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どこかの狭間で

そこで飯を食うではない。虫が寄ってくるではないか。


そこで用をたすではない。吾の家が汚れるではないか。


そこで寝るではない。吾の花が潰れるではないか。


しかし、小僧。お前は何故ずっと泣き続けているのだ。


 最初にあやつを見た時は吾の領域に入ってきては飯を食うたり、小便を木にまき散らしたり、いつの間にかに吾の家に寄りかかり寝ていたりと呪い殺してやろうかと思っていたが吾はあやつがいつも涙を流していることに疑問も持ってしまい、とうとう話しかけてしまった。


  小僧。何故に泣いておるのだ。


「僕はみんなと死にたかった。父さんや母さん、村長達と一緒に死にたかった。町の人は嬉しそうに英雄とか言って、褒めているけどここに町が無ければ、みんなは死なずに済んだ。僕はみんなに生きろと言われたけど一人ぼっちは悲しい、辛い。みんなのところに行きたいのに夢で来たら駄目って母さんが僕の頬を叩くんだ。


 男は人目がある所で泣くのは駄目だって父さんが言っていたから悲しくて辛いときは誰も来ないここで泣いてるんだ」


 そうか。今も悲しいのか。


「今もみんなが死んで悲しいけど、あの時に何も出来なかった僕自身が憎いし虚しくなって泣いているんだ。あの時に僕にも力があれば、みんなを助けられたかもしれない」


 小僧が一人増えてたところで何も変わらん。


「あなたに何が分かるんだ!? 僕が一匹でも魔物を殺していたら父さんや母さんは生き残っていたかもしれないじゃないか!?」


 そう、喚くな。確かにお前が魔物を殺していたら両親は助かったかもしれないが何回繰り返そうがお前が死にかけたらお前の両親や村人はお前を生かす為に死ぬだろう。


「……」


 それが親としての責務。先を生きる者の宿命だろう。夢で両親に生きろと叱られるんだろう? それが答えだ。お前は生きなければならない。既にお前の命は一人のものでない、お前を生かそうとした者達の命も背負っているのだ。


 まだ、戻って来ない者達の為に泣くのか。違うだろう。お前は死者たちから前に進むことを望まれてるのだ。


「責務とか宿命とか僕には分からない。僕はみんなにずっと生きてて欲しかった。でも、貴方と話していて、いつかは僕もみんなの気持ちを理解できる日が来るんだと思いたい。あの時、死ぬことが分かり切ったのにみんなが僕と分かれる時に笑顔だったのかを」


 そうだ、小僧。お前は生き続けなければならない。その為にこの世の理不尽にも打ち克つ力をつける必要がある。このエリザベート・ミュラーが吾の全てを授けよう。これからは吾のことは師匠と呼ぶがいい。


「……僕はそんなことは頼んでいないんだけど」


 あれから五年も小僧はなんだかんだ言って、吾の修行についてきた。勢いで始めた修行であったが小僧の素質は今の世界では非常に高い分類であり、能力は伸びに伸びた。



 懐かしいな。免許皆伝になって、別れて十年。いい男になっておるだろうな。そして、秘めたる復讐心はどうなっているやら。久しぶりに会いに行ってみるかの。

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