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その自分の
39.とある殺人事件の動機
彼は何でも出来た。勉強も運動も何でも出来た。
「大したことないよ」
僕が褒めると、彼は何でもないようにそう言う。そんな彼は眩しかった。そんな彼は憎らしかった。
彼になりかわりたい。その気持ちは強くなる一方だった。
——醜い嫉妬心に包まれた、その日僕は才能を埋めた。
彼は僕の双子の兄だった。
40.蝉にはなりたくない
「蝉ってなんで鳴くのかな」
「さぁ?」
はぐらかした僕の返しに彼女はくすりと笑う。
「求愛のためだよ」
「へぇ」
「蝉みたいに鳴かないの?私は君が鳴いてくれたら、すぐ隣に行くのに」
「バカ言うな」
病院で出逢った僕達の病状はお互い重くなるばかり。
夏の先の季節を、僕達は一緒に見れるのだろうか。