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8挿入目

 魔王の集まり――そんな地獄の集会に聖也は側近のひとりとしてミランダと共に参加しなくてはならなくなった。聖也は必死に抵抗したのだがカーミラに押し切られてしまう。そんなに参加させたがる理由はなんなのだろうか。魔王の集会は“ラグナロク”と呼ばれる。なんとも物騒な名前であり、誰が名づけたんだと言いたくなるほどセンスがない。ラグナロクに参加する魔王は二名まで従者、付き人、部下、側近などを連れていく決まりである。そもそも魔王って一人じゃないのかと聖也は心の中で何度も突っ込んだ。魔王の存在は人間たちにとって厄災そのものである。そんな危険な奴らと会わなくてはならないと考える胃が痛くなった聖也。しかし、パンパーンという国では人間の方が凶暴に感じられたため、何が悪なのか聖也にはわからずにいる。

 渋々カーミラ達に連れられ城を出てとぼとぼラグナロクの開催地に向かう聖也。処刑台に向かうようなそんな絶望的な気持ちである。ラグナロクの場所は徒歩で向かうらしく歩いていたわけだが、ワープスポットと呼ばれる場所に向かう。そのワープスポットからワープしてラグナロク会場である古城に辿りつけるのだ。ワープスポットに辿りつくのも迷いの森を抜けなければならず大変なのだがカーミラたちがいると思いのほか簡単であった。そうしてカーミラたちはワープスポットに辿りつき受付のお姉さんにラグナロク会員証をスキャンして本人確認してもらう。その後、受付のお姉さんに案内されてワープ装置に乗り古城へと移動する。

 聖也は古城を見てわかりやすく驚く。カーミラの城も立派なのだが、古城はそれの何倍も大きかったからだ。その古城の内部でも受け付けをもう一段階済ませ、個室へと案内されるカーミラ一行。個室に容易された椅子に座り、ラグナロク開始まで話しをして時間をつぶすことにする。

「聖也、他の魔王たちと会ったらわらわの後ろに突っ立ているだけで良いんじゃぞ」

「そ、そうなのか、緊張するんだが……」

「大丈夫じゃ、どんっと構えておればよい」

「ところでなんで俺が参加しなければならないの?」

「……あ、あれじゃ、すんごい強いスキル持ってるし護衛に適任だと思ったんじゃ」

 聖也の問いにカーミラは答えづらそうに口を開いた。ただ、理由はなかなかに納得のできるものであった。だが、微妙に歯切れの悪いカーミラに違和感を覚える聖也。

 だらだらとカーミラたちは話しをしていると部屋自体が光り始める。

「どうなってんのーっ?」

「おーそろそろ始まるぞ」

 そのまま光に包まれる聖也たちであった。




 光に包まれていた聖也たちはどうやら再び転移したようだ。「便利な世の中だぜ」などと聖也は普段なら思えたのかもしれないが今そんなことを思えるような状況ではなかった。気付いたときにはすでにその光景は目の前に存在した。既に大きなテーブルを囲み魔王たちが椅子に座している。その背後には決まり通り二人の従者――聖也もそのひとりである。

 魔王は全部で7人存在する。一人目は魔王カーミラ――ヴァンパイアの真祖である。聖也がお世話になっている魔王だ。ヴァンパイアの最上位種にあたり不死性を持っている。従者はミランダと聖也。ミランダは真祖近くまで進化したヴァンパイアである。聖也は伝説の魔王のスキルまで扱うことのできる聖剣である。

 二人目は魔王ソニア――竜王でもある。バイオレットの髪が美しく、西洋甲冑のような装備をしている。いわゆるドラゴンと呼ばれる者たちのトップである。竜王は複数存在するが、魔王として存在するのはソニアのみである。ソニアは他の竜王たちとはあまり仲良くないらしい。それゆえ他の魔王たちとのコネクションは重要となってくる。従者はヒュドランとヤマタン。

三人目は魔王ユキメ――スノークイーン。透き通るような白銀の髪、そして着物とドレスを合わせたような格好をした綺麗な人だ。名前からして日本人っぽい人であり、元いた世界――日本となんらかの関係がありそうだ。聖也は日本人なので思わず凝視してしまった。事前に魔王について調べた聖也はこの者とコンタクトを取りたいと考えている。もしかしたら転生者・転移者などかもしれない。元の世界との行き来など知っている可能性だってある。従者はスノウとツララ。

