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私なりに
57.銃口に一輪の花
銃口が私に向けられる。殺し屋の彼は私にとっても標的。彼に倣うように銃を向けた。
「物騒な物向けないでよ」
「お互い様だろ」
次の瞬間、2人とも引き金を引いた。
「……なんで」
彼の驚く声が聞こえる。私の銃は、空発だった。
——私に彼を殺すなんて、できないのよ。愛してしまったのだから仕方がない。
58.万能薬と不治の病。
『眠れない……』
彼にメッセージを送る。数十分後、スマホが震え始める。
「大丈夫だよ」
響く彼の声に安心感が募り、ストンと眠りに落ちた。彼は私にとって睡眠薬のようだった。
——しかし彼を失った今、私は不治の病にかかったかのようで。
『眠れない』
その言葉は行き所をなくし、私の中に溜まっている。




