11挿入目
天井に何かが突き刺さっている。先ほど聖也たちがいた部屋だ。聖也とアイの激しい闘いのあった部屋だ。あの闘いから数時間は経っている。時間が経ってもアイの姿が見当たらないため、心配してカルシムとボーンが聖也の部屋を訪れた。
「聖也様、失礼する、こちらに魔王様は……ってなんだこれはっ!」
目を見開き驚愕する……といってもカルシムにもボーンにも目はないが。
「どうして天井に全裸の女が突き刺さっているんだっ!」
そう、突き刺さっていたのは女だ。その突き刺さっている女はHカップはあろう爆乳であり、芸術的な肉体美を誇っている。しかし、なぜ突き刺さっているのか。
「とりあえず引き抜くぞ!」
「おう」
カルシムとボーンは協力して突き刺さり女を引き抜いた。カルシムとボーンなどのアンデットとは違いその女はあたたく確かな温もりがあった。
「おい、返事をしろ、なにがあった?」
カルシムはその女に往復ビンタをして目を覚まそうとする。
「ん……ちょっ、やめんかカルシム、主に対して何をする?」
「なにを言うこの変態全裸女めっ! 聖也様の部屋で何をしていた?」
「何をって……愛ゆえに……」
もじもじしながら答える変態全裸女。
「怪しい奴め、お前を拘束する!」
「先ほどから主に対して不敬だぞ、〈ボーン・バインド!〉」
拘束しようとしたボーンだが先に全裸女に拘束される。
「くっ」
「おまえたち、なぜわたしがわからない? 洗脳でもされているのか?」
「何を言っている変態全裸女っ! 主を騙るのもいい加減にしろ、主は全身骨であって、そんな乳ぶら下げてなどいないわっ!」
「おっふっ」
カルシムの言葉を受け、自分の身体を確認してようやく状況を理解した変態全裸女。自分が骨ではなく血沸き肉躍る存在だと認識した元骨女。
「おまえたち、私が魔王アイだ、信じてくれ、目覚めたらこうなっていた」
それから事の次第を語り出すアイ。
「つまり、聖也様と交わったらこうなっていたと?」
「うん」
「ならば魔王様か確かめるために、我らが魔王様しか使えないスキルを使ってください」
「いいだろう、〈ボーン・キャッスル〉!」
アイの城の窓から、外を見るともう一つ城ができている。ただし、骨骨しい。このスキルは現在使用できるものはアイのみだ。
「あ、アイ様なのですか?」
「はい」
「……ごめんなさい……」
カルシムとボーンの見事なスライディング土下座が炸裂した。あまりの鮮やかさに怒りさえなくなる。
「まあよい、聖也様どこ?」
「わたしたちが来た時にはもうおられませんでした」
「探すのだ、わたしのモノだーっ! だれにも渡さんっ!」
「はっ!」
カルシムとボーンは命令を受け速やかに捜索を開始する。
「はあ……聖也様……どこに行ってしまったの……」
聖也を襲ったからいなくなったとは考えられないアイであった。こういう人は多い。自らの愛が勝手に届いたと勘違いするストーカーは……。とくにホスト相手に勘違いする女はあまりにも多すぎる。ちなみにとっても残酷な現実だが、ホストの言葉を真に受けてはならない。
アイの城から抜け出した聖也は森の中にいた。アイの城が杜撰な警備をしていたから簡単に抜け出せたというわけではない。聖也のスキル〈見えざる剣〉により透明化したかららだ。このスキルは想像以上に凶悪なモノであり、視えないだけではなく聴くことさえもできなくなる。ただ使いこなすには骨が、アソコが折れる代物だ。
聖也は安住の地を求めさまよい歩く。かなり歩いた。〈疾風迅雷〉でかっ飛ばそうかとも思ったが、コントロールがまだできていないので使用するかどうか悩んでいた。そもそもあまりにも派手なスキルなので目立ってしまう。しかし、使いこなすには慣れや練習が必要不可欠だ。
「〈疾風迅雷〉!」
結局迷ったあげく使ってしまい、発動し後悔する聖也。こういうものは使っても使わなくても後悔するものだ。なんといっても速すぎるのだ。おまけに、森の立派な木々たちを破壊しながら進んでいる。木々だけでなくモンスターたちも次々と倒してしまっている。しばらくスキルを発動してグルグルと回っていたらコツをつかんできて曲がったり止まったりできるようになってきた。そして空も飛べるようになった。かなり応用の利くスキルだと認識することができた。しかし、森の犠牲は大きい。巨大ビルような大きさの大樹すら切断され吹き飛んでいる。もっと他の場所ですべきであったと聖也は後に思うことになる。
聖也はスキルを発動したため疲れたのか、聖也が吹き飛ばした大樹の切り株の上で大の字になり休憩している。
「貴様の仕業か! 観念しろっ! 〈ナチュラル・トラップ〉」
あらゆる植物のツルが聖也に絡みつき拘束されてしまった。〈ナチュラル・トラップ〉は自然の中で発動すると拘束力が強まる強力な魔法だ。聖也が気付いた時には既にたくさんアルラウネたちに囲まれていた。
「くっ、離せっ!」
聖也は何度もツルを引きちぎるのだが、それに負けじと何度もツルが絡みついてくる。
「隊長、こいつ男です、ヤっちまいましょうぜ」
「えへへ」
「ひひひ」
「はあはあはあはあ」
「まあ、まて、このツルを何度も引きちぎるとは凄まじい剛力だ、うかつに近づくな」
アルラウネ達は今にも聖也を犯しそうな雰囲気だ。しかし、隊長は冷静な判断を下す。只者ではないようだ。
「では我々がいただこう!」
突如としてアルラウネ達に口を挟んだものがいた。
「何者だっ?」
「いちいちそんなことを聴く必要はあるまい、はっぱ隊隊長さんよ?」
「む、貴様は、にゃんまる隊隊長、ここはアルラウネの土地だ、勝手に侵入することは許さんっ!」
「おっとっとそれは違うぜ? ここは獣王国の土地だ、その男を置いて立ち去りな」
そう、ここは領土問題と呼ばれる問題を抱えているのだ。魔王アララと魔王レオネの国は隣合っており、領土をめぐって争っている。ではなぜ争いが起きていたのか。それは大樹があったからだ。その大樹は大いなる果実をもたらすものであり、二人の魔王はそれを求め激しく対立してきたのだ。しかし、“大いなる果実”とはいったい何なのか。聖也はそれをまったく知らず大樹を破壊してしまった。
「それはできんな! この男はアララ様に引き渡さなければならない重要人物だ。ここで貴様を排除するっ!」
「お前ごときにできるわけねーにゃああああっ!」
隊長どうしがぶつかり戦いが始まる。その戦いを見てそれぞれの部下たちも戦い始める。そして聖也はその戦いが始まったことを知るや否やツルを引きちぎりそそくさとその場から脱出を図る。
聖也は再び森の中に入り颯爽と駆ける。しかし、駆ける時間はそんなに長くはならなかった。
「どちらにいかれるのです?」
いきなり声をかけられて足を止める聖也。あたりを見渡して声の主を探すがどこにも見当たらない。
「こちらですよ」
「あ、あなたは!?」




