第3話
樺太を海中から伊賀忍術潜団の無数の潜水艇が包囲し、海上には無人戦闘機母艦、AKAGIがロシア軍の出方を伺って、択捉島からはカムチャッカ半島に向けてずらりとトマホーク改が何時でも発射出来る態勢を維持していた。ロシアが仕掛けて来たのは明白な事実であり挑発に乗ってでも北方領土を奪い返すタイミングをロシアも伺っていたのだ
日本が北方領土四島を奪還した後もロシアの戦闘機が幾度も北方領土に攻撃を仕掛けようと飛来してくるのだか、自動迎撃システムのミサイルポッドが島々の所々に配置してある為に、少しでも敵影を捕捉すると直ちに砲撃を開始するために編隊を組んでの飛来は数回、ロシア側は大敗を期していた。今は二週に一度程の頻度で2機編隊での特攻まがいの領土侵入を繰り返している。その少しの侵入をわかった上で前田夕哉は択捉島のミサイルポッドの感度を少し下げ侵入経路をわざと作っていたのだ。 択捉島は釣りで武器弾薬、兵器は国後島の地下施設に格納していた。
「いつの間に計画を立てたのですか? 真田さん」
「俺じゃなく前田に権限を与えているので計画は前田が行い、俺は報告を聞くだけだよ」
「えっ? だからはじめから分かってて、伊賀忍術潜団ありきで作戦内容を立てたんでしょって聞いてるの!」
「いやーまぁそうなんだが、全部話すには長いから後から説明しようとしただけさっ!」
「全く、頭はスッゴクきれるのに、弁解をするのは下手なんだから」
「とにかく俺達は前田の計画通り行動しよう」
「ロシアが択捉島奪還の動きを見せるまで各自交代で任務にあたれ! ロシアが直ぐに択捉島を奪いに来る事はないので慌てる事はない! ロシアも作戦を撹乱させる為に違う場所から動くはずだからそれをゆっくり監察しようでわないか!」
「Queen! 海域周辺のソナー、衛星での監視をレベル5にあげてくれ」
「了解致しました」
数日後ロシアが日本領海へ不法侵入した漁船と思われる船と乗組員を引き渡すと通告してきた。
引き渡す場所は樺太の下に位置する場所を指定してきたため敢えてそれに従う形をとった。海上のロシア艦隊の下にも少し離れた場所からロシア原潜がこちらの全ての音を拾っているのも知っている。
乗組員を引渡してもらった後、漁船のふりをした高速艇をロシアの戦艦の横で爆破した。
「戦闘開始! ロシア艦隊を包囲し、動けなくしろ!」
「ロシアに警告しろ!」
「完全に包囲している、むやみな戦闘は避け戦線を離脱せよ! 繰り返す、むやみな戦闘を避け引き下がれ!」
ロシアの原潜から空母AKAGIめがけて魚雷が放たれる
瞬時に魚雷を捕らえながらAKAGIが本領を発揮する。魚雷が発射されたと同時に船体を急反転させ魚雷めがけて突っ込む
「音速魚雷、雷霆発射!」「相手魚雷の前で炸裂させよ!」「魚雷爆破しました」
「次! 後ろの後ろに隠れている音が大きなロシア原潜の周りにサスペンド魚雷を撃ち込め!」
「サスペンド魚雷を原潜周囲50メートルで包囲!」
「同時発射、50メートル同時停止! その後、100メートルで停止」
「撃ち込め!」
潜水艇 静龍3隻、空母AKAGI、小型原潜、白龍二隻から合計12本のサスペンド魚雷SHARK(シャーク)がロシア原潜に向け発射された。超高速で接近する魚雷に大きい巨体のロシア原潜は逃れる事も出来ずにその場で沈黙した。
「そこの大きい原潜を動けなくされたくなければこの海域から離脱させよ!」
確認信号とともにロシア原潜が退いて行った。
「ここまでがロシアが描いたフェイント作戦で今、ロシア戦闘機3機が空母から低空飛行で択捉島に向かっています」
ロシア戦闘機がシュミレーション通りのルートを掻い潜り並べ立ててあるトマホーク改を破壊してゆく、日本国防軍も裏をつかれたふりをしながら、樺太に詰め寄っていた。
