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3.あの日の彼に、似ているキミ。

安定の前倒し更新。

いつもお読みいただき感謝です!!

応援いただけますと執筆速度が跳ね上がります!!

よろしくお願いいたします!!








『わ、私の森が……!』

『泣くなライネ! いまはそれどころじゃないぞ!』

『わかってる! でも――』



 ライネは燃え盛る森を前に、立ち上がれずにいた。

 そんな彼女を鼓舞するのは一人の青年。聖剣を構えて、四方八方から襲い掛かる魔物たちを斬り伏せていた。

 勇者と呼ばれる所以か。

 彼の動きには、迷いというものがなかった。



『大丈夫だ。ライネなら――』



 彼はへたり込む少女に、そっと手を差し伸べながら言う。



『きっと、この森を守れる!』







「フレリアが……!?」



 ボクは町のみんなを避難させながら、動揺を隠しきれていなかった。

 美しかった景観は地獄と化し、人々を襲う炎となる。薄くなっていく酸素に、視界がだんだんと不明瞭になってきた。

 どうしたら、いいんだ。

 どうしたらこの町を守れるのか。



「くそ、こんな大きな火の消し方なんて……!」

「慌てるな、アラン」

「ライネ……?」

「お前はそれでも、あの勇者の息子か。少しは落ち着け」

「そんなこと言ったって!」



 この惨事をどうにかしたい。

 そう思って、つい声を荒らげてしまう。

 しかし少女は至って平静に、こう口にするのだった。



「わしなら、この程度の炎――造作もない!」



 そして、魔法の詠唱を開始する。

 青い魔法陣が展開され、周囲の魔力がにわかに高まった。

 だが、まるでそれを狙っていたかのように――。



「魔物……!?」



 周囲から、人のそれとは明らかに違う気配。

 彼女の魔力に引き寄せられたのか、あるいは何かの思惑か。どちらかは分からないが、陽炎のような敵が十数体。

 ボクは短剣を構えて、舌を打った。

 そんなこちらに、ライネがこう告げる。



「わしの魔法が発動するまで、お前が時間を稼げ!」



 なるほど、それなら――!


 ボクは彼女の指示に、集中を高めた。

 時間さえ稼げば、ライネがどうにかしてくれるはず。だったら――。



「任せたよ、ライネ……!」



 そう、決断して。

 ボクは目の前にやってきた陽炎を真っ二つに引き裂いた。







 ライネは魔法を詠唱しながら、思う。



 ――やはり似ている、と。



 かつてフレリアを襲った炎。

 その前に心が折れかけたライネを励ました、あの青年に。

 比較すれば、年の頃はまだまだ届いていない。それでも冷静に導けば、迷いなく敵に立ち向かっていく。並大抵の精神力で、できることではなかった。



「本当に、そっくりだよ。――グラン」



 ライネは懐かしそうに、その名を口にする。

 かつて旅を共にした英雄の名前を。



 そして――。




「いいや、それを考えるのはなしだな!」



 少女は想いをしまい込んで。

 高らかに、腹の底から声を張り上げた。



「アラン、もういいぞ! 一気に魔力を開放する!!」――と。




 


次回更新は17時かな。



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「基礎しかできない錬金術師が最強になる話」新作です。こちらも、よろしくお願い致します。
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