13. 入店 武器が豊富な服屋へ
「さて宿屋で休む前にすることがある」
「え?なんかあったっけ?」
「この服装ではさすがにな……」
相模は全身がズタズタに傷ついておりフランは赤色から黒に染まっていた。時間が経ち魔獣の血液が酸化したからだ。
「確かに……これは人に避けられる」
「私の記憶が正しければ近くに古着屋があったはず。しばらくはお古で糊口をしのごう」
相模は手元にある鞄はなんだと言いたげにフランを見た。
「隠せてないな。この金を使えという目だろ?」
「この世界の物価は知らないけどワイマールやジンバブエ見たいになってなきゃ余裕はあるでしょ?」
「そちらの地名?はわからないが今は使うときじゃない」
「じゃあ何に使うの?」
「株に投資する」
「この世界も株式あるんだ……」
予想外の答えで相模はポカーンとしてしまった。
「今は絶賛好景気!よほどのへまをしない限り次こそ儲かるさ」
「大丈夫?弾ける寸前じゃない?」
「皆投資してると聞いた。大丈夫だろ」
「……」
「なんだその目は?」
相模はあることに気づいた。今までの会話や言動からフランは相当盗みや違法行為をしている。だのになぜお金があるように見えないのか。それは金の使い方が致命的なレベルで下手に他ならないのだと。
「今までいろいろ盗ったんだよね?」
「確かにそうだ」
「じゃあなんでお金がないの?」
「投資したからさ……」
「配当は?今持ってる総資産は?」
「いつも途中で消えるんだ……運悪く倒産とかでね」
「……」
相模の疑問は確信に切り替わる。相模には経済が分からない。記憶すらまともにないのだから。けれどもフランに任せてはいけないと思うには十分すぎた。
「今は未来ではなく現在に投資しよう。いやすべきだ」
「そ、そんなに……」
「もちろん。詐欺にあった人に任せるのが怖すぎる」
「さ、詐欺?」
フランの反応は今までカモにされていたことに気付いてない何よりの証拠だった。
「やっぱ気づいてないか。重症だこりゃ」
「だ、騙されてはない。ただ運が悪く……」
「それはポンジ・スキームでしょ?」
「ぼんじ?すきいむ?美味しそうだ」
「食べ物じゃないよ!?」
一部の単語が伝わらないのは翻訳スキルの関係なのか?はたまたフランの問題なのか相模には分からなかった。だが仮に後者であれば今まで全部騙し取られたことは想像に難くない。
「今までの全部詐欺で奪われてるよ……」
「……馬鹿な!」
「美味しい話は詐欺と学校で言われなかった?」
「学校……私には縁がなかったな」
今の返答で相模はフランが学校に行ってないことを流石に察した。
「サガミの世界にも学校はあるのか」
「行く権利?義務?がある国」
「大層運が良い」
「良かったら異世界に飛ばされないよ」
「それもそうか」
相模は気まずくなる前に話題を切り替えた。
「じゃあ早く服と武器を買おう。戦って稼ぐならさっさと買うに限る」
「今までのはどこに……」
「……」
二人はまず服屋に向かった。
「いらっしゃいませ」
不機嫌そうな店主がぶっきらぼうに出迎える。
「お前らよくその格好で店に入ってこれたな」
「着替えを魔獣に破られて他に手が……」
「馬鹿でかい銃に剣……猟師かその下請けか」
「そう!そんな感じ」
相模は咄嗟に嘘で誤魔化した。そもそも着替えなどなかったが。
「んで予算は?出せるのか出さないのか?」
「金ならある」
フランは鞄の中身を見せつけた。
「……堅気か?」
「無論!道中魔獣を返り討ちにしただけだ」
「……あれに高額の案件もあるとは知らなかった」
「武器も置いてあるのに?」
看板には服屋とあるが店の奥半分には武器が置かれていた。そして店主は笑い出した。
「戦いは苦手でね。それに……」
店主はカウンターから売り場に出て武器を見せつけた。
「命知らずな仕事より命知らずに売る方が金になる」
「そんなに……」
フランはボソッとつぶやいた。
「戦うやつも死にたくはない。だから高品質な武具防具を買い漁る」
「この金額を?おいそれと買える額では……」
「借金だ。死ねばチャラ。勝てば黒字」
「そうか……今までに組んだ相手もそんなことを」
フランは昔のことを思い出したのかしみじみとしている。
「お前は安いガラクタでも買っていたのか?」
気になったのか店主がフランに尋ねる。
「買ってない」
「徒手空拳?」
「落ちてた武器を都度拾ってた。倒した敵や先に倒れた味方からね」
「……酔狂な戦い方だ」
「だから私の剣や銃を自然に奪ってたのか……」
二人はフランに対してドン引きしていた。
「そ、そんな目で私を見ないでくれ!」
「鏡を見るか?」
「この世界ではなくフランがぶっ飛んでいただけか」
「……」
フランは考え込んでしまった。
「捨てずに貯めて売り捌けばよかったのか……」
「違う、そうじゃない……」
「これの相手は大変だな」
店主は気の毒そうな目で相模に言う。
「もう慣れた」
まだ数日しか経っていないがそう思うには十分過ぎた。