続けてロシアの上陸部隊を乗せたヘリが択捉島の上空でパラシュートにて上陸を果たしてゆく。ロシアの戦車を載せた上陸艇が次々択捉島に接岸してゆく。
「さすがロシアだな、国力は衰えたにせよ戦術はあざやかだな。さて上杉艦長、俺達もそろそろ動きますか?」
「いやもう少し敵をひきつけ油断させ、これ以上我が軍が応戦しないだろうと思わせるまで待ちましょう!」
「了解しました」
樺太の南側のロシア軍が択捉島へと次々出て行く、南側の敵兵が手薄になるのを見計らって上杉が号令をかける。
「樺太南側奪還作戦開始! 上陸用ホバーロケット発射」
「上陸確認次第、戦車部隊を出せ!」
上陸用ロケットの内部には戦車と装甲車が格納してあり上陸と同時にホバーを破って上陸部隊を送り込めるロケット型推進装置である。ありとあらゆる事を想定に開発改良をし、過去に作った物の不良点を改良し次に繋げて行くのが日本の生産精神である。
「上杉艦長! 俺を樺太の最前線へ運ぶ物を用意してくれ」
「何をするつもりですか?」
「決まってるだろ! 戦を最小限に押さえるんだよ!」
「殿! 私も行きます」
「はっはーはっ! 久々に夕哉行くか!」
「はい」
「あれを忘れるなよ! いつも置いてあるだろ?」
「了解です」
「上陸ホバーロケット用意!」
「発射!」
「振動が凄いかと思っていたが意外と快適だな!」
「そう思ってるのはあなただけよっ!」
「酔わない様に気をつけて」
「了解」
「上陸後、二手に別れる!」
「このV 'MAXはまた改良したのか?」
「乗れば分かります! 殿が気に入る使用に出来上がってます」
「それは楽しみだな!」
「そろそろか、よし」
「殿も気をつけて下さい!」
「わかったよ! もう年だしな!」
「よし! 行くぞ」
ホバーが破れた瞬間、艶消しの真っ黒いバイクが二台、戦車部隊の間をくぐり抜け疾走してゆく!
「いいねぇこのレスポンス!」
「そうなんですよ、何処に何があるのか一目瞭然! その右側のが銃火薬系です」
「俺はこの折れない刀が有ればそれでいい!」
「この先の滑走路の管制塔を占拠する」
「了解」
「ドローンが数機、偵察している模様」
「情報を書き換えよ」
「ドローンはバイク二台を認識しておりません」
「このまま管制塔を奪う」
「よし、無人戦闘機をこちらに向かわせ滑走路に下ろせ!」
「前方より、装甲車3台接近!」
「まかせろ! 夕哉は先に行け!」
「了解」
真田は装甲車の前で切り返し、タイヤめがけ小型ミサイルを撃ち込む! もう一台にぶつかり炎上する、それを見た残りの一台から、機銃が降り注ぐ。身をかがめた真田にはそんなものかすりもせず、地面すれすれのハイターンを決めて装甲車を飛び越し、ロケットランチャーを撃ち込んだ。
装甲車に近づき、ロシア兵に刀を突き付け、ロシア語|(スラブ言語)でこう呟く
「仕掛けて来たのはそちらさんなんで、わざわざ乗り込んで来たぞ! 死神だ! 樺太を貰いに来た! 聞いてるんだろ? こいつには伝えたからな!」
「では樺太を半分頂くぞ! 上杉準備はいいか?」
「OKです!」「撃てぇー!」
「残ったロシア軍が北側に移動し始めました」
「そのままジリジリと真ん中あたりまで進軍せよ」
「よし、その場を占拠、道路拡張工事に移行し前へ前へ進めよ!」
真田と前田は管制塔から、我が軍の素早い動きを見ながら真田が前田に言う
「まだまだこれからだな」
「上杉さんってやっぱ凄いですね」
「俺を誉めるんじゃなく、上杉の方かよっ! 笑」
「殿はいつもの事ですから」
「よし、上杉艦長! 俺と夕哉を拾ってくれる様に手配してくれ」
「了解しました」
「次は国後島からの択捉包囲作戦の準備だな! 夕哉! この場をお前の部下に任せたぞ」
「任せて下さい」
ロシア包囲網作戦は第二段階に突入する。