四人目は魔王マキナ――オートマタ。全身が機械かと思いきや機械だけではなく人間に近い生身の構造も持ち合わせ、かつ、自らの意思・意志をしっかりともっており、さらには魂も保有している。それゆえ妊娠や出産も可能であり生物ともいえる存在だ。従者はアルファとベータ。

五人目は魔王アスタロト――カタストロフ・デーモンクイーン。エメラルド色の髪に紫と青のオッドアイ、ゴシックアンドロリータを感じさせる服装をしており、その愛らしさに目を奪われる。他世界からやってきたとされる悪魔であり、とくに人間たちから恐れられる魔王である。直接本の口から語られることは今までなかったらしいが人間の虐殺をした回数は魔王随一とされる。さまざまな書物・文献にも一番危険な魔王と記されており、聖也も関わりたくはないと思うほどの魔王である。従者はシトリーとリュミエ。

六人目は魔王アララ――アストラル・アルラウネクイーン。森の断罪者の異名を持つほど強者であり、自らの森に危害を加える者には容赦はない。自然と平和を愛するというが問題解決方法はなぜか暴力的になってしまうことが多い。濃く深い緑色の髪に落ち着いたドレスの出で立ちである。従者はグリーンとブルー。

七人目は魔王レオネ――獣王。獅子のたてがみを想わせるほど立派で艶のあるプラチナブロンドが特徴の魔王だ。獅子の獣人も猫の獣人も似ているところがあり、ニャーニャを思い出してしまう聖也。だが、レオネはニャーニャと違い圧倒的な貫禄と覇気がある。従者はニャスペとタマエゴゼン。

八人目は魔王アイ――ラスト・アンデット。全身骨であり、性別すらわからない。ただわかることは絶対的な強者ということだけである。そして全裸、全裸、全裸。装備など不要と言わんばかりだ、骨だからか。禍々しいオーラを放っているが少しは抑えてほしい存在で、あたり前のように不死身である。アンデットは生者を憎むと聞くので聖也は身震いする。従者はボーンとカルシム。

 ――おいーっ、七人じゃないのかよ、本で勉強したとき魔王は七人だったんだが、しれっと多くないか!

「皆、久しぶりだな」

 最初に口を開いたのはソニアだ。案外優しそうな声で聖也は驚く。

 それに対し各々が返事をする。気付いた時には魔王の人数分の飲み物やお菓子などがテーブルの上に用意されていた。

「それで何か面白話はないの?」

「それなら、ほら、あるでしょう」

アララの問いにユキメが答えとある場所へ視線を送る。その視線に合わせ他の者も視線をそちらへと送る。そもそもこの問い以前に聖也に釘づけだったものは多い。

 ――なんかすっごく見られてるんだけど……。

 女性の視線には慣れている聖也だが、魔王全員からの視線の圧力には苦しさを覚える。

「ほー、気付いてしまったかのー、わらわの聖也に!」

 わざとらしい口調で話すカーミラ。

「わ、わ、『わらわ』のっておまえ、ヤッたのか?」

 レオネがプルプルと震えながら質問する。

「ふんっ! まあ、お主しら喪女同盟には男なんぞ一万年できないだろうがのう」

 カーミラは勝ち誇ったかのように鼻で返事をしてから述べた。その瞬間、複数の血管が切れるような音が聞こえた気がした。魔王たちは全員1000歳を超えているが男性経験がない。触れてはいけないというものがある。しかし、しかし、だ。カーミラは聖也を手に入れたことで自慢せずにはいられなかったのだ。喪女卒業者としては喪女たちに、持つ者と持たざる者の差を見せつけたかったのだ。そのため聖也を従者として連れて来たのだ。

「聖剣を発見、破壊シーケンス起動〈チクビーム〉」

 マキナが呟いた途端に強烈なビームが聖也に向け放たれた。そのビームはマキナの立派に発達した胸部の先端から放たれており絶大な威力を誇っていて、確実に破壊する意志が込められている。

