真実の愛
「だって、クリス様の時なら、絶対に、断罪返ししないじゃないですかぁ?」
王宮に、ピンク頭の男爵令嬢が現れた。
王子殿下の婚約者に立候補するらしい。
何故、私の時に、出てこなかったかと問い詰めたら、変な回答をする。
「私、セドリック様と婚約して、不幸になりたいのですっ」
「へ?」
確かに、王子殿下と結婚したら、不幸になるけど、
「王宮を追い出されて、市井に放り投げられて、生活能力のない殿下を支えているのに、怒鳴られて、周りから、あんな難しい男と良く付き合えるねと言われたいですっ」
これは、不幸ジャンキー。
私は、止められなかったわ。
そのまま、中庭で、デートをしているヨシコ様と、殿下の前に、通してしまったの。
☆中庭
「ヨシコ様!王子の気持ちを考えて下さいっ!殿下を開放して下さい!」
ストレートだわ。しかし、王子の気持ちを考えていないのは、男爵令嬢も同じだわ。
「・・うむ。名を聞こう」
「あ、あたしは、男爵家のマリアですっ。聖女である能力や、実績で殿下の婚約者の地位に納まるなんて、ズルいですっ。私なら、殿下を不幸に出来ますっ!」
能力、実績で、政略結婚が普通なのに、不幸に出来ますって、自覚あるのね。
「ヒィ、何を言っているのだ」
「うむ。分からないだ。殿方を幸せにしてこそ女の本懐だぁ」
「違うのですっ!真実の愛は、不幸があってこそ実感できるのですっ、市井に追い出されて、生活能力のない殿下を献身で支えます!」
「じゃが、馬鹿、いや、ハスハスしているダーリンは、気がついてくれないだ」
「ヒィ、ヨシコまで、何を言っている!」
「それでこそ真実の愛ですっ、幸せは他者に観測されるものではないですっ、私が感じればいいのですっ」
「うむ。オメ様の愛は一方通行だ。勝負をするだ!」
「望むところですっ!」
「ヒィ、何で、どちらも、俺の意見をきいてくれないんだ」
勝負が始まったわ。
まずは、
学問勝負。
ヨシコ様は、大丈夫かしら。
「勝者!ヨシコ様!」
「うむ。オラは、アカデミー出身だ」
「ヒィ、何で、マナーやこの世界の地理まで知っているのよっ」
次は、社交勝負。
「私のボーイフレンドなんだからねっ」
「「「へへへ、どうも」」」
「マリアちゃん。この後、デートしよう」
いかにも馬鹿そうな6人の貴公子が集まったわ。あら、令嬢がいないわ。
一方、ヨシコ様は、
「オラをレディと思う者は集まるだ!」
「「「「ウオオオオオーーーーー」」」
騎士団1000人が集まったわ。
「うむ。褒美に、うなじを見せてやるだ」
パラッ
「「「「「「ウオオオオーーーーーーーー」」」」
そして、ブラウン夫人率いる社交界のマダムたちが現れたわ。
「「「「私たちは、ヨシコ様を支持しますわ」」」
「ありがたいだ」
「お茶会に来て下さいませ」
「うむ」
勝負は圧倒的だわ。
最後の勝負は、格闘だわ。
「うむ。相撲勝負だ。この円の中から、オラを出したら、勝ちにしていいだ」
「負けないんだからねっ」
ポカポカポカ!
頭を、ヨシコ様の腹にくっ付けて、グルグルパンチをしているわ。
「フン!」
「キャアアアーーーーーー」
「背中から落とすぞ」
「ギャアアーーー」
「すまねえだ。受け身知らないだが?休憩するだ」
「休憩しないのだからね」
ポカポカポカ!
「何故、諦めないだ」
「王子は、少し顔がいいだけの下郎ですっ、目だけ動かして、下卑た顔で、胸を見たり。三歩あるいたら、すぐに忘れる、そこがいいんですっ」
「うむ。オラの友達も犬を飼っていただ」
ハスキーという犬種だぁ
3日おきに、遊びに行ってもな。顔を覚えてくれないだ。
☆ヨシコ回想
『ワンワンワン!』(あんた誰、あんた誰?匂い嗅がせて!)
『まあ、カイザー、この前来た良子ちゃんよ。遊んでもらったでしょう』
そしてな。美千子ちゃんと、河原に一緒にお散歩に行っただ。ドッグランがあるだ。
『ワン!ワン!ワン!』(お外!お外!お外!)
『こら、カイザー、前に行きすぎない。キャ!』
カイザーの勢いに、美千子ちゃんはリードを手から離してしまっただ。
『危険だ。追いかけるだ』
『良子ちゃん。お願い!』
一分後に、河原のテトラポットに前足をかけて、自力では、上がれなくなったカイザーの姿を見つけただ。
一級河川だ。深いだ。
『キャイン!キャイン!』(助けて!助けて!)
オラは、引き上げただ。
するとな。
また、キャンキャン、河原を走りまわったのだ。
『キャン!キョン!』(たのしーたのしー)
『はあ、はあ、良子ちゃん有難う。カイザーたら!』
『うむ・・』
妙に胸がときめいただ。
・・・・
「だから、馬鹿王子好きなのは、恥ずかしいことではないぞ。お、力尽きたか」
マリア様は、最後、ヨシコ様のお腹に頭を寄りかかりながら、気絶したわ。
お姫様抱っこをして、私に近づく。
「うむ。クリスどん。手当を頼む」
「あの、実は、マリア様を通したのは私です。この処分は受けますわ」
「うんにゃ。恋敵を紹介してくれて、嬉しいだ」
「ヨシコ様・・・グスン、グスン」
・・・私の黒い感情は、まだ、晴れないわ。
このままでは、ヨシコ様は、馬鹿王子と結婚する。
最後までお読み頂き有難うございました。