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05話

「君、止まりなさい」


よしっ!

今、俺は心の中でガッツポーズを決めている。

先程あれこれ考えながら歩いて街に着いた訳だが、言葉が通じるかが問題だった。しかし、今門番に投げかけられた言葉を俺は認識することが出来た。

何故日本人の俺が言葉を認識することが出来たのか、仮説は一つだけある。

それは俺の身体だ。

服装は寝る前から変わっておらずパーカーにシンプルなズボン。

しかし、服だけ見ると何も変わっていないように思えるがここに来た時に気づいた異常な視力。

何度も言うが、前の俺はあそこまで視力がいい訳じゃなかった。いや、もし俺の視力がよかったとしてもあの距離からここが見えているのは明らかに異常。

つまり、服装は変わっていないが、身体は変わっている。 根拠は薄いが、身体の変化が視力だけではないとしたら

ここの言語が理解できるように身体が変えられているのだとしたら。いや、言語が理解できる以上は変えられていることは確定だな。

考えることが増えて頭の中が忙しくなりそうだが、まずは返事をしなければ。


「はい」


「この街になんの用だ?」


門番は腰の剣に片手を起きながら話しかけてきた。

実はここに来る途中に門番が武装していることは確認できていた。しかし、前の世界でも武装した人なんて昔はごろごろいたらしいからな。これだけで異世界だと断定する訳には行かないだろう。もちろん、この時点で済んでいた時代とは違うことは分かったから収穫はある。

俺の言葉も相手に伝わっていると見ていいな。つまり、こっちも相手の言葉が理解できるように相手も俺の言葉が理解できる。

しかし、目的か。異世界かどうか確認しに来た、とか言ったところで正気を疑われるだけだろうな。

魔道具を買いに来たとかならどうだ?

いや、もしその辺の村でも魔道具が存在しているのなら明らかに怪しいヤツだな。それに俺の所持している銅貨らしきもの。価値は分からないが10枚は明らかに心許ない数だ。こんな所持金で魔道具を買いに来た、なんて余計に不信感を植え付けるだけだろう。

ん?所持金が少ない?そうか


「村から出稼ぎに来たんですけど、入れますかね?」


「村から出て街で稼ぎに来た、か」


「はい、そうなんです」


怪しまれたか?いや、村から街に出稼ぎなんてよくある話、だと思うんだが。

もしかして、しくじったか?


「ふむ」


不味いな、結構ありふれた目的だと思っていたんだが反応が良くないな。

何に引っかかっている?


「あの、どうかしましたか?」


「いや、なんでもない。目的はわかったが、武器もなしに一人でか?」


なるほどそっちか。

確かに、ここから一番近い村がどの程度距離があるのか分からないが、俺の手持ちは腰の布袋だけだ。護身用の武器も無しに一人でここまで歩いてきた、と言われたらそりゃちょっと怪しいな。さて、どう言い訳するか。


「はい。実は家にあったもので武器になりそうなものが畑の道具くらいしかなくて、、」


「なるほどな」


「もちろん僕も護身用に武器は欲しかったんですけど、流石に家の道具を持ち出すのはダメだと親に言われてしまったんですよ」


「それで武器も持たずにきたと」


「そういうことですね」


「確かに、筋は通っているな」


即興だったが何とか入れそうだな。村人全員武器があったとしても、恐らく一家に1本くらいだろう。それは恐らく村人が村に危機が迫った時に使う武器だ。つまり、村を出ていくやつに武器を渡す、ていうことは少ないはずだ。


「腰に吊るしている布袋の中身は?」


「あ、これは僕のお金ですね」


「念の為中身を確認させてもらう」


「どうぞ」


よし、いいぞ。

これで中身が本当にお金なのかどうか門番の反応によって判明する。これで特に反応がなければお金。

お金じゃないって言われたら入れ間違えた、でいいだろう。あまりにも浅い言い訳だが、馬鹿なふりをして何とか誤魔化すしかないな。


「確かに銅貨しか入っていないみたいだな」


「はは、なけなしのお金詰め込んできました」


「まぁ、村人が街に来るには少し心許ないが。君は商売の心得でもあるのだろう?だったらすぐに稼げるようになるだろうな」


ん?商売の心得?確かにVRでは魔道具を手に入れるためにお金が必要だったから色々な物を売ったりしていたし、貴重な魔道具を持っているプレイヤーと何度も交渉してきたからその辺のプレイヤーより経験はあると自負しているが。

たったあれだけの会話でわかるものか?



「あの、何故僕に商売の心得があると?」


「ん?あぁ。君の言葉使いだよ。ただの村人は村の中で一生を過ごす者が多い。」


それとなんの関係が?いや、村の中で過ごす機会が多いということは、


「つまり、君のように丁寧な言葉使いを使う機会もなければ、覚える必要も無いから言葉遣いが丁寧な物は少ない。」


「だから自分が商人だと?」


「いや、商人だとは思っていない。馬車も荷物もないみたいだしな。ただ、商人に弟子入りでもして言葉使いや商売の心得でも教えて貰ったことがあるのだろう、と思っただけだ」


そうでもないただの村の出身の者は皆言葉使いが荒いからね、

と門番は言った。

なるほど確かにな。その可能性は考えていなかった。

いや、考えてみれば当たり前か。現代のように義務教育がある訳でもなければ上司なんかと話す機会もただの村人にはないだろう。それに貴族が村に行くことなんかほぼないだろうしな。

仮にあったとしても貴族と会話する機会なんてそうそうない。だから言葉使いなんて気にしてるやつは一人もいない、と



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