3.次世代の剣聖との戦いは一瞬で。
はい、ギャグだわやっぱり。
応援いただけますと執筆速度が跳ね上がります!
「どうしてアグニスが、ここにいるの?」
「おやおや、言っただろう? 僕は兄さんを殺しに来たんだよ、って」
「殺しに来た……?」
荷馬車から降りて、ひとまず他の人に会話を聞かれない場所へ。
そこで確認するとアグニスは、またよく意味の分からないことを口走った。やはり理解できないので、首を傾げるしかない。
そうしていると弟は、少し苛立った表情になって言った。
「兄さんは僕にとって、目の上のたんこぶだったんだよ」――と。
それを聞いて、ボクはついこう返した。
「え、でも家を継ぐのはアグニスだったでしょ?」
するとアグニスは、突如として感情を爆発させる。
「ふざけるな! 貴様がいるせいで、僕は長男として享受できる恩恵を得られなかった! そして、一歩間違えれば家督を取られるかもしれない恐怖! 貴様に分かるか!? たまさかの機会を得て、公爵家に拾われた貴様に!!」
「え、えぇ……?」
ぶっちゃけ引いてしまった。
ごめんアグニス。ボク、そこまで考えてなかった。
昔から仲良くできないと思っていたけれど、まさかここまで恨まれていたなんて。
「だから、貴様――アランにはこの瞬間、世界から消えてもらう!」
「ちょっと待って!? それは、穏やかじゃないよ!?」
「うるさい、これ以上の問答は無用だ!!」
次の瞬間だった。
アグニスが一瞬にして、ボクの懐に飛び込んできたのは。
「次世代の剣聖と名高い僕の力、味わうと良い……!」
「うわぁ! あぶな――」
だから、こっちはとっさに魔法を使った。
すると――。
「へ……?」
――どがあああああああああああああああああああああああんっ!!
爆音が、鳴り響いた。
◆
「ふっふっふ……」
「ずいぶんと余裕でございますね、旦那様」
椅子にふんぞり返りながら、ダンはワインを口にしていた。
そんな彼に、執事が恭しい所作で作業をしながら訊く。
するとダンはこう答えるのだ。
「当たり前だろう。アグニスが動くと言ってくれたのだ。これで私の憂いも、綺麗さっぱりなくなったというもの」
彼の言う通り、アグニスの剣術は大人も目を見張るものだった。
だから、彼がアランを討つと言った時、勝利したとも思ったのである。あとは息子の帰りを待つだけだ。ダンはそう考えて、余裕綽々ともう一口ワインを――。
「おぉ、もう帰ったのか?」
流し込もうとした、その時だった。
使用人たちが、にわかにざわつき始めたのは。
「どれどれ。家を守った子を褒めてやらねばな」
それを聞いてダンはおもむろに立ち上がり、部屋の扉を開いた。
すると、そこにいたのは――。
「……………………」
「……………………」
全身煤だらけ。
そして、青のアフロヘアになったアグニスだった。
「お、おい……?」
「お父様。ごめんなさ――」
「アグニスゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥ!?」
床に倒れ込んだ息子を見て、叫ぶ父。
公爵家邸宅には、そんな間の抜けた声が響き渡っていた。
次回更新は本日中にもう一話!!