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友達に話したら、
11.傘一つ分の距離
雨の日の夜、仕事の愚痴を聞いてもらいながら友達と帰路につく。
お互いの傘の端が当たるのがもどかしい。
「また話聞くから」
優しく笑う彼。同じ傘の中であれば、もっと近くでその顔が見られるのに。
「……彼女が悲しむよ」
所詮私はただの友達。
傘の角度を変える。滲む涙の意味に、気づかれないように。
12.ばけものの恋
好きな人ができた。私はその人に、近づきたいと思った。
だからその人と同じ姿形を得るために、魔女と契約を交わした。彼に近づけた。嬉しかった。
けれど
「人間ごっこは楽しかったかい?」
冷たく目の前で笑うのは、愛しい彼。
彼の手が私の首にかかる。
最後に私の目に焼き付いたのは、彼の涙だった。