おねぇ冒険者とドラゴン文学少女
初めまして。どうぞよろしくお願いします。
「説明して?」
一番良い所だったのに、と思いながら私は本を閉じ、私の横に立つ人を仰ぎ見る。大きな男性。
「あなた、私のこと大きなおっさんだと思ったでしょ、失礼ね!え?大きな男性だと思った?それは勘違いして悪かったわ。でも私はおねぇなの!おねぇさんと呼びなさい!」
「オネ。ここ図書室。静かに」
「初対面であれだけど、あなた面倒くさがりでしょ。いいけどね。それよりどうして地下のドラゴンの住処が図書室で、当のドラゴンがこんな可愛い女の子なの?聞いてた話と違うじゃない!頭に竜っぽい金色の角が二本とドレスの裾から可愛らしい尻尾が揺れてるから、確かにあなたはドラゴンなんだろうけど!あなたはこの国の王様から財宝を盗んだドラゴンじゃないの?何で攻撃してこないの?」
私が攻撃したらオネどころか国全体を消し炭に出来るけど、そんなことしたら図書室の本まで燃えてしまう。私は人間に危害は加えない。それに誤解だもの。
「え?財宝はドワーフ達が作った私物?誤解だったのか。それにしても沢山の本があ……あら、先月出たばかりの新刊!どうやってこれを手に入れたの?本は財宝を持ち出して購入してて、先月正体がバレた?ハァ~ン、わかったぞ!この子の財宝を奪おうとしていたのは王の方なんだ!何と悪辣な!さては他国の冒険者にドラゴン退治を依頼したのも後で口封じするつもりだったのか!私がどこの誰なのか知らなかったのが運の尽き!また来るから待ってて!」
そう言うとオネは走り出て行ってしまった。また来るの?まぁ、いいか。私は本の続きを読むことにした。一月後、おねぇではなくなったオネが王冠被って現れて、隣国の大図書館に引っ越そうと誘ってきた。
「こんな地下に置いてたら本がカビちゃうだろ!本には虫干しも必要なんだ!」
なるほど。私はオネが治める国の大図書館に引っ越した。
その土地を水害から守っていたドラゴンの末裔が隣国に居を移した後、大雨が千日も続き国は水底に沈んだが、隣国が救援部隊を派遣し民は一人も死ぬことなく犠牲は王一人だけであった。
これは王位を継ぐのを嫌い、おねぇの冒険者になっていた王子が本好きなドラゴンを守るため王位を継ぎ世界の覇者となる前の前日譚の話。その王は聡明なドラゴンと共に人々を平和に導いた後、ドラゴンと結ばれ死後は神の世界に二人仲良く旅立ったという。
ここまで読んでくれてありがとうございました。