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6. つかの間の平和 時刻表を求めて

「何も起きないけど?」

「何?」


魔法陣は一切動かない。


「誰もいないし……ちょっと中身覗いてみよう」

「中身?」

「記録を見る」

「勝手にして大丈夫?」

「脆弱性に漬け込んで中身を覗き見る。些細なことさ」

「完全にアウトでしょ……」

「原因は……未定義?サガミが生き物と認識されてない!」

「はあ?」


異世界に来て早々、相模もはや生き物の扱いすらされなかったことにショックを受けた。


「魔法陣からすればサガミは路傍の石と同じだ……」

「嘘でしょ……」

「これでは物理的に行くしかないな……」

「鉄道とか?」

「旅客路線は私の生まれる前に大半が廃線だよ」

「嘘だ……」

「魔法陣の開発はそれほど偉大だった」


人や物が一瞬で移動できる。そんな世界では既存の物流は大きく変わるのは部外者でもすぐにわかった。


「そっか……瞬間移動には敵わないね」

「残ってるのは観光向けの臨時だけ。だが貨物は残っている。魔法陣だと大規模輸送の魔力消費と収支が取れないからな」

「それ人乗れるの?」

「忍び込む」

「バレない?」

「今時貨物線にいるのは自動人形だけ。盗賊すら見向きしない荷物を選べばいい」

「盗賊って……治安終わってる」

「そっちにはいないのか?」

「海外にはいたけど」

「なるほど。やめるか?」

「やってみよう。どのみち手段がない」

「では村長に運行ダイヤを聞こう」

「村長か。もう会うこともないだろうけど挨拶ぐらいしておくよ」


そうして二人は村長宅に着く。その途中でフランは瓶を家から持ってきた。


「どこかで聞いたような曲が流れてる」

「暇だとよく楽器の練習をしてるからな。世界が違っても似た曲はあるようだな」


ドアチャイムを鳴らした。


「すみません」


返答は無かった。


「いるのは分かってます。開けてください」

「これ演奏で聞こえてないんじゃ……」

「……ちょっと借りる」

「え?」


フランは相模からライフルを奪い空に向け発砲した。


「開けろ!!!開げでぐだざい゛!!!」


別人にしか聞こえない声を聞き相模はこんな声も出せるのかと絶句した。


「イヤイヤキャラ変わりすぎでしょ!」

「……これぐらいしないと気付かない」

「えぇ……」

「今や酒すら物足りず工業用ポーションを直接打っているからな……」

「床に注射針散らかってそう……」


だが相模の予想は外れた。無論悪い方に。


「うるせ〜」


やつれた初老の男が出てきた。腕にはチューブが繋がっており点滴台を杖代わりにしている


「まさかの血中投与!!!」

「生きてるのが不思議だ」

「人間辞めてる……」

「生まれつき身体が丈夫とは口癖だが」

「そういう次元じゃないよ!」

「いっだいなにようだ?」


銃声で呼ばれたからか村長は不機嫌だった。


「貨物の運行ダイヤを聞きに」

「誰がそんなの教えるか」

「これが欲しくないのか?」


フランが怪しげな入れ物を差し出すと村長のテンションが変わった。


「それは……重工業向けの冷却用ポーション……純度99.9%……」

「人間が使っちゃダメなやつじゃ?」

「炎魔法すら凍えさせる代物だ」

「液体窒素かよ!」

「仕方ねぇ……」


村長はポーションを手にした。


「……ふぅ……ヒヤヒヤした」

「やっぱ冷たいの?」

「ちゃんと封印が生きてたから大丈夫。ただ途中で解けちゃうと凍って砕けて粉微塵⭐︎だ」

「そんな軽いノリで扱うもんじゃないよ」

「今時乗り込むのは珍しいな。あと……お前は誰だ?」

「ミスって骨を折ってしまった遭難者だ。治すために街へ送りたいのだが魔法陣がうまく動かなくてな」

「動かない?……まあいい……ああ、中に上がっていいよ」

「感謝する」

「こんにちは……です」


異様な雰囲気に相模はたじろいでいた。


「さて……潜り込むは久々だ」

「え?盗み聞き?知らされてないの?」

「乗客はいない。毎回盗み聞きさ」

「さっきから犯罪行為しかない……」

「……暗号を変えた?……」


村長は手帳片手にノートに記録し始めた。


「来るのは数時間後。そして知らない符号……何だ?」

「何それ?」

「編成に謎の車両が含まれている。それ以外は普通だ」

「その次の列車は?」

「……数日は来ない。明日から保線工事だとさ」

「工事を待つのは面倒だ……行くか」

「謎の符号あるのに?」

「大したことはないだろ。あの寂れた路線だ」

「盛大にフラグが……とはいえ待つのも面倒……」

「派手に暴れるなよ」

「別に盗むわけじゃ無い。問題ないよ」

「この二人がおかしいのか私が浮いてるのかもう分からない……」

「魔法陣に嫌われるのも珍しいぞ」

「ああ……やっぱり?」

「もう時間がない。急ごう」


しかし相模は頼まれた任務を思い出す。村長なら何か勇者のことを知っているのでは?と思うのも無理はなかった。


「村長さん。一つ質問いいかな?」

「何だ?」

「ペレスヴェートって人知ってる?」


村長は動きを止めた。


「……大昔の人物だ。自動小銃で暴れ回ったと伝え聞く」

「やっぱり生きてないかぁ」

「ああ……あいつは死んだよ」

「だよね。ありがとう」


フランは相模を連れて村長宅を発った。

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