第二話
横浜でアイリと合流、真田とアイリ、アンドロイド化したQueenと共に西郷のサイボーグ社に立ち寄り、近況報告をし、また西郷から経済活力の有益な情報も受け取り、数日かけて北海道のダイバーズドックと名付けた潜水艦ドックにドックインし、五稜郭に入った。
「二人に合わせたい奴がいるんだ!」
「ここは、真田さんが去ったあとAIが管理していたのでわ?」
「それは今も変わらないが、念には念を入れてないと相手はロシアだからな!」
「五稜郭作戦本部、本部長の前田夕哉だ」
「前田夕哉です初めてお目にかかります! アイリ様とQueen様の話は殿から聞いております!」
「話方が硬いから普通に話せ! 笑笑」
「申し訳ありません! すいません、笑笑」
「前田は二人も知っていると思うが内の要の猿飛部隊の前総長だ! この五年の間、中国沿岸部の調略、工作活動を前線で指揮していた功労者だ。」
「めっそうもない! ただ私はお役目を果たしたまでです」
「あれは配備したのか?」
「択捉島、北側沿岸にロシアに向けて約二百本のトマホーク改を配備済みです」
「ロシアの偵察衛星にフェイクなしで見せているか?」
「勿論です! それを見て更に多くの兵器をカムチャッカ半島に集結させています」
「それは愉快! 愉快!」
「もっとヤキモキさせてやれ!」
2 北方領土を百年もの間我が者顔で所有し、その奪い方の卑劣さが真田は過去の話と言えども許せなかった。
「あいつらは日本と当時ソビエト連邦との間に交わした日ソ中立条約をあっさりと破り捨て、敗戦間近を察知するや否や、あたかも今まで戦って来たかの様な振る舞いで参戦して来て、北方領土に於いては日本が負けを認めたと同時に上陸し、占領したんだよ! 取り返して当然なんだよ!」
「二世代の時間がかかってしまいましたね。」
「それで西郷がアンドロイド部隊からなる無人空母を今、建造中らしいのだがあいつは俺にすらどういう物なのか言わないんだ。日本人も先の世界大戦から敗戦をへて学んだのだよ! 西郷しかり、俺もアイリも、重要案件は絶対に外に漏らさない事を学んだんだ。昔の日本人は賢い民族だが外国に対しては優しすぎた! 話せば解ると、付き合えば俺達を理解してくれる! そう思っていたのは俺達日本人だけだった。短い期間で、東アジアの小さい島国が短期間で欧米に並ぶ程の力をつけた事への自尊心と傲りを持ちすぎたんだ! もっともっと思慮深くあるべきだった 他の国々は良いもは奪えは良いと思っているのだから、だから今もその本質はアメリカもヨーロッパ諸国も同じだと肝に命じているんだ、西郷も!」
「私もそう思います」
「あいつの凄さはもうとっくに知っていから教えくれてもいいのにな! 笑」
「それと殿に言われた通り北方領土に住んでいるロシア人達には話し合いの末、ロシアが好い者にはこの土地を離れて貰い、日本になってもそのまま住みたいと思っている人にはこれまで通りという事にしてます! ロシアへの不満はロシア人が一番解ってるはずですから」
「でも中にはロシア万歳がいるんだよ! 利権を失くすのが嫌な連中がある一定数いるからな! 賄賂国家だからなあの国は」
「ロシアに帰る奴らに細工したんだろ?」
「勿論です! 帰る前に内部調略のシステムを入れてあります!」
「抜かり無しです」
「そのまま偽装を続けていてくれ」
「本当の目標はなんですか?」
「樺太(サハリン)だ! 樺太の半分を奪還した後に樺太全体を頂く」
「最終的にロシアを大陸から出れなくするための前準備だ! ロシアには今アメリカから逃げた中国共産の残党が続々と入国していて東アジア共栄圏をバラバラにする事をロシアを隠れみのに企んでいる様だ!」
「だが当然、猿部隊も紛れているから面白い事になるのだが!」
「やはり真田さんは流石としか言いようがないです!」
真田はただこの日本国を護りたいだけなのだ。他の国々との無駄な争いを最小限にする為に常に策を巡らし各国の動向を探って、ここぞと言う時に何時でも動ける態勢を整える事が次に繋がる事だと真田は行動と実績で周りを納得させてきた。彼の下には彼の志を慕う者達が続々と集結している。その動きを統率するのが日本国トップ江口亮介であった。
択捉島周辺海域に中級型潜水艇、静龍3隻が既に厳戒態勢をとっており真武蔵、上杉アイリ艦長の命令を待っていた
「樺太周辺に展開しているロシア軍を誘き寄せ先に仕掛ける様に仕向けろ!」
「確認ました。ただちに開始します。」
不法に領海侵入したロシア漁船を日本国防軍巡視艇3隻でロシアの領海に追い出し、誤ってロシア側に領海侵入し漁船を捕縛しようとする場面で巡視艇に魚雷が着弾した。
日本側は抵抗する様子なく一定の距離をとり沈んでゆく巡視艇を見守った。無論、誰も乗せていない。ロシアにその漁船の引渡しを伝えるが聞き入れるわけがない! 北方領土を奪い返されたのがよほど頭にきているのだ! もっと挑発しろ! この通信をロシア側につつがなく漏らせ!
