3.あの日の彼に、似ているキミ。
安定の前倒し更新。
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『わ、私の森が……!』
『泣くなライネ! いまはそれどころじゃないぞ!』
『わかってる! でも――』
ライネは燃え盛る森を前に、立ち上がれずにいた。
そんな彼女を鼓舞するのは一人の青年。聖剣を構えて、四方八方から襲い掛かる魔物たちを斬り伏せていた。
勇者と呼ばれる所以か。
彼の動きには、迷いというものがなかった。
『大丈夫だ。ライネなら――』
彼はへたり込む少女に、そっと手を差し伸べながら言う。
『きっと、この森を守れる!』
◆
「フレリアが……!?」
ボクは町のみんなを避難させながら、動揺を隠しきれていなかった。
美しかった景観は地獄と化し、人々を襲う炎となる。薄くなっていく酸素に、視界がだんだんと不明瞭になってきた。
どうしたら、いいんだ。
どうしたらこの町を守れるのか。
「くそ、こんな大きな火の消し方なんて……!」
「慌てるな、アラン」
「ライネ……?」
「お前はそれでも、あの勇者の息子か。少しは落ち着け」
「そんなこと言ったって!」
この惨事をどうにかしたい。
そう思って、つい声を荒らげてしまう。
しかし少女は至って平静に、こう口にするのだった。
「わしなら、この程度の炎――造作もない!」
そして、魔法の詠唱を開始する。
青い魔法陣が展開され、周囲の魔力がにわかに高まった。
だが、まるでそれを狙っていたかのように――。
「魔物……!?」
周囲から、人のそれとは明らかに違う気配。
彼女の魔力に引き寄せられたのか、あるいは何かの思惑か。どちらかは分からないが、陽炎のような敵が十数体。
ボクは短剣を構えて、舌を打った。
そんなこちらに、ライネがこう告げる。
「わしの魔法が発動するまで、お前が時間を稼げ!」
なるほど、それなら――!
ボクは彼女の指示に、集中を高めた。
時間さえ稼げば、ライネがどうにかしてくれるはず。だったら――。
「任せたよ、ライネ……!」
そう、決断して。
ボクは目の前にやってきた陽炎を真っ二つに引き裂いた。
◆
ライネは魔法を詠唱しながら、思う。
――やはり似ている、と。
かつてフレリアを襲った炎。
その前に心が折れかけたライネを励ました、あの青年に。
比較すれば、年の頃はまだまだ届いていない。それでも冷静に導けば、迷いなく敵に立ち向かっていく。並大抵の精神力で、できることではなかった。
「本当に、そっくりだよ。――グラン」
ライネは懐かしそうに、その名を口にする。
かつて旅を共にした英雄の名前を。
そして――。
「いいや、それを考えるのはなしだな!」
少女は想いをしまい込んで。
高らかに、腹の底から声を張り上げた。
「アラン、もういいぞ! 一気に魔力を開放する!!」――と。
次回更新は17時かな。