第9話
江口は横浜港に来ていた真田と落合う為だ。
「電話や通信では分からないが、あい変わらず背と態度がデカイなっ!遠くからでもお前とわかるよ!」
「そりゃどーも、遠くからでもわかる俺だが、狙われにくいのだがなっ!はっはっは!」
「前田君久しぶりです!」
「江口幕僚長!お久しぶりです」
「やぁー前田君、樺太の話聞いたよ!真田に付き合っていたら命がいくらあっても足らないだろう!笑笑」
「殿と私は昔からあんな感じですから!」
「前田君には本当に感謝している!前田君率いる猿部隊が中国の中枢部を侵食していなければ今の俺達はないのだからなっ!」
「その様に言って貰えて光栄ですが、それを成功に導いたのは殿ですから!」
「あーこいつはいいんだよっ!いつものらりくらりして、ヒョウヒョウとしてるから、笑笑」
「なんだそりゃーまるで俺がタコ見たいじゃないか!」
「タコを馬鹿にするなよっ!タコは賢いんだからそれに似てるの喜ぶべし!なーユッキーっ!」
「ユッキーと言っていいのは理佐だけだ!」
「わかったから!ところで最近アメリカに何か仕掛けているのか?VERYとQueenの極秘は聞いているが、それとは別でアメリカ側の民主党側がおかしいんだよ!何処かネジが外れている様な気のせいならよいのだが!」
「江口の察し通り奴らは中国AIの残党に乗っ取られつつあるだから今VERYとQueenは恐らく共和党まで侵食されない様に策をこうじている筈だ。」
前田が続けた
「推測ですが民主党を乗っ取ったあとでアメリカを自分の物にしたいんじゃないかと思います!今の北京をわざとアメリカに支配された様に見せかけて!」
「はっはっはっ!昔の俺達のよーじゃないか!江口っ!!俺たちも最初は中国に潜りこんで行ったよなーっ!」
「中国は賄賂だらけで金積んだら簡単に侵食できたから」
「でもまぁアメリカもそろそろ弱体化しているから俺たちが中を探らないとな、アメリカにはしっかりして欲しいんだよ同盟国としてそして世界の警察としての力の維持をしてもらわないといけないのでなっ!」
江口は思う、真田は何処までも真っ直ぐな人だと戦争を引き起こしたのは我々日本人ではなくヨーロッパ諸国やアメリカ合衆国やロシアなのに、戦争犯罪の汚名を着せられたままの100年間を忘れてはいないのだと!和をもって尊しとなす。世界の人々よ何故分からないのか?と真田は思っているのだと!
「真田!いつか実現しよう!いつか!」
「ああっ!そうだなっ!みんなでなっ!」
「そろそろ行こうか、お上がお待ちだ!」
「真田君、江口君。本当にお久しぶりです。本当にありがとう」
彼は元皇族で名は伏せておくが真田家を陰で今まで取り立ててくれている皇族の末裔であり日本国に昔からかなりの影響をもたらす人物である。あの徳川幕府の御庭番でさえも潰せなかった一族なのだから。
日本には古くから皇族の末裔や豪族の末裔が息を潜めて一般市民として生活し、その裏で時には敵対する者と闘い、また同じ思想を持つ遠く離れた同志を補佐したりと古くから共存共栄をしている。
「江口君、天皇陛下はお元気でいらっしゃいますか?」
「はっ!陛下は健やかにお過ごしであるようです。今は我が国の為にイギリスで公務を行ってもらっています。」
「イギリスですか?今度是非一緒に陛下の所に行きませんか?」
「私もですか?」
「はい、ご一緒に」
お上は終始、笑顔で江口と話をしているのだが時折何処かで何かを考えている様であった。
「申し訳ございません、お上!今まだこの国を離れる訳にはいきません!軌道に乗せないといけないプロジェクト山積みでして!」
「わかっているよ!よしわかった真田君一緒に行こう!」
唐突に言われた幸貞はポカンとしてしまったがこれは何かあるとみた真田幸貞は話にのる事にした。
「私でよいのですか?イギリスは本当久しぶりなので!いつですか?もう一人連れていってもよいですか?」
お上はたいへん嬉しそうにして
「是非一緒に行きましょう」
真田は前から思っていたある事を実現させる為にここに来ていた。
「お上に実は頼みがあって今日は来ました」
お上の目が一瞬別人になったがまた元の人の良い笑顔にもどった。話して見ろと言う事だった。
「戦艦大和と戦艦武蔵を引き揚げたいのです」
「大和は九州沖で武蔵はフリピィン沖の確かシブヤン海とか言う場所でしたね」
「昔は引き揚げは無理だとされていましたが、今の我が国の技術があれば引き揚げ出来ると思うのです。もし大和、武蔵を引き揚げる事が出来たならばこの国の人々の意識もまたさらに揚がる事でしょう」
「それとまだ見つかっていない我が国の空母や戦艦を探すビジネスも立ち上げる事が出来ます」
「真田君!面白そうだねっ!是非その話乗った。詳しい話を聞かせてくれないか!あの大和、武蔵が!」
まるで少年の様にキラキラした目で話をするお上に真田は真摯に話をした。江口は真田のその真剣な眼差しと的確な技術の選択と彼がもてる全ての知識を引き揚げに向けて語っているのを聴いていた。
江口亮介はこんな真田幸貞が本当に誇らしかった!こいつと今凄いデカイ事を!この国を動かしているんだなと改めて思った時、今更ながら足が震えていた。
甲賀、伊賀忍術潜団の最先端技術を駆使すればおそらく引き揚げは成功するであろう事も江口にはわかっていた。その先にあるまだ見えぬ物を真田は見ているのだと理解した。