8.少女の後悔。
応援いただけますと執筆速度が跳ね上がります!
よろしくお願いいたします。
『一緒に旅しようぜ、ライネ!』
『え……?』
勇者――グランの申し出は、突拍子もないものだった。
フレリアの爪弾き者であった自分に手を差し伸べて、あまつさえ一緒に旅をしようなどと。しかし彼の目は真剣だった。
嘘偽りなく、自分の力を必要としてくれている。
そう信じられるものだった。
『うん、分かった……』
だから、ライネは勇者の手を取った。
この旅はきっと、自分を大きく変えるものになる。
そう、感じながら……。
◆
「断る」
「えぇ……?」
ボクの申し出に、一拍置いてから少女は答えた。
真顔で。
「どうして……?」
「どうしてもないだろう。わしはもう、旅に出るつもりはない。元来、出不精な性格であって、お前の父と旅をしたのも能力を乞われたからにすぎない」
「………………」
なんとも、抑揚のない声でライネは言った。
ボクは呆気に取られて、そんな彼女の言葉を聞くに徹してしまう。
「だいたいだな、こんな嫌われ者を連れて歩くと運気が下がるぞ。どこに行っても色物を見る目で見られるしな! それに――」
「それに……?」
だが、途端に声を詰まらせたのに気付いた。
聞き返すとライネは、小さく首を横に。そして――。
「あぁ、なんでもない。気にするな」
そう、短く言った。
その上で「わしはとにかく、行かないからな」と、念を押す。
そしてもう寝る時間になっていたらしい。彼女は寝床に向かって歩き出した。その背中に、ボクはいてもたってもいられずに、こう叫ぶ。
「ライネは――!」
どこか、寂しげなその背中に。
「ライネは、本当にそれでいいの!?」――と。
返事はない。
ボクは一人残され、拳を握りしめるしかなかった。
◆
「それでいいのか、か……」
ベッドに身を横たえて。
ライネはボンヤリと天井を見上げていた。
そして思い返すのは、最後に聞こえたアランの言葉。
「これで良い。その、はずだ。だって――」
ベッドシーツを握りしめ。
少女は、呟いた。
「ここにいれば、一人でいれば、わしはもう悲しまずに済むのだから」――と。
あの日、ライネは大切な人を失った。
勇者であり、自分の愛する人であり、初めて自分を必要としてくれた人。
得体の知れない敵から逃げる最中に彼は、ライネの盾となって戦ったのだった。その結果、彼――グランは命を落としたのである。
「………………くそ」
小さな悪態をついて。
ライネは、静かに身を起こした。
「くそ、くそくそくそ……っ!」
涙があふれてくる。
自分は、あの日から泣いてばかりだ。
何もできなかったあの日から、一歩も前に進めていない。
「このままで、いい。そのはず……!」
そのはず、なのに。
どうしてこんなにも、悔しいのか。
どうして、こんなにも涙が止まらないのか。
それを考えて、少女は立ち上がった。
◆
「どうしよう、っかなぁ……」
ボクはソファーに身を預けながら、ボンヤリとしていた。
ライネに断られるとは思っていなかった、というわけではないけど。まさか、あそこまでキッパリと断られるとは思っていなかった。
こうなると、どうにも予定が狂ってしまう。
そう考えていた時だった。
「おい、アラン。起きているか」
「……ライネ?」
リビングに、彼女がやってきたのは。
ピンクの可愛らしい寝間着姿に、ナイトキャップを被ったライネ。彼女はどこか真剣な表情で、一つため息をつくのだった。
そして、ボクの隣に腰掛けてこう口にする。
「お前の父親の話をしよう」
あまりに脈絡なく。
しかし、どこか温かい声で。
「うん、聞かせて?」
だから、ボクはそれに耳を傾けることにした。
まるで御伽噺を聞く子供のように。
もう一話書けそう……!




