父と母、起きる
「キュア!」
そう唱えると柔らかな緑色の光が両親と、妹のリコをふわりと包み込んだ。
これで眠り状態が解消されるだろうか?
「んあーーー??」
「ふぁーー。」
よかった。ちゃんと魔法が使えたみたいだ。
眠りから目が覚めて、むくむくと起き上がるパジャマ姿の両親。
「おはようー」
「おーうおはよーカエデー」
「ふあー。おはよう〜」
今現在起きている異変に気付く様子のない二人。
寝ぼけているのか、目がほとんど開いていない。
「ね、ねえ、何か気付かない?」
私は起きたばかりの両親にそう話しかけた。
「なにか?って、うわああ!どこだここは!!」
急に慌てだす父。
「ママ!!!はらっぱにいるぞ!死んだ!?俺たちは死んだのか!?!?」
き、急にうるせえ。
さっきまでぐーすか眠っていた人間とはとても思えない。
「どうしたのーパパー」
未だ目がほとんど開いていない母。
母に抱き抱えられた妹もうとうとしているようだ。
「死んでないよ、多分。お父さん、異世界転移ってわかる?」
割とアニメや漫画好きな父。もしかしたら父になら伝わるかもしれないと考えたのだ。
「おお、わかるぞ。チートってやつだな!」
異世界転移が全てチートとは限らないのだが、まあそういうことにしておこう。
話が早くて助かる。だが、ゲームやアニメに疎い母にはうまく伝わらないだろうな、と思った。
「多分そんな感じで、転移してきたんだと思う。私たち。『浮遊』!」
そう言って私は四人の体を浮かび上がらせた。
「うっ、浮いてる!!!浮いてるぞママ!!!」
「あらあらー夢みたいー」
ニコニコしながらふわふわ浮かび上がるママ。
妹はお母さんに抱きかかえられて未だ少しうとうとしている様だ。
「私はよくわからないけれど、何だか楽しそうねー」
きっと本当に何もわかっていないであろう母。
そう、母はいつだってのんびり屋さんなのだ。
私はボタンを操作して、ゆっくりと四人を地面に下ろした。
「これで、わかった?私たち、きっと異世界に転移してきたんだよ」
「な、なんだってー!?」
焦る父。驚いてる割には、ちょっと楽しそうに見える。
その表情に深刻さはあまり感じなかった。
「はっはっは。お前たちはお父さんが守る!なんてな!」
恐ろしいほど前向きだ。さっきまでこの男、ぐーすか眠っていたのである。
すると、長方形の画面が目の前に現れて、メッセージを表示した。
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★★★★★メインクエスト★★★★★
ダンジョンを制覇しよう!
この剣と魔法の世界には無数のダンジョンが点在している。
ダンジョンを制覇し、特別報酬を手に入れよう!
特別報酬:願い事をひとつだけ叶える
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「「「ダンジョン???」」」
パパとママが私の画面を覗き込み、三人でそう呟いた。
ダンジョン制覇の特別報酬で、なんでも願い事が叶う...?
「ダンジョンは...男のロマンだ.....!」
目を輝かせる父。何やら冒険者っぽいポーズを決めている。
ダンジョンかー。いよいよ、異世界っぽくなってきたぞ...!
わからないことだらけの状況だったが、不思議と胸が踊った。
移動する前に、とりあえずみんなのステータスを確認しておこうか。
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