お父さんは村に行きたい
「装備も揃ったし村に行くぞ!」
唐突にそう言い出す父。(パジャマ姿)
正確には装備は揃ってはいない。
4人パーティなのにも関わらず、剣と弓矢の2つの武器しか装備していないのである。
「善は急げ!前進あるのみだ!」
一度言い出したら人の言うことを聞かない父。
「でっでも、私たち今パジャマだし裸足だよ!
着替えようよ、お父さん服作ってよ!」
食い下がる私。
「服は村で買う!」
一歩も譲る気のない父。
そう、父は頑固なのである。
「あらあらーパパはせっかちねー」
穏やかに話す母。
「村で買うって言ったって、私たちお金持ってないじゃん!」
「.......あ。」
「確かに、お金がなかったら何も買えないわね〜」
そう、ここは異国の地。
円通貨は使えないどころか、私たちは円すらも持っていない。
持ち物はパジャマ。そして剣と弓矢。
どうしようかなと思っていたその時、ヒュゥウと音が聞こえた気がした。
だんだんとその音が大きくなっている気がする。
「ね、ねえ、何か聞こえない?」
「ん?なにもきこえないぞ?」
キョロキョロと周りを見渡す私たち。
周りには何もない。.....ということは、上?
私は空を見上げた。それに続いて、父、母も空を見上げる。
すると、空から何か落ちてきているのが見えた。
んなっ!?ぶ、ぶつかる!
あたふたして誰も動けなかった。
その瞬間、どすっという音とともに何かが地面にぶつかった。
「か、間一髪だ... 」
私たちのすぐそばに何かが落ちたのが目の端に見えた。
目を凝らしてよく見ると、そこには一つの皮袋があった。
茶色い、紐で縛るタイプの巾着袋。
「これは...まさか...」
私たちは皮袋を恐る恐る拾い上げた。
「まさか...な」
そんなうまい話があるわけが無い。
お金の話をしていた矢先にお金が降ってくるなんて...
「わっ、お父さん開けてよ!」
「お、おう」
「早く開けてよ!」
「じゃあ、開けるぞ...」
父がそっと皮袋を開けると、そこから金貨がじゃらじゃらと出てきた。
銀貨と、銅貨も何枚か入っている。
「「「おおおおおおおおお」」」
すっすごい!
神さま!神さまがいるの!?
まるで私たちの会話を聞いてみたみたいだ。
「かっ神さま!じゃあ服と靴もください!!!」
図々しいお願いをする私。
とりあえず言ってみる精神である。
「こら、もう充分頂いたじゃないか!」
珍しく真っ当な父。
この世界の通貨の価値は正確にはわからないが、相当な金額が入っているのだろうということは推測された。
すると、上から何か紙のようなものがヒラヒラと落ちてきた。
地面に1枚の紙が降りてきた。
拾い上げて、3人で覗き込む。
『これで終わり』
紙にはそう書かれていた。
そりゃそうだ。お金いっぱいもらったもんね。
「ありがとう!!!!!」
私は空に向かって叫んだ。
「ありがとうございました!!」
父も叫ぶ。
「大切に使わせていただきますねー!!」
母も叫んだ。
「だあーー」
つられて妹のリコも叫んだ。いつのまにか起きていたらしい。
優しい神様もいたもんだ。
さあ、そろそろ村に行こう。
でも、村ってどこにあるんだろう?
もしよかったら、
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