「がはっ!」

 なすすべなく直撃である。

「おい、きさま、わらわの聖也に何をするっ!?」

 カーミラは怒りを素直にマキナへとぶつける。

「あたた、なにするんだよ、まったく最近の女性は乱暴だな」

 何事もなかったかのように口を開く聖也に驚く魔王たち。

「マキナ、聖剣とはどういうことだ?」

「私の魔眼でその者はエクスカリバーだということがわかったデス」

 ソニアの質問に答えてからさらに追撃態勢をとるマキナ。

「落ち着きなさいマキナ、エクスカリバーって魔王殺しの聖剣よね?」

 窘めてから質問するユキネ。

「そーデス、危険、あ、スキル〈疾風迅雷〉確認、魔王バアルの確立78パーセント、魂確認……魔王バアルの確立99.99999999パーセント、アナライズを完了デス」

 その瞬間、明確に空気が変わった、時が止まったかのように静まりかえる。

「へ?」

「ふぁ?」

「なんだって?」

「あねでぱみ」

「ファーっ!」

「えええぇぇぇぇぇぇぇーーーーっ!」

堰き止められていた水が溢れ出すかのように魔王たちは驚きの反応を示す。

「聖也……本当なのか……聖剣だっていうのは?」

「そ、そっち?」

 聖也に対するカーミラの問いに思わずアララが反応してしまう。

「あぁ、話すタイミングがなくてな……」

 申し訳なさそうに述べた聖也。それに対し頬を膨らませて拗ねてみせるカーミラ。

「お、お兄様っ!」

「ひでぶーっ!」

 誰かにお兄様呼びされた聖也だが、それと同時に何者かに抱きつかれタックルのようなかたちで吹き飛ばされる。抱きつかれたまま壁にめり込む聖也。

「だ、誰なんだ?」

「あなたのアスタロトですよ、お兄様!」

 太陽のようにまぶしい笑顔を抱きついたままむけてくるアスタロト。彼女がお兄様呼びしてくる者であったが、一番人間を虐殺したとされる魔王に抱きつかれそのようなことを言われても恐怖しか感じられない。

「人違いじゃないですか?」

「いいえ、このわきのにおい、このアソコの香しいにおい、間違いなくお兄様です!」

「なんで妹がそんなの知っているんだよっ!?」

「もうっ、お兄様ったら言わせないでくださいまし」

 語尾にハートが付いていそうな甘ったるい声で返事をするアスタロト。

「と、とりあえず離してもらえます?」

「嫌です、このまま離しませんし結婚します!」

 結婚という言葉に反応する喪女魔王たち。

「こ、こほん、とりあえずアスタロト、気持ちは分かるが落ち着いて話を続けようか。その男は聖剣でありそれと同時にバアル様なんだな?」

 ソニアが助けてくれようとしているのだろうか、間に入ってくれた。

「肯定、私の魔眼に間違いないはないデス」

 自信満々にマキナは答える。

 その後聖也は魔王たちに、聖剣として勇者たちによってこの世界に召喚されたことなどを説明した。バアルの記憶もないこともだ。

「なるほど、状況は理解した、まずは魂に刻まれた記憶を取り戻すことが先決のようですね」

 ソニアがさらりと言ってのけたが、脳以外に魂も記憶する機能があるというのは驚きであった。

「そのためには俺はどうしたら?」

「面倒はわたしがみよう」

 ソニアがそういうと他の魔王たちが猛烈に反対しだした。

「却下、バアル様はこちらで引き取る」

 マキナと同様の言葉を他の魔王たちも言い始めて収集がつかなくなりそうだ。

「お前ら不敬だぞ!」

 声を荒げテーブルを激しく叩く者がいた。

「……」

 再び静寂が訪れる。それを齎したのはテーブルを叩いたアイである。その骨の身体で筋肉などないはずなのに凄まじい力でテーブルは粉々である。

「おまえらのような欲望まみれの女どもにはバアル様は預けられない、落ち着くまでこちらで過ごしてもらう」

 他の魔王たちから反対の声はない。なぜならアイは全身骨であり、男など欲してなどおらず、安全であると他の魔王たちも考えたのだ。そもそもアイの性別などわからないし骨だし。

これから聖也はどうなるのだろうか。正直他の魔王のだれかに反対してほしかった聖也。アイの見た目がとても怖いのだ。人を見た目で判断してはいけない。しかし、それでも怖いものは怖いのだ。とくにそのオーラが。


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