4挿入目
聖也とニャーニャは宿屋の一室にいた。そう二人はベッドの上にいるのだ。姫騎士たちの部屋と比べたらかなり殺風景であろう。しかし、ふたりが睦言を行うには十分な場所だ。
「にゃっにゃっにゃっにゃっにゃっにゃっにゃっにゃっにゃっにゃっにゃっにゃっ!」
ニャーニャも勇者エリィに負けず劣らずグラインド騎乗を披露する。その腰を振る速度は加速度的に上昇していく。
聖也は勇者が気絶したみたいにニャーニャが気絶しないように聖剣をコンパクトなものにサイズダウンさせていた。
「ふにゃー男たまんないニャーっ! にゃっにゃっにゃっにゃっ!」
猫は男――聖也を堪能していた。勇者のときよりも遥かに長い間腰を振るニャーニャ。
「そろそろ出すぞ」
「心の準備がまだにゃあーーーーーっ!」
凄まじい勢いで魔力回路内に射出された白濁……魔力液はニャーニャの魂の回路を侵食していく。
「かはっ!」
その瞬間猫獣人は意識を刈り取られた。
「おいっ猫寝るな!」
聖也の声も空しくニャーニャは白目をむきとろける表情をして反応がない。
「おいおい、いろいろ教えてもらう約束をしたのにこの駄猫」
猫獣人ニャーニャとはこの世界の色々なこと教えてもらう取引を行っていたのだ。だからこそひとつになっていたのだが……。
「にゃ!?」
ようやく目覚めた猫。結構な時間眠りについていた。意識が戻らぬうちも聖也との幸せな夢を見ていた。そのため目が覚めたとき残念そうな表情をする。
「目覚めたばかりで悪いのだけど、この世界のこと教えてくれよ?」
聖也の問いかけに頷くニャーニャ。
「この世界のことを知らないみたいだから、聖也は他の世界からやって来たってことだと思うんだけど、他の世界から来た人の事を“イドーピーポー”と呼んでいるニャ」
「……だせえ」
「この国はパンパーン王国ニャ」
「……だせえ」
「ウェポン男子とはアソコが武器になっている男の子ニャ」
「なんでアソコが武器になってしまっているんだよ?」
「それを話すには長い時間を要するニャ」
「短く頼む」
「んー……、性欲が強すぎる女の子たちに男の子たちが襲われまくって、男の子たちの大事なモノが引きちぎられる事件が多発したニャ」
「え?」
「そんな軟弱な男の子たちは俺たちのアソコがカチカチならこんな悲劇は起こらないと天に祈ったニャ」
「は?」
「すると男の子たちのアソコはカッチカチの武器になったニャ」
「なんだってえええええええええぇぇぇ?」
「その猛り狂うアソコで次々と女の子たちを串刺しにして始末していったニャ」
「……」
「その物理的攻撃を回避して尚且つ男の子たちから絞り取るために、女の子たちのアソコは魂の回路に非常に繋がりやすく進化していったニャ、たいていの女の子はアソコあたりを自由自在に魂の回路に繋げられるニャ。つまり厳密には女の子のアソコに武器が刺さっているわけではないニャ」
「鞘入りの儀とは?」
「ドッキングニャ、言わせんニャ! 魂の回路に武器が挿入されることニャ」
「……」
「ちなみにアソコ大戦によって男の子の人口が極端に少ないのがこの世界ニャ」
「だから俺がこの世界に来た時の大聖堂みたいなところは女ばかりだったわけか、城下町も女だらけだし」
「にゃー、だから女の子は男の子に飢えてるから、男の子見つけたら無理矢理でも自分のモノにしようとするニャ」
――元の世界の女と一緒じゃないか……
聖也は心でそう思うのだが、それは聖也が大人気ホストでモテてモテて仕方がないからである。自分が特別な存在であることを失念している聖也であった。
「もしも聖也に取引を断られていたら力づくで自分のモノにするしかなかったニャ!」
ニャーニャはキリッとした決め顔でそう言った。
「……」
「と、ところで聖也、ステータスはどんな感じなのニャ?」
ニャーニャは微妙な空気を感じ取り話題を変える。
「何だそれ?」
「まさか元の世界にはなかったのニャ?」
「ないな、さっぱりわからん……あ、田中が何かそんなこと言ってた気がする」
伝説のナンバーツーホスト田中、彼は永遠の二番手ではあるがヲタクの道は頂点を極めたとされる天才である。ヲタクの世界を極めるためホストをしていたのだ。そんな彼が聖也に事あるごとにヲタク知識を吹き込んでいたのだ。
