2.追手は、優秀な弟。
ギャグにならなかった。
たぶん、次回はざまぁ回。
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「うわーっ! すごいなぁ!!」
「兄ちゃん、旅は初めてかい? ずいぶんと楽しそうじゃねぇか」
「え、あ――はい! ボク、こうやって王都を離れるの初めてで!」
「そいつは珍しいな。今時、貴族様でも観光に外へ出るってのに」
荷馬車の荷台に乗りながら、はしゃぐボク。
そんなこちらに、行商人のオジサンは豪快に笑いながら話しかけてきた。なにやら世間知らずを指摘された気もしたが、実際に世間知らずなのだから仕方ない。
ボクは一本道の両側に広がる野原を見て、興奮を隠さなかった。
「ボクの家、というか――ボクが特殊だったんだと思うんです。小さな頃から、王都の外に出るのを許してもらえなくって……」
「へぇ、そうなのかい」
それも今思えば、出生の件があったからなのかもしれない。
ボクはすっかり変わってしまった自分の髪を弄りながら、そう考えた。そして赤くなった右目を覆い隠す眼帯に触れて、ふっと息をつく。
赤い瞳は魔族の証だ。
これをもし、誰かに見られたら騒ぎになってしまう。
「とりあえず今夜は一度、野営をすることになるな。構わないか?」
「あ、はい! 分かりました!」
そうしていると、オジサンがそう言った。
たしかに、次の町に行くにしても最低二日という話だ。
ボクは改めて大変なことになった、と思いながら腰を下ろそうとした。
その時である。
「おっと、なんだぁ? あのでけぇ馬車は!?」
オジサンがそう言って、手綱を引いたのは。
馬が声を上げて急停止する。ボクは振動に耐えた後に、道の先を見た。
すると、そこにあったのは――。
「え、あれって公爵家の……?」
公爵家の家紋がついた、立派な馬車。
そして、そこから降りてきたのは一人の美少年。
腰まである青の髪に、青い瞳をしている。腰には綺麗な装飾の施された剣を携えて、身にまとう鎧も一級品だった。
ボクはその人物の名を知っていた。
何故なら彼は――。
「アグニス……!?」
「やあ、使えない兄さん。殺しに来たよ」
血の繋がらない、ボクの弟だったのだから。
次の更新は19時! 今度こそ!!