動物だっけ?
喋るのはオウムとか…主に鳥よね?
見たこと無い種類の猿だしそんなものなの?
…いや、居たらきっとテレビとかに出てて、有名なはずよね?
美人さんとは知り合いらしく、普通に会話をしている。
「……」
う~ん。存在してるものを否定しても仕方が無いよね? 目の前にいるんだし。
そう、私の中で結論付けた。
呆れた顔の美人さん。
「…分からないなら良いです。とりあえず、ドローは部屋から出なさい」
「この部屋だけで良いのか?」
「この家の持ち主に‘出ていけ’まで言いませんよ。それに、まだ本調子までいってないんでしょう?」
「あぁ…」
私が考え事をしている間に猿が私の所為で部屋から出ようとする。
「ちょっと待って!」
今、出て行かれたら罪悪感を感じるので止めてクダサイ!!
夢の猿とソックリだからっていう理由で勝手に怯えたあげくに部屋から追い出すって…酷いにも程があるわよね? ここは何としても止めなくちゃ!
「「?」」
「あの…怯えてごめんなさい!! 出て行かないで!……えーと…夢に出てきた猿にソックリだったから…」
後半は小声になる。
我ながらどうなのよそれ? て、言いたくなる内容よね。夢と現実をごっちゃにしてるんだもの!
夢は夢。現実は現実!
――― そう、自分自身に言い聞かせてたとこに猿の一言。
「え? 夢? …あぁ。それ俺だけど?」
「はあぁぁぁ???」
夢の中に出てきた猿が目の前に居る猿?
えぇぇ?
「……行き成り有り得ない位に手が伸びて……私の足を掴んだ猿が…?」
「どう聞いても変質者のようですね?」
「あーえー…その…。悪い。驚いたか?」
「その夢の中の猿と一緒?」
「あぁ。一緒だ」
えぇぇぇ??
どう言う事よ?
「夢の中の出来事なのに???」
「夢だけど現実でもあるんだよ」
と、猿の言葉に美人さんが納得をする。
「…あぁ、‘夢繋ぎ’を使用したのですね?」
意味わかんないわよ!!!
何なのよ!! その‘夢繋ぎ’って?
「何それ?」
色々と意味がわからな過ぎるんだけど!!!!
説明お願いします!!
やっと次回は説明に入ります。
…美緒ちゃんの性格的に脱線しそうな予感が…。