13挿入目
結婚式をぶち壊した謎の進入者それは……。
「俺が誰かだと? んなもん獣王レオネ様だっ! 俺様の男を勝手に取ってんじゃねーよ、ぶちころころすぞ!」
進入者の正体は魔王(獣王)レオネであった。美しいプラチナブロンドの髪を靡かせて登場し、教会の綺麗なガラスをぶち破り颯爽とヒロイン?の聖也を連れ出そうとする様は、まさにヒーローそのものだ。
「貴様、いくら魔王どうしの平和条約を結んでいるからといって、これは許されないわよ?」
純白のウエディングドレス姿のアララは怒りなど抑えることはできず、周囲には大量の植物が出現していた。つまりアルラウネのなかのアルラウネ――アルラウネ・クイーンであるアララは臨戦態勢であり、いつでも戦える状態であるということである。
「先に条約を破ったのは貴様だぜアララ? あたかもユグドラシルが自分のものであるかのように見せかけ、損害賠償の代わりに結婚をせまるなんざークズのやることだぁ。ユグドラシルは所有者決まってねーのによっ!」
「くっ!」
図星をつかれ押され気味であるアララ。あの大きな木――ユグドラシルは誰のものでもないのだ。自分たちに所有権があると勝手に争っているだけ。そんなユグドラシルを破壊したところで損害賠償請求権など存在していない。つまり、聖也は所有権を詐称され詐欺被害に遭いそうになった、ということである。
「そもそもユグドラシルはバアル様が植えたモノだぜ? 植えた本人がどうしようがどうでもいいだろう?」
確かに聖也=バアルだ。そのバアルが植えたものであるならば、そもそも損害賠償請求されても……困る。聖也は前世の自分自身に感謝する。
「ぐぬぬーっ!」
「ざまあねえな。じゃあそういうことでこの男はもらっていくぜ?」
「そうはさせないわ〈ナチュラル・バインド〉〈ナチュラル・トラップ〉!」
「ふんっ!」
アララは連続発動させるが、それを華麗に爪で切り裂くレオネ。そのまま苛烈な戦いが続くと思われたが、それを妨げる者がいた。
「あの……アララさん……うっ……俺を騙したんですね……酷いっ!」
聖也のホストスキルが炸裂したのだ。涙ながらに訴える。その涙はまさにダイヤモンド。光り物に弱い女という生き物は、男の涙にも弱いのだ。
「ご……ごめんなさい……」
アララから渾身の謝罪。暫く沈黙が続くが、その沈黙を破る者がいた。
「なあ、じゃあもらっていくぜ?」
「なんであなたが決めますの?」
「男を騙す女のとこにゃーいたくないはずだぜバアル様もよ?」
「ぐぬぬーっ!」
聖也を連れ去ろうとするレオネを、なんとか止めようとするアララだが全くうまくいかない。
「アララさん、ごめんなさい……レオネさんの所に自分はいきます」
「ほれーざまーみやがれーべろべろばーっ!」
小学生みたいな幼稚な煽りをする男前なレオネだが、その顔が煽りレベルが高すぎて男が下がるのであった。
「うわあああああああぁぁぁぁっぁぁぁぁっんっ!」
アララは幼稚な煽りもとい攻撃に耐えきれず大泣きしながら走り去ってしまった。レオネの完全勝利である。
そんなこんなで聖也は、今、レオネの城にお世話になっている。聖也のもつスキル〈ザ・ヒモ〉のお陰かどうかはわからないが、誰かのお家というよりお城で世話になってばかりなのだ。現実世界のホストたちは売れないと寮で生活していたりすることが多いのだが、それがまた酷いもので、はっきりいってタコ部屋である。ホストがぎゅうぎゅうに詰め込まれた部屋であり、とても汚く、よくもまあこんな所に住む輩どもに女たちは会いに来ようとするものだ。もっともこれは売れないホストのお話であって、聖也や田中のような一流のホストはタワーマンションに住んでいるのだがそれはほんの一握りである。三流ホストは、お金のない女性を風俗で働かせて絞り取るだけの絞り取って使えなくなったら捨てる。この程度だから三流なのだ。
