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8.少女の後悔。

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よろしくお願いいたします。









『一緒に旅しようぜ、ライネ!』

『え……?』



 勇者――グランの申し出は、突拍子もないものだった。

 フレリアの爪弾き者であった自分に手を差し伸べて、あまつさえ一緒に旅をしようなどと。しかし彼の目は真剣だった。

 嘘偽りなく、自分の力を必要としてくれている。

 そう信じられるものだった。



『うん、分かった……』



 だから、ライネは勇者の手を取った。

 この旅はきっと、自分を大きく変えるものになる。


 そう、感じながら……。







「断る」

「えぇ……?」



 ボクの申し出に、一拍置いてから少女は答えた。

 真顔で。



「どうして……?」

「どうしてもないだろう。わしはもう、旅に出るつもりはない。元来、出不精な性格であって、お前の父と旅をしたのも能力を乞われたからにすぎない」

「………………」



 なんとも、抑揚のない声でライネは言った。

 ボクは呆気に取られて、そんな彼女の言葉を聞くに徹してしまう。



「だいたいだな、こんな嫌われ者を連れて歩くと運気が下がるぞ。どこに行っても色物を見る目で見られるしな! それに――」

「それに……?」



 だが、途端に声を詰まらせたのに気付いた。

 聞き返すとライネは、小さく首を横に。そして――。



「あぁ、なんでもない。気にするな」



 そう、短く言った。

 その上で「わしはとにかく、行かないからな」と、念を押す。

 そしてもう寝る時間になっていたらしい。彼女は寝床に向かって歩き出した。その背中に、ボクはいてもたってもいられずに、こう叫ぶ。



「ライネは――!」



 どこか、寂しげなその背中に。



「ライネは、本当にそれでいいの!?」――と。



 

 返事はない。

 ボクは一人残され、拳を握りしめるしかなかった。







「それでいいのか、か……」



 ベッドに身を横たえて。

 ライネはボンヤリと天井を見上げていた。

 そして思い返すのは、最後に聞こえたアランの言葉。



「これで良い。その、はずだ。だって――」



 ベッドシーツを握りしめ。

 少女は、呟いた。



「ここにいれば、一人でいれば、わしはもう悲しまずに済むのだから」――と。





 あの日、ライネは大切な人を失った。

 勇者であり、自分の愛する人であり、初めて自分を必要としてくれた人。

 得体の知れない敵から逃げる最中に彼は、ライネの盾となって戦ったのだった。その結果、彼――グランは命を落としたのである。



「………………くそ」



 小さな悪態をついて。

 ライネは、静かに身を起こした。



「くそ、くそくそくそ……っ!」



 涙があふれてくる。

 自分は、あの日から泣いてばかりだ。

 何もできなかったあの日から、一歩も前に進めていない。



「このままで、いい。そのはず……!」



 そのはず、なのに。

 どうしてこんなにも、悔しいのか。

 どうして、こんなにも涙が止まらないのか。



 それを考えて、少女は立ち上がった。







「どうしよう、っかなぁ……」



 ボクはソファーに身を預けながら、ボンヤリとしていた。

 ライネに断られるとは思っていなかった、というわけではないけど。まさか、あそこまでキッパリと断られるとは思っていなかった。

 こうなると、どうにも予定が狂ってしまう。

 そう考えていた時だった。



「おい、アラン。起きているか」

「……ライネ?」



 リビングに、彼女がやってきたのは。

 ピンクの可愛らしい寝間着姿に、ナイトキャップを被ったライネ。彼女はどこか真剣な表情で、一つため息をつくのだった。

 そして、ボクの隣に腰掛けてこう口にする。



「お前の父親の話をしよう」



 あまりに脈絡なく。

 しかし、どこか温かい声で。



「うん、聞かせて?」





 だから、ボクはそれに耳を傾けることにした。

 まるで御伽噺を聞く子供のように。



 


もう一話書けそう……!



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「基礎しかできない錬金術師が最強になる話」新作です。こちらも、よろしくお願い致します。
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