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二話 開拓村

 馬車が荒れた道を進んで行く。俺が子供の頃に何も考えず必死に走り続けた道だ。あの時は無力で知識も無く、村の皆の犠牲のおかげで俺は生き残るが出来た。村長達と両親の町に逃げろと言う声と切ない笑顔が十年以上経っても鮮明に思い出す。


 村長からの援軍要請で行軍していた伯爵軍に合流することが出来た俺は倒れて、次に目を覚ましたのは伯爵様の屋敷だった。その後、聞いたことだが俺の村は村長が団長を務めていた傭兵団が南方公爵との契約で大森林から襲来する高位の魔物を食い止める為に作られていた村だと教えられた。


 その契約でせいで両親も村の皆も逃げることは出来なかった。残党狩りを終え、帰還したグラハム伯爵には謝罪され、村の最後を聞いた。下級が三百体以上、中級が百二十体、高位が十五体を討取るも村人は全員戦死。亡骸は村を中心とした戦略魔法に巻き込まれたが原因で残っていなかった。


 何故、村の皆が亡くなったと分かったのかは南方公爵が所有していた魔法契約書に書かれた村人の名前が全員分、生存を意味する黒色から死亡を意味する赤色に変わったからだった。


 最も剣と魔法の修行に専念していれば、あの場で村の使命で優しかった両親と村の皆と死ねたのではと考え、独り残された悲しさと悔しさで胸が一杯になってしまう。


「手から血が出ておりますぞ」


 気づかないうちに拳を強く握り締め過ぎたせいか、血が指の隙間から流れて落ちていた。同行している役人が包帯をこちらに渡してきた。


「ありがとうございます」


「いえいえ、ご当主様から貴方様を予定地まで無事に送り届けることを申し使っていますので」


「グラハム様は相も変わらず、お優しい」


「いえ、ご当主様だけでは無く、南方領民全員の総意ですよ。護国の英雄達の希望と言われている貴方様が英雄達が眠る大地に戻るということは南方領に住む民には安心と希望が満ち溢れることと同義でありますから」


 役人が言った『護国の英雄』は魔物の氾濫を命を投げ打って、最前線で食い止めた村長達のことである。そして、俺はそんな英雄達が残した未来の英雄ということで護国の英雄達の希望と呼ばれていた。全ては南方公爵が魔物の氾濫が起きたことを薄れさせるために流したお涙頂戴の物語のせいである。


 グラハム伯爵は公爵の政略を止めきれなかったと言い、俺に謝ってきたがあの時は何も考えらず、どうでも良かったが今となっては村の皆を政治の道具されたことに苛立ちを覚えていた。


「ここが開拓予定地となります。開拓についての規則などは許可証に記載していますのでそちらをご覧ください。蛇足ですが西に五十ダル程で貴方様の故郷であり、英雄達が眠るハルモニア村跡があります。


 最後になりますがご当主様からの伝言で開拓が嫌になったり失敗などしたらすぐに言ってくれ。騎士団のポストを空けると。では、これにて私は戻ります。いつか会う日までお元気で」


 頭を下げて、来た道を引き返す馬車を見送った。これから作業開始しても夜までに簡易的な家も造れないから作業は諦めて、魔除けの魔法陣とテントを張って、ゆっくり休むことにした。久しぶりにあの日の夢では無く、両親と近くの山で食事をした楽しい夢を見た。


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