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7.潜入、貨物列車!謎の宝

二人は線路にたどり着いた。


「何ここ?」

「信号場だ。すれ違うためここで止まる」

「その時に乗り込む算段?」

「そうだが……これは……複線化する気か?」


信号場の手前まで新しい線路がひかれていた。


「貨物だけでも収益取れてるんだ」

「とても考えられない……」


更に線路に近づくとフランは布を取り出した。


「なにそれ?」

「透明マント」

「そんな強そうなの持ってたの?」

「昔貨車からな」


フランは誇らしげに身につけた。羽織ったところの背景か透けている。


「結局強盗じゃん!」

「まあまあ……ただ匂いや音は消せないしこちらも外を見れない」

「使いにくくない?……」

「光を回折させてるだけだ」

「名前に反して万能感がない」

「軍用だと空間ごと曲げて一方的に姿を消すらしい」

「やっぱ軍事はレベルが高いね」

「ん?音がする。そろそろだ。とりあえず顔だけ出しておこう」


側から見ると生首が二つ浮いている奇妙な光景となった。


「かえって目立たない?」

「ああ……普通に行くぞ」

「結局ゴリ押し!」


二人はそそくさと貨車に向かう。


「あの屋根無しに乗るぞ!」

「SL時代に石炭を運んでそうなアレか」


二人は無蓋車の側面に着いている梯子をそれぞれ登り中に入ろうとする。


「しまった!中に入るな!」

「え?」


相模は勢いに任せ貨車の内側に入りこんでしまった。中には大量の金属片が散乱している。


「遅かった……それはミスリルの切子だ。今から引き上げるから動くな」

「キリコ?ただの金属の破片でそんなに……」


相模は少し手を動かしフランの真意を理解した。


「え?」


ちょっと触れただけで手の甲が擦り傷まみれとなり血が出てきたのだ。


「嘘!……攻撃力高すぎ!」


驚いた相模は叫んでしまった。よく見れば下半身もボロボロだ。


「静かに……掘削で削り取られたミスリル合金の屑だ。人体など紙切れ同然だ」

「そんな危険物をそのまま……」

「皆使い魔や魔法で動かすからな。人がいなければ誰も傷つかない」

「これがオートメーションの末路か」

「……何か来る」


フランも貨車の中に入り込む。ただし縁に指をかけ懸垂の形でぶら下がっている。


「多分この辺だ……」

「今時金属屑を盗む?無賃乗車なら有蓋車っしょ」

「確かにこの中に入れば肉片だな」

「確認する?」


相模とフランは絶望の表情を浮かべた。このままでは戦うこともできず蹴落とされてしまうだろう。


「……契約に中身の確認あった?」

「ないよ」

「……確認するほどの対価もないよな?」

「うん」

「なら無視だ無視。謝礼も無いだろうし割に合わん」

「確かに人間がいくら困ろうが関係ないもんね……」


話し声は離れ2体の会話は相模らにも聞こえなくなっていった。


「助かった〜」

「ああ。もう腕が限界だ」

「それより早く出して……」

「ああ、分かった」


相模は引き揚げられた。靴や服はボロボロだ。


「良い機会だ。着いたら服を仕立ててこの世界に溶け込もう」

「私の体はボロボロだ……」

「嘆く暇はない。動く前に移動だ」

「なら屋根つきに乗ろうよ」


二人は貨車の縁を歩き別の車両に移った。移動途中に車列は動き出す。


「ヤバい!このままじゃ落ちる!」

「こいつの出入り口は側面と屋根か」

「上からはバレにくそう」

「鍵がなければね」


フランは扉に手をかける。


「やはり罠がある」

「え?」

「魔法だ。動かせば……爆発か警報のどちらかだろう」

「じゃあ違う車両行く?」

「いや……ここまでの警戒……中には相当なものがあるはず」

「嫌な予感しかしない」

「道中の足しにしよう」


フランは屋根にしゃがみ込んだ。


「まずは魔法の配置からだ」

「触れただけで分かるの?」

「そうさ。凄いだろ」


フランは物凄いしてやった感を出している。


「殴りたい……そのドヤ顔」

「やるか?殴り合いなら多分私が勝つぞ」

「結構……それで具体的には?」

「結界が2〜4層、魔力炉複数、異界に飛ばす魔法陣まであるな」

「よく分からないけど無視しない?」

「……入ろう」

「正気?」


冗談かと思い相模は相手の顔を見た。だが表情を見て悟った。獲物を見つけた猫のように目を爛々と光らせていたのだ。


「全ての魔法には穴がある……それが私の持論でね」

「それが分かったの?」

「ああ。確かに守りは強固。だが目的地に着いたら?」

「解除して運び出して……」

「そう、無効化する。今回は時限式だ」

「一定の時間で解除と」

「多分到着時刻だ。だから時計回路を進めた」

「早くない?」

「魔法に頼りすぎた世界で生き抜く知恵だよ」


フランは扉に手をかけた。


「これも破られる前提でなければな……」

「そもそもそんな危険に見合う価値あるの?」

「無いんじゃないかな?だが僅かな可能性でも見逃せない!」


フランは勢いよく扉を開けた。


「やっぱり脳筋だ!」

「誰もいなければ勝ちさ」

「勝負する段階で負けだよ」