また、頭の悪いホストは、若い女や経験の浅い女を騙すことしかできず、太客をいつまでたっても持てない。それはヒモにおいてでもあり、ヒモにもカーストは存在する。三流ホストではレベルの低い女のヒモにしかなれないが、その支えがなければ死んでしまっているかもしれない。それに対する感謝すらないのが三流なのだが……。一方、一流のホストはヒモレベルも違う。悠々自適に暮らすことができ、かつ、更なる収入を得たり、学問に勤しんだりと己を高め上昇スパイラルを巻き起こすことができるのだ。絶えず進化し続けることができるのが一流のホストである。
そんな一流のホスト――聖也はレオネの城でも本を読み漁っていた。大ベストセラー本である『おとこの捕食の仕方』が置いてあったが、これはカーミラたちの城にもあったものだ。この世界の女というもの喪女ばかりで常に男に飢えているため、この本は必携の一冊らしい。だが、聖也はこの本が何となく怖かったので読んでいない。
聖也が読んでいるのは『正しいスキルの使い方』などスキルについてのことなど他の城で読んだことと変わらない……と思われたが『侵略者人間』という本を読んで衝撃を受けた。この獣王国は人間によって侵略戦争を仕掛けられているというものだ。これでは人間が悪にしか感じられない。この獣王国出身のニャーニャを始末したのも人間だ。
「聖也たーん、あそんでーっ」
本を読んでいる聖也のところに、甘ったるい猫なで声で話しかけてくる者がいた。
「にゃーんごろにゃーんっ」
まるでニャーニャを彷彿させる話し方をする人物であった。
「ど、どうかなされたのですかレオネさん?」
そう、この幼女のような話し方をしてくるのは魔王レオネである。あの漢らしい立ち振る舞いのレオネさんはどこにいってしまったのだろうかと言いたくなるような話し方である。
「せーにゃー、どうしてそんな他人行儀な話し方するにゃー、顔すりすりの刑にゃー」
レオネは獅子の獣人である。しかし、誰も見ておらず聖也と二人きりの時はただの猫である。だからこそ余計にニャーニャを思い出してしまうのだが……。顔すりすり、ほっぺすりすりは安心感を得たい気持ちの表れだろうか、それとも単純に甘えたいだけだろうか。明らかなことは、獣人にとって顔や頭をすりすりするというのは大切な人に対してするものである、ということである。
「ぐ、なんて強烈なすりすりなんだ、お返しだ、すりすりーっ」
「にゃーふーふーっ」
ものすごく満足したのか満ち足りた表情をするレオネ。
「レオネさん、真面目な話なんだが、どうして獣王国はこんなに人間の国パンパーンと仲が悪いんだ?」
急激にレオネの顔は先ほどとは打って変わって真面目なものとなった。
「人間が俺たちの領土を奪ったり男を攫ったりするんだ、もう獣王国ビーストにはほとんど男は残っていないんだ」
悲しそうな表情を浮かべるレオネ。子作りできないのがそんなに悲しいのか。
「人間の方から危害を加え始めたのか?」
「ああ……」
「自分は人間たちには酷い目にあったというか召喚された……多分レオネたちと戦うためだと思う」
「エクスカリバーだもんな、聖也のエクスカリバー見てみたいなっ」
真面目な話をしていたはずがレオネの顔がとろけていた。そして視線は聖也のアソコに釘付けであった。
「もー、まだ真面目な話しているんだからさ。人間たちは今も攻めてきているんだろ?」
聖也の言葉に反応し再び真面目な顔をするレオネ。
「ああ、近いうちにでけー戦争がある」
「なんだって!?」
「そもそも開戦に猶予があった理由は……聖也だ。奴らはお前を召喚して掌握さえしていればすぐにでも俺たちを滅ぼそうとしていたんだ。その絶大なエクスカリバーの力で俺たちを一掃するつもりだった。だけど奴らは聖也を手懐けられず、聖剣は今ここにあるわけだ、がっはっはっはっ!」
「奴らに勝てるか?」
「もちろん勝ってみせるさ」
自信満々なレオネを見て安心する聖也。だが、それと同時に無理をしていないか心配にもなるのであった。
「失礼します、レオネ様、敵軍が迫っております、急ぎ準備をっ」
聖也とレオネが話している最中、タマエゴゼンがノックをして入出し報告にきてくれた。しかし、内容が内容だけにもたもたしている暇はないようだ。




