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企画に沿って書いた童話

パオは魔法のパン屋さん

作者: 瑞月風花

挿絵(By みてみん)

霜月透子さまの「ひだまり童話館」「ふにゃふにゃな話」に参加しています。


 森のおくのおくふかく、木でできた小さなおうちがありました。

 そこに住むのは、小さなパオ。みならい魔女(まじょ)の女の子です。

 朝おひさまがのぼる前から、起き出して、白い粉をたくさんまぜて、パンをやく用意をするのです。


「パンパンパパン♪」

うたうように、呪文(じゅもん)をとなえると小麦粉がふわりとあらわれて、ぎんいろの大きなボールの中に、さらさら入ります。


 パオはあまいパンが大好き。

 だから、さとうもさらさら。

 おしおもさらさら。


入ったと思った粉たちが、ボールから飛び出てきて、パオのうごかす手に合わせ、くるくるまぜまぜ、おどります。


「クルクルラララ~コナコナコ~♪」

パオの呪文ですっかりまざり合い、さとうがキラキラ光って見えます。パラパラひかる粉たちは、ウキウキしながらボールの中へ。


「お水も入れて」

と、パオがにっこり笑います。


 うれしい笑顔をみせた、パオが「少し待っていてね」とはなれると、粉たちもしずかに、ウキウキパオをまつのです。


 もどってきたパオの手には、パンの夢をふくらませるための魔法の「とろり」がありました。

 いまのとろりはリンゴから作られている、魔法の「とろり」

 おなかを空かせたくまさんのおやこが、パンをたくさんもらったお礼にと、リンゴを一つパオにくれたのです。


「おかげで冬をこせそうです」

そう言ったくまさんに、パオは言います。


「春になったら、森のおくのおくふかくに来ればいいわ。森の外は行っちゃだめ。こんどはイチゴのとろりを使ったパンをやくから」

くまさんは、うれしそうににこにこして、パオと約束をしました。


 とろりを少しずつ、ねむっている粉たちの中へ入れていきます。

 ネバネバしているとろりをしっかりまぜ合わせると、どんどんとネバネバがペタペタになりました。そして、とろりの魔法がききはじめるのです。とろりの魔法で、粉は生地にへんしんしました。

 パオはそこで生地を手にとり、しっかりこね始めるのです。

 ここは、魔法じゃなくて、手でこねる方がおいしくなります。


 そのころには、おひさまも目を覚ましはじめ、ことりたちもまどべでパオのパンを待ち始めます。

 うでまくりをしたパオが、よいしょよいしょとこねはじめると、どんどんふにゃふにゃしてきます。

 ふにゃふにゃになった生地を、こんどは持ち上げて、ぱんっとたたきつけるのです。


「おいしくなぁれ、パンパンと♪ おいしくなぁれ、パンパンと♪」

大きな音が、木のおうちの中にひびきます。音におどろいたことりたちは、ばたばたっと、飛んでしまいます。だけど、すぐにまた戻ってきて、パオのうたう呪文に首をかしげて、まつのです。


 たくさんたたいたその生地は、叩いたその台の上に、ぺたんとねそべります。

 生地をつっついたパオは、にこにこ。


 あかちゃんのほっぺたみたいにふにゃふにゃなのに、しっかりとぷくっとしているあかちゃんのほっぺ。


 きもちいい~。


「ふわふわぁってあったかくって」

そう思うパオの気持ちはどんどんあたたかくなっていきます。うれしくなったパオは、そのあたたかくなった気持ちを呪文に込めて、フワフワ生地をうかべます。


「プカプカフワフワポッカポカ♪ プカプカフワフワポッカポカ♪」


 楽しい気持ちといっしょに、魔法の布団で包みます。

 空中にういたまぁるい生地は、そっと着地して、そのまましばらくねむります。

 パオもいっしょにまぁるくなってねむります。

 やっと起きてきたくろねこちゃんも、パオを見てやっぱりいっしょに、ねむります。


 夢の中でパオはとろりといっしょでした。

 リンゴを切って、魔法のお水に入れて、毎日クルクルかきまぜたきんいろの魔法。

 魔法の粉を毎日足して、クルクルまぜて作った、魔法のとろり。


 小鳥が「おきておきて、もう大きくなったころ」と歌って、パオを起こします。

 ぐーっと伸びたパオが生地をみると、すっかりふくらんだ生地がありました。


「わぁ、ふくらんだぁ」


 パオは魔法ができた時よりも、ずっとうれしい声をあげ、にこにこ笑ってふくらんだその子をつつきます。

 パオの指はあたたかい空気でふくらんだパンの生地の中にふにゃふにゃとしずみます。

 でてくるガスをぬいて、形をきめて、まぁるくまぁるく。


 中には何をつめましょう?

 レーズンに、ラズベリー、クルミも入れるとよいかしら?

 ころころまるめて、おつかれさまの魔法をかけたらば、大きなかまどの中に飛び込むパンの子どもたち。

 ほかほかパンができるまで、ゆっくり本を見ていたパオのそばには、森の動物たちがどんどん集まってきていました。


 良いにおいが広がってきます。


「良いにおいねぇ」

パオのお鼻にもこんがりしたにおいがとどくころ、できたよ、できたよ、とこんがり焼けたできたてパンが飛び出してきました。

 そして、笑顔あふれるそのパンが、まっているみんなの手の中に、すぽんすぽんと飛び込みます。

 パオが言います。


「さぁ、みんなでいただきましょう」


 森の動物たちと、くろねこと、パオはいっしょに「いただきまぁす」と言って、森の中の木の家で、笑顔の花をたくさん咲かせました。


挿絵(By みてみん)

あき伽耶さまからいただきました!

パオがパンを作っている家の中です。


お読みくださりありがとうございました。

この作者他にはどんなの書くの?と思われたら、広告を飛び越えて読み回りリンク集へどうぞ。

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― 新着の感想 ―
[一言] パンが食べたくなりました……(´ω`*) 魔法のとろり、おいしそうです! 首をかしげることりさんたちもかわいい……! 実際のパンもこんな優しい魔法で生まれていたら、と考えるとなんだかほっこり…
[良い点] 可愛いお話で、パオの呪文がリズミカルなのが面白いです。 パンの生地のふにゃふにゃ、というアイデア、いいですね。 動物たちと一緒に食べるパンはきっと美味しいだろうなあと思いました。
[良い点] 拝読しました。 もう、全体的にかわいいお話でしたね。 焼きあがったら、勝手にぴょんぴょん飛んで、おなかをすかせた人の手の中に飛び込むパン……なんて素敵なんでしょう。 現実の世界はいろい…
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