「まあ……中にはいないな」

「あれ?思ったよりザル警備?」

「入るとしよう」


フランは器用に屋根から床に着地する。それに続き相模も……盛大にバランスを崩し床に吸い込まれた。


「痛でえ」

「その身体能力では先が思いやられる」

「肩がうまく動かないせいだけど?」

「うう……」

「にしても……あるのは箱だけ?」

「それで一両とは豪華だ」

「怪しすぎる」


フランは箱を手に取った。


「中には……指輪だけ?」

「不用心すぎる!」

「ちゃんと調べた。箱に仕掛けは無い」

「じゃあその指輪が伝説のなんとかだったりするのかな?」

「でなければこの警備の意味がない」

「一人が一瞬で破ったのを見ると微妙だ……」

「にしてもなんだこれは……」

「こんな見え見えの罠に一体誰が……」


相模は周りを見渡しながら言う。だか不用心な人物は隣にいた。


「確かに嵌めても何も無いな」

「?」


相模は困惑した。フランはどうしたと言いたげに指輪を嵌めたり外したりを繰り返している。


「何釣られてるの?爆速すぎるよ!」

「目の前にあれば確かめるが礼儀というもの」

「……礼の概念あったんだ」

「失礼な!今までのことを思い返せ」


相模が思い浮かべたのは人の骨を折り、村長に明らかな劇物を渡し魔法陣を破って盗む気満々のフランの姿だった


「自覚のない悪意の擬人化じゃん」

「酷い言われようだな……サガミも使わないか?」

「え?」


フランは相模に近寄る。


「何?また折るつもり!?」

「サガミなら……何か起こるかな?」

「や、やめろ!勝手に巻き込まないで!」

「別にいいではないか。遠慮は無用だ」

「私のそばに近づくなー!」


フランは無理やり相模にはめた。


「……何も無い」

「本当にガラクタか?」

「使い方が違うんじゃ?」

「使い方……そうだ!何か祈ったらどうだ?」

「何を」

「魔法でもなんでもいい」

「使えないけどものは試しかな?」


相模は適当に魔法を祈ってみた。どこからともなくシャボン玉が生まれ天井の扉から飛んで行った。


「……しょぼ」


フランは笑いを抑えるのに必死だ。


「ま、まさかそうなるとっは……」

「そこまで可笑しい?」

「ぎゃ、逆に何か強そうなのを祈ったらどうだ?」

「強そう?」

「世界を一変するようなものとか」

「一変?……あっ」


突如三角錐の謎の物体が目の前に落ちた。


「これは……なんだ?」

「……ヤバッ」

「これが?」


フランは物体を指先でツンツンしてる。


「脳裏に浮かんだのは核兵器。それもその一つだと思う」

「知らないものだ。だがこの大きさなら大丈夫だろ」

「多分街一つは吹き飛ばすんじゃないかな?」

「これで?」

「うん……フランが世界を一変とかいうからとんでもないの出しちゃったじゃん!」


相模はフランに詰め寄る。


「なら無くなるのを祈れば」

「そうか」


相模は懸命に消すように祈ったが何も起きなかった。


「もしかして……取り消し不可?」

「貸してみろ」


フランは相模から指輪を取り自身に使った。すると円錐体を片手で持ち上げた。


「か、片手で?」

「自分自身のスキル強化にも使えるのか。要は使いようか!」


左手に持ったフランは恐ろしい力で投げ飛ばし円錐体はとんでもない速さでどこかへ飛んで行った。それと同時に相模の視界は真っ赤に染まる。


「うわ!赤!ってなんだこれ?」

「?」

「フラン左腕落ちてたよ」

「そうか?すまないな」


フランは相模から腕を受け取る。


「ってちょっとおかしくない?」

「ちょっとどころじゃない!どうすればいいのだ?」


二人とも気が緩み一気に現実は引き戻された。


「まず失ったらすぐ気付くでしょ!」

「緊張しててな……どうすべきか」


フランは相模に腕を押し付ける。


「人に当てるな!」


「だがこのままでは失血気絶永眠まっしぐら……気を保つので精一杯だ!」

「その指輪で治るように祈れば……」

「うらあああ」


最後の気を振り絞り指輪を使うと腕が生えた。


「マジで治った……」

「くっつくかと思ったが……これはどうすれば?」


フランはあまり物を相模に押し付ける。


「だから押し付けるな!いらないよ!」

「そうだ!この落ちた腕も治してみよう!」

「え?既に治ってるじゃん」

「そこが気になる。治った人の一部を治るように念じたらどうなるのかなと」

「……絶対碌なことにならないよ」

「さて治れ!……な、何か来る」

「え?」

「前方の魔法陣だ!破壊するぞ!」


フランは腕をバタンと落とし相模から剣を勝手に抜くとジャンプして間合いを詰めた。相模は一歩遅れ拳銃を構え突撃しつつ発砲する。だがあまりの反響音のキツさに狙いは外れフランの突きもギリギリ間に合わなかった。


「遅かったか!」

「なにこれうるさすぎ……」


魔法陣からはスーツ姿の男が現れた。向きを間違えたのか背中をこちらに向けている


「こんなことになってるとは……ってえ?」

「あっ……」


バランスを崩したフランの一撃は男の尻を突いた。

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