第六話
「上杉艦長! 南樺太から入電、カムチャッカ半島より、ロシア艦隊が樺太へ向かっているとの事です。」
「数は空母一隻、その他巡洋艦多数! 潜水艦は未知数!」
「よしデータ解析」
「ふん、こんなもんか!」
「上杉どうする?」
「少し待って下さい」
[ロシア軍戦力拡大! 更に小型艦、巡洋艦が樺太に集結している模様! ]
[? 上杉艦長、未確認飛行物体が成層圏辺りから急速にこちらに向かっている模様! ]
「きたか! 凄い速度だな! マッハ13位はでているのかな?」
その未確認物体は落下する瞬間に何か高速点滅する物体を四方に落とし海中へと消えて行った。ロシア軍の大艦隊はなぜか沈黙したまま海上をさ迷い出した。推進力を失い戦艦同士の衝突も見受けられた。
[真田艦長、来ましたよ! ]
「その声はVERYだなっ!」
[上杉艦長と内密に作戦を立ててました]
「その機体の性能を見せつけてやれ、手加減してなっ」
[了解です]
伊#700は海面に浮き上がると逆方向に海面を進んだかと思った瞬間浮き上がり海面ギリギリの低空飛行で樺太の北側に集結しているロシア艦隊の真ん中に突進して行った。
海面ギリギリで主要艦の動力部分めがけてピンポイントで何かを撃ち込んでゆく。撃ち込まれた船体は点滅の光と同じ様に操舵不能になった。
「VERYその機体は船なのか? 飛行物体なのか?」
[それは乗り込んでからのお楽しみです! 後、江口幕僚長から宜しくまた連絡くれとの事です! ]
「わかった!」
[何処で落ち合えば良いですか? 上杉艦長]
「南樺太に緊急滑走路を作ってあるからそこに着陸していてくれ。私達もそのまま樺太港に向かう」
「伝令! 樺太沖に操舵不能の艦の兵士が投行を拒否し応戦している様です」
「猿部隊に任せておけばじきに抑える!」
真武蔵は南樺太の港で真田とアイリを降ろし海底に消えて行った。新しく出来た緊急用の滑走路はかなりの完成度であり、このまま普段の旅客機も利用できる程のできばえであった。
その真ん中に真っ黒に光る流線型のマンタの形をした機体が二人を待ち構えていた。
二人が近づくと自動的に階段が出てきて二人を載せ自動で機体の中へ連れて行った。
[ようこそ、真田艦長、上杉艦長! 伊#700へ! ]
「さっきの光る物は何なんだ?」
[電磁パルス砲です。相手の電気系のみを破壊する電磁波です]
「それで操舵不能になっていたのか! やばい兵器を完成させたな!」
[離陸します! ベルトを締めて下さい]
そのまま前進もせずに真っ直ぐに浮き上がり、後は飛行機の様に飛行し徐々に上空へと消えて行った。
上空へと高度をあげた伊#700は人員を搭乗している為、角度を少し緩めに頭を下げ海面に向け直進してゆく
「このスピードで海中につ突っ込むつもりか?!」
[このまま海中に沈めます。私も人を載せるのは初めてなんで話かけないで下さい]
「申し訳ない!」
[右側についているボタンを押して下さい! 全身をホールドする機能が出ます]
「これはかなり快適な機能だこのまま宙返りしても大丈夫な程身体を固定している。」
適切な速度を保ちながら海中への侵入角度を算出し、伊#700
は水しぶきを上げる事もなく海中に沈んでいった。やがて潜水艇の様に水面に姿を表した機体は潜水艇の何者でもなかった
「凄いマシンだな! 核融合炉なんだろ? これは」
[そうです! 発充電ロータリーシステムとの相性もバッチリです]
「宇宙開発事業の機体のプロトタイプだと思うがね」
[おそらくそうです! そのまま宇宙空間に投げ出されても大丈夫な機密性です]
「VERYこれからも様々な機体の開発、改良に協力してやってくれないか!」
[もちろんです! 艦長ただ条件があります! ]
「なんだ?!」
[Queenさんと同じ様に、自由に街を散歩したいのです]
「わかったよ! 西郷に連絡してみろ! ぴったりのボディースーツを作ってくれるから」
[ありがとうございます! 引き続き任務を遂行します]
真田と上杉だけがこの伊#700を見て日本の未来の明るさを改めて自覚した。争う為ではなく戦わない為の抑止力としての戦力保持と戦力向上は先進国家の責務と世界の均衡を図るうえで重要である事を痛感した。
この核融合炉の小型化に成功した日本はあくまでこれからも従来通りの国家のありかたとアメリカとの同盟を維持ししかるべき時まで、最先端技術の成功と開発を隠し世界各国と対時すると決めたのだ。
「はい江口です」
「核融合炉の完成を歓迎するよ! これからもこの国の為に考え尽くしてくれよ!」
「お前もなあまり無茶苦茶な単身特攻とかやめておけよVERYから色々聞いたぞっ! 笑笑」
「江口! 宇宙開発の予算を大幅に出してくれないか! 後、海洋都市開発の予算も引き上げてくれ! 俺達軍関係の企業もできうる限り予算協力はするから!」
「もう予算は通してある。核融合がありとあらゆる可能性を引き出してくれる、昔のアニメーションのスペースコロニーなんて宇宙空間の居住区も現実になるかも知れない」
「そうなるなっ、ただ人間が関わる限り争いはなくならないだろう! その為に俺達の様な悪者と善人が表裏一体の者が必要なんだよ」
「悪者はお前に任せた! 善人は俺が請け負う! 笑」
「将来、QueenやVERYがきっとAIの世界を束ねて一つのより良い人間とAIの世界を作ってくれると信じている! あの娘達善良AIに賭けてみないか! 俺達が作ったあの娘達を!」
「俺達の娘だからな! 今生きているのもあの娘達の指示のおかげだ」
「北方前線は決着は着いたのだろう? 一度、福原に戻って来いよ!」
「わかった! 真大和も改良する場所がまだまだあるからな!」
「それでは福原で待っている」
「了解致しました。」
北方前線の次はロシアと中国の境界線の紛争だなと真田は見据えていた。そこで今の日本の力と立ち位置を示さなければアメリカと対等に渡りあえないのである。
東京の下に建設中の実験用試験都市が今、着々出来上がりつつありこの地下都市の成功が未来の宇宙空間居住区の足掛かりとなるのである。しかし必ず争いを金にしようと企む奴等が産まれるのだ。それは人工知能の世界でも例外ではないのだ。