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それが、とても
27.「愛してる」だけが聞き取れない病。
たまに、彼が何を言っているのかわからなくなる。それは私の病気のせいらしい。彼はその時いつも、悲しそうな顔をしていた。
ある日のこと
「月が綺麗ですね」
彼の言葉に、一説を思い出す。
「それってI love youってことでしょ」
半分冗談だった。
しかし彼はその一言に
「うん」
頷き、笑って涙を流した。
28.本気で吐いた嘘。
幼い頃から、女手一つで母に育てられた。
沢山苦労をかけた。笑い合える日もあれば、喧嘩ばかりの時期もあった。泣かせたこともあった。けれど私は、母のことが大好きだった。
「再婚しようと思ってるの」
18歳のある日そう告げられた。
「いいと思う」
私は笑った。
それは、私が母に吐いた最初の嘘だった。