「ロシア側から樺太沖にミサイル5発、巡視艇に向けて発射されました。同時刻、弾幕ミサイル烈要発射済みです。」
後方に展開する無人戦闘機母艦は無人戦闘機の行く手を阻む無数のロケット弾や小型ミサイルを粉砕すべく開発された弾幕ミサイルを装備している! それは行く手を阻む相手側の弾を阻止するだけではなくミサイルの着弾地点を計測しその場所で回転しながらミサイルが炸裂する瞬間のエネルギーを利用し爆発を最小限に留める画期的なミサイルなのである。この様な兵器を日本国防軍は今、数百数千と開発、改良、増産している。増産するには場所と資源が必要で、それを散策するのも目的の一つなのである。海底にはまだまだあらゆる資源があるとされそれを探すプラントが必要なため、樺太が必要と真田が判断したのだ。
「さすが上杉艦長! 艦長の瞬時の判断力、本当に凄い。」
「そんなに言わないでください!」
「それではじわりじわりと樺太を包囲していこうか!」
「了解致しました」
3
首都に缶詰状態の江口は、西郷との連絡を頻繁に取っていた。東京湾に真大和、真武蔵を保管できる巨大ドックの建造と地下の電力網の最大活用や作った各種エネルギーの細分化と再利用のプラント、実現化出来そうなあらゆる事を想定し考えるのが江口の頭脳である。江口は東京湾の隣の相模湾沖の深海の探索の為の無人小型量子潜水艇を西郷のアイデアを取り入れ早急に製造していた。この相模湾奥深くに巨大プラントと研究所を兼ね備えた水中施設を建設しようとしていた。
「西郷君の水中プラント計画を始動しようと思っているんだけど」
「あらゆる方向性を考えるべき時に来ているな!」
「西郷は俺に秘密だと教えてくれないんだよ」
「お前はいつも西郷君をイジルだろ? だからだよ」
「江口は西郷をイジらないの? あのイジりやすさは、天下一品だよ!」
「俺がイジっても彼は天然なんで、笑いの向かう先が違うんだよ! お前と違って! お前と俺は笑う場所が同じなのになっ!」
「東京の地下施設はアメリカに勘づかれてないか?」
「大丈夫だ! 汚染数値が下がるまで四、五年かかると思っている」
「そうか、発充電循環システムは完成したのか?」
「完成した! しかし、核融合はまだまだかりそうだ!」
「だから東京湾の地下に巨大トンネルを掘っている最中だ! 真大和、武蔵の力を最大限活かせる時は近い!」
「この2つの永久燃料電池によってこの国のエネルギーは不動の物となり、石油などありとあらゆる枯渇燃料を温存できる!」
「アメリカにはまだ資源の乏しい国を演じるつもりだよ」
「アメリカはいつも自分たちの物にしたがるからな!」
「真大和、武蔵もまだバレていないよ! 原潜を保有しているのは把握している様だけど、内のAIは賢くてな! アメリカが探りを入れて来ると誰かみたいにすっとぼけるのが上手いのさっ!」
「誰かって誰の事だよ! アイリの事だな! あいつはいつも俺をいじめるからな! はっはっは!」
「江口のお陰で俺達は本当に助かってる! ありがとうなっ!」
「礼にはまだ早い! これからお前にはまだまだしてもらう事がある! 真大和と共に!」
「了解してますよ! 首相」
「じゃまたな!」