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4 お兄さまは心配性

「……俺はな、これでもお前たちを心配してるんだよ」

「はあ。それはどうもです」


兄の部屋は相変わらず本だらけで雑然としていた。ソファーで対面している兄の眉間には皺が刻まれており、先ほどからため息ばかりつかれている。


「万が一、お前たちがこのまま家に居着いたら、俺の結婚が遠のくじゃないか」

「私とテルルを厄介な小姑みたいに言わないで下さいよ」

「実際そうなりそうで怖いんだよ」

「ひどいですっ!」


あんまりな言い分に、私がわっと泣き真似をする。兄は私の演技になんて騙されないけど。


「俺は早くスズと結婚したいんだ。そして新婚生活でイチャイチャしたいから、できるだけ早くお前たちに嫁に行ってもらいたい」

「うわー自己中!」


スズ様は我が家と同じ伯爵家のご令嬢で兄の婚約者だ。とても優しく可愛らしいお方なので、私も妹も懐いている。兄はこの婚約者を溺愛しており、彼にとって第一優先は家族よりもスズ様なのだ。


「でもスズ様はまだ十八歳でしょう。結婚はスズ様が二十歳になってからって決まってるじゃないですか」

「あと二年しかないから、とっととお前たちの問題を片づけたいんだ」

「お荷物みたいに言わないで下さいよ! お兄さまは私とテルルのことが可愛くないんですか!?」

「大事に思っているから心配してるんだろうが。俺はお前たちにも幸せになってほしいんだよ」

「お兄さま……!」


兄の言葉に感動していると、兄がふっと優しく微笑んだ。


「だからな? セレン、お前は学園の在学中に恋人を作れ」

「……は?」


え、今、何て?


「テルルを姉離れさせるには、本当は本人に恋人ができればいいんだが……まあまず無理そうだからな。お前の方が恋人を作って、テルルより大事な存在がいるということをアピールした方が早いと思うんだ」

「え~? 私に恋人作るより、テルルにいい人を見繕う方がよっぽど現実的だと思いますよ? だいたい、私がちょっといいなと思った方は、いつもテルルを好きになりますもん。テルルが婚約してからじゃないと、私に恋人なんてできないと思います」


私の言葉に、兄がショックを受けたように目を見開いた。


「なっ……なんて自己評価が低いんだ、セレン! 確かに顔面偏差値はテルルの方が高いかもしれないが、お前にはお前だけの魅力があるだろう! 学園では常に五位以内の成績で魔力量も多いし、愛嬌もある! お前がモテないはずがないっ!」

「お、お兄さま! おかしなところでシスコンを発揮しないで下さい! 過大評価ですっ! 私よりもテルルの方が可愛いのは揺るぎようのない事実なので、私はモテないんですっ!」


私が現実を伝えても、兄は取り合ってくれなかった。


「そもそも外見だけでテルルに心変わりするような男は俺が認めん。いいか? お前は、お前だけを溺愛するような男を捕まえるんだ。そうだな、俺のような男にしておくといい。俺はスズ以外の女になんて蟻ほども興味が無いし、たとえスズに美少女の妹がいたとしても心変わりするなんてありえないからな!」


ドヤ顔で力説する兄に、私は心の距離を感じた。確かに、兄はスズ様一筋で彼女を溺愛しているが、その執着は筆舌に尽くしがたい。ストーカーと紙一重な行動をする兄をずっと見ていたせいで、私は“溺愛”という言葉が恐ろしくなった。

私は普通の恋愛がいい。普通が一番。兄のような男性は怖いから無理だ。


こんな兄を受け入れてくれているスズ様には、感謝しかない。



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