「ステータスオープンって言うと自分だけが見える情報が出てくるニャ」
「ステータスオープンっ!」
聖也は自らのステータスを見て驚愕した。なんと名前が聖剣王聖也・エクスカリバーになっていたのだ。
「なあ名前にえくすかりばー? ってついてんだけどなにこれ?」
その瞬間ニャーニャは真顔になる。
「まさかとは思ったニャけど聖也は本当にエクスカリバーだったにゃんて。エクスカリバーは魔王を倒すことができるほど強大な剣ニャ、魔王を倒すために呼ばれたニャ?」
「なんか勇者たちがそんなこと言っていた気がする」
「にゃあああああああああああぁぁぁぁっ! 聖剣を汚してしまったニャ、なんという背徳感ニャッ!」
ニャーニャはいやらしい表情を必死に抑えようとするがそれが難しく余計におかしい表情になってしまっている。
「と、ところで“スキル”ってのは何なんだ?」
聖也は意に介さず、ステータスに記載されていたスキルについて質問した。
「おほんっ、スキルっていうのは簡単にいうと特殊技能のことニャ。例えば〈剣術スキル〉を持っていたら剣が上手に扱えるみたいな常時発生型のパッシブスキルとかあるニャ。他には一日に三回まで死んでも復活できる回数制限があるスキルとかもあるニャ」
「“魔法”ってのとは違うのか?」
「魔法は原則として魔力を消費するニャ、一方、スキルは原則として魔力を消費しないニャ」
聖也にはニャーニャがいろんなことを教えてくれてとても便利なため未来からやって来たネコ型ロボットに見え始めていた。
「魔法やスキルはどうやって習得するんだ?」
「はじめから覚えていたり修業して習得したり、ある日突然習得したりするニャ」
「レベルってのは強さの段階みたいなものか?」
「その通りニャ。ニャーはレベル15のBランク一流の冒険者ニャ」
「冒険者って田中が言うには日雇い労働者らしいけどそうなのか?」
「ムカつく言い方だけどそういう側面もあるニャ、おのれ田中!」
「つまりニャーニャは一流の日雇い労働者なんだな」
「言い方!」
「よし、決めた! 俺この国出るわ!」
「にゃー、この流れはお約束の冒険者登録にいく流れじゃないのかニャ!?」
「ここもそのうち勇者たちに見つかるだろうし、はやく安全な場所にいきたいんだ」
「本当の本当の本当に魔王は倒しにいかないのかニャ?」
「いかないな」
「にゃーもついてくニャ」
「いやけっこうです」
猫はジト目になる。
「にゃーもついてくニャ」
「いやけっこうです」
「いやにゃいやにゃいやにゃいやにゃいやにゃいやにゃ!」
仕舞いには駄々をこね始めてしまうニャーニャ。
その時であった、ドアをノックする音が聞こえた。
『夕食をお持ちいたしました』
今度はドアの向こうから声が聞こえた。確かにご飯には程良い時間だ。この宿にそのようなサービスがあるとはありがたいと聖也は思った。
「にゃーい、ご飯ニャ」
猫は、猫獣人は、ニャーニャは勢いよくドアを開ける。
「にゃはっ!」
ドアを開けた瞬間猫は剣で刺し貫かれる。
「ニャーニャ!?」
驚愕し声を上げる聖也。
「やっと見つけたぞ」
そう告げると剣を引き抜きニャーニャを蹴飛ばした。
「お、お前は誰でしたっけ?」
「勇者エリィ!」
「姫騎士リーリア!」
「聖女マリアンヌ!」
聖也のボケに対し、丁寧に皆名乗ってくれた。
「お前らニャーニャになんてことを?」
「獣人風情の一匹なんですか? あなたは自らの使命を投げ出して逃げる気ですか?」
聖女がストレートに獣人を見下した発言をしつつ、聖也を煽ってくる。
「うん、逃げる!」
宿屋の窓ガラスを華麗にぶち破り脱出する聖也。
「また逃げた、追うぞ!」
「お、きゃ、く、さ、ま!」
「なんだ、この一大事に!」
「弁償してもらえます?」
「あ、ハイ……」
宿屋のお姉さんの圧倒的な圧力に負けて心をへし折られる勇者、姫騎士、聖女であった。このお姉さんが魔王を倒せば良いのではないだろうかと宿屋の利用者には度々思われるほど強者のオーラを放っている。結局、聖也はこのお姉さんのおかげで逃げ延びることができたのだが、聖也がこのことを知るのはまだ先のことである。




