到着:くっつきクラブ
◆到着:くっつきクラブ
僕はくっつきクラブにようやく到着をした!
クラブは海辺にあった。
男達は海辺近くでシャワーを浴びながら、それぞれのくっつき自慢をしていた。そして自らの腕や足を接着剤で固定し、恍惚の表情を見せていた。他人と自分を接着して楽しむ者もいる。
海岸沿いの道端に僕はバイクを停め、自分も海岸へ向かった。
ダニエルだ!ダニエルをしている会員がいる!!!!
それもスペシャルダニエルだ!
間違いない!ここは「くっつきクラブ」だ!!!!
しかもスペシャルダニエルをしている人は一人ではなかった!五人もいた!五人が一列に並び、海に向かってスペシャルダニエルを披露していた!!
五人とも軽々と、「頭が下、足が上」の状態で相手の背部を腹部へ接着し、持ち上げられる側も手足をバタバタとさせ、存分にその浮遊感覚を楽しんでいた。
なんとなく「捕まったカブトムシ」が、足をバタバタさせるのに似ていると思った。
僕もブリーフ一枚になり、くっつきクラブのクラブハウスと思われる建物に向かった。
その建物は二階建てのコンクリートの建物だ。
僕はドアを開け、建物の中に入り、人の声のする二階に向かった。
ドアを開けた。
そこには20人程の男女が歓談しており、みんな服を着ていた。
瞬間、会話が一斉に止まり、不思議な目で僕を見る。
僕は聞いた。
「くっつきクラブはここですか?」
ひとりが答えた。
「それは一階です」
僕は間違えたようだ。
僕は一階に戻り、もうひとつのドアをイキオイよく開けた。
部屋なんて無い。
単なる穴じゃないか?
振り向いた。
僕が立っていた。
そして笑っていた。
そして『その僕』は、僕を穴に突き飛ばした。
そして僕も死んだみたいだ。
首の骨が折れ、あり得ない方向に顔が向いている。
高いところから落ちると、必ず人は頭から下に落ちる。
僕は首から落下して、そのまま首が折れて死んだのだろう。
ここから種明かしをしてゆきます。
少なくとも、僕は今死んでいる。幽体離脱したので、僕は今、第三者として僕を見つめているような状態です。
今、目の前に僕の死体があって、その横で、僕の事を袋に詰めている人がいます。
一番最初に電車で右に立っていた、男女と、左に立っていたやたらとやかましく音楽を聞いていた若者です。
彼らは僕の背負いカバンから、大きめの袋を取り出し、僕の体をその袋に詰め込み始めました。
僕は何故、大きめのカバンを『必要なもの』として選んだのか?それは僕自信の体を運ぶ為です。
カバンで運ばれた僕は、巨大な鍋のような「炉」に放り込まれました。
どうやら、くっつきクラブで使用してる接着剤の原料は「人間そのもの」のようなのです。
人間同士を接着するのには、やっぱり人間の組成が必要との事。効率よくそれを凝縮するには、やはり原料として相当数の人間が必要であると。僕は科学はうといので、そのヘンはよく分かりませんが。
では、そもそも何故僕が、
・くっつきクラブの場所がここだと分かり、
・そこへ向かわないといけないと思うようになり、
・必要なものは巨大な袋と、東京都のビニール袋だと思ったのか?
それは横で聞いている若者の音楽に秘密がありました。
いわゆるサブリミナル効果です。あの音楽の中に、そうしたサブリミナル的なメッセージが含まれており、それらが僕の深層心理に働きかけ、僕をこの場所へ導いたようです。
そうでないと、僕がこの場所へ向かい、到着出来た理由は無い。
つまり、あの電車にいた男女と若者は、接着剤の材料になる人間を集めてくるのが仕事だったんですね。
途中出会った三人の人間、あれは何だったのかは、もう自分では分かりません。
さて、僕の肉塊について。
僕の体はもう骨だけになってました。必要な部分の抽出は完了した様子。
僕の骨は東京都指定のゴミ袋に詰められました。ああ、ゴミ袋はここで使うのか・・。
幽体離脱した僕はしばらくそのさまを眺めていたのだが、除々に意識が消え、意識が戻った頃には別の場所に移動していた。
いわゆるここは天国という場所なのか。
そこに、さっき三人目として会った人(車で通行人を殺害していた人)がいた。自殺した女はそこにいなかった。
天国も入り口は男女別になっているのだろうか?
門番がいた。
門番が「おかえり」といって声をかけていたのが印象的だった。
そうかこっちが僕ら本来の居場所なのか。
そして三人目に会った男が、僕に言った。
「さっき神様に怒られちったよ。」
僕は聞いた。
「大量殺戮をしたから?」
彼は答えた。
「いや、人数が10人程足りないじゃないかって。」
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