5.劣勢、そして打開策。
次回、主人公の力開放回(予告
応援いただけますと執筆速度が跳ね上がります!(当社比
あとがきを確認いただけますと幸いです!
「くっ、先ほどまでとは……!?」
サーシャの魔法の勢いに、ライネは困惑していた。
先ほどの炎魔法は広範囲を焼き尽くすもの。そのため、威力自体は抑えられていたのだろうか。いまこうして、相手から放たれる魔法に自身の水魔法を打ち込んでも打ち消せなかった。相殺できればいい方で、ほとんどが水を蒸発させて降りかかってくる。
「さぁ、どうしました。水の大魔女ライネ! 現役を退いてからずいぶんと経ちましたが、衰えてしまいましたか!?」
「ふ……! ほざくなよ、三下が!」
サーシャも、自分が押していることに気付いていた。
それが自然と互いを煽る口調に出る。
一方は高笑い交じりに。
一方は苦しい呼吸混じりに。
「ライネ! 大丈夫!?」
「気にするなアラン。この程度の相手、お前の母親に比べれば……!」
少女は思い出す。
もっと、苦しかった戦いの記憶を。
アランの母親――すなわち魔王の力は、こんなものではなかった。
それこそ、魔法の撃ち合いになれば敗北必須。
あの手この手で掻い潜り、薄氷の上を進むような戦いを強いられた。
「考え事をしている余裕、あるんですか?」
「なっ……!?」
その時だ。
サーシャがライネの隣に出現したのは。
おそらくは転移魔法の類。隙が大きいものであるため、使用してこないと踏んでいたが――ライネは自分の勘が鈍っているのを恨んだ。
相手の言う通り、自分が戦線から退いて十余年が経過していた。
そのことによる差は歴然としている。だから――。
「諦めなさいな!」
――ここまでか、と。
ライネはゆっくりと、サーシャの振りかぶったダガーを見た。
その瞬間――!
「なっ!?」
甲高い音。
「大丈夫――じゃないでしょ、ライネ!?」
「アラン……?」
先ほどまで陽炎を相手にしていた少年が、間に割って入っていた。
その姿に、ライネは――。
『まったく、お前は意地を張りすぎなんだよ』
――今は亡き、大好きな人の姿を幻視した。
◆
「ライネ。一つ、いいかな」
ボクはサーシャが距離を取ったのを確認して、小声で提案する。
彼女は肩で息をしながら、小さく眉をひそめた。
それを見て、ボクは言う。
「さっきの水魔法の使い方、教えてほしい」――と。
するとライネは驚き、目を見開いた。
「馬鹿か!? 身に余る魔法を使えば、すべてを失うぞ!?」
そして、首を左右に振る。
それもそのはず。ボクの提案は馬鹿げていた。
魔法というのは、その者に適したそれでなければならない。
要するに、弱い者が強力な魔法を使えば、一瞬にして全身の魔力が消えてしまう。そうなると、死ぬより恐ろしい結末が待っているとされていた。
だけど、今はもう――。
「迷っている暇はないよ。大丈夫、それに――」
ボクは肩越しに彼女を見て、微笑みかける。
「『やってみないと、わからないだろ?』」――と。
その言葉を聞いて、ライネはまた驚く。
そして少し目を伏せてから、小さく笑った。
「本当に、言うことまで同じなんだな。知らないくせに」
「ライネ……?」
首を傾げると、少女はこう言う。
「あー、分かったよ。その無茶ぶりは遺伝だな! ――最大限のサポートはするが、下手をすれば身体の組織が崩壊する。それでもいいか?」
それを聞いて、ボクは笑った。
「あぁ、よろしく!」
背中に、ライネの小さな手が触れるのが分かる。
そして淡々と、彼女は魔法の詠唱を開始。
ボクはそれを繰り返しながら、サーシャを睨みつけた。
さぁ、戦いの終わりは――もうすぐだ。
次の更新は、とりあえず本日中に。




