63 魔力測定
「さて、魔力測定を始める前にだ。
そもそも魔力測定をする理由は何だと思う?」
スヴェンが椅子に座っている生徒達に問題を出す。
自分の魔力量を知るためだろ。あれ? そのまますぎるか?
「魔力測定をする事で自分の魔力量を知ることで、戦闘での立ち回りが変わってくるからだ。
どんなすごい魔法使いでも魔力が無限にあることなんてありえない。戦闘中に魔力切れを起こしたらその魔法使いの人生はそこまでだ。
だから自分の魔力量を知っておいたらどこまで戦えるのか、撤退するべきなのか判断材料になるし、長生きするために役立つわけだ。
それに、周りとの魔力量を比較して役割の分担にも使える」
確かに魔力量が分かれば無闇に強力な魔法をぶっ放す事は無くなりそうだけど、大体感覚とかで分かったりしないのか。
まぁ、周りとの魔力量の差が分かったりしたらチームを組むときは便利そうだけど。
「じゃあ、やりたい奴から先生の前に並べ」
その言葉に主に男子達が一番にスヴェンの前は並び始める。
このクラスのほとんどは貴族の筈だけど金持ちだから家に魔力測定できる機械くらいありそうだけどな。
一列に並び終えるとスヴェンが床に置いてあった機械を机の上に置く。
片手では持てないくらいの大きさの水晶が板から出た黒い器具に固定されている。
「これが魔力測定器だ。この水晶に触れると自動的にその者の中にある魔力量を数字で表してくれる。
Sランクだけで言うなら一年の平均が3800くらい、二年の平均が9520くらい、三年の平均が17050位だ。
一流と呼ばれる魔法使いの魔力量が15000くらいからだから結構いい数字だろう。
それと、魔力が一番増える時期は十二歳から十五歳の前半までだ。その後はほとんど変わらなくなる。今、魔力が少なくても伸びる可能性は大いにあるから心配するな」
「先生ってどのくらいなんですか?」
前の方に並んでいた男の子が質問する。
国立の魔法学院教師だからそれなりの魔力量なんだろうな。
「いや〜、俺は恥ずかしいことにあんまりなくてね」
そう言いながら手を魔力測定器の上に置く。
すると数字が上に描き出される
2840
「あぁ、勘違いするなよ?
この学院の先生たちはもっといい数字だからな? 確か高い人で五万くらいあったはずだ。
よし、じゃあ始めよう」
スヴェンが一番前に居た子の手を魔力測定器の上に置くように指示をする。
浮かび上がった数字は3088。
「うわぁ、平均もねぇのかよ……」
「そう落ち込むな。さっきも言った通り今はよく伸びる時期なんだから」
それでも、スヴェンの魔力を超えてるのかよ。
そういえば、ユリシアってどこのくらいあるんだろう?
「ユリシア、魔力量測ったことあるの?」
「あるわよ。十五の時に測ったのが最後だったと思う。確か百二十万くらいだったわよ」
は? おいおい。
文字通り、桁が違うじゃねぇか。
「ステラは?」
「私はまだ測ったことないよ」
「じゃあ今回が初めてってわけね。まぁ、旅の時も見てたけどあれだけライトニングを疲れもなく放ってるんだから五万ぐらいあるんじゃない?」
じゃない? と言われても分からんがこの学院教師の最高が5万とか言ってたからそこそこいい数字だろうからいいか。
「そんなけあれば十分だな」
「え! ステラって魔力数値五万もあるの!?」
ユリシアとの話が聞こえたようで後ろからセレスの驚いた声が聞こえてくる。
「推測だよ。実際測ったことなんてないから分からないけど」
「そうだよねぇ、推測だよね。一年生で五万なんていたら化け物級よ。
流石にそんなにないわよ」
流石にないと笑ってくる。
あ、うん。
五万で化け物級なのね。俺の前に言葉じゃ表せないくらいの怪物いますけど……
「セレスは魔力測定したことあるの?」
「私はつい最近やったよ。確か6819だったかな」
「結構いい数じゃない」
ユリシアが意外と行った表情でそう言う。
やめろ、ユリシア!
お前が言うと煽ってるようにしか聞こえないから!
これから頭おかしい数字叩きだすんだから!
「そうかな? わたし的には入学までに一万を超えたかったんだけど」
「一年生の平均も軽く超えてるしすごいと思うよ」
俺がそういうと随分と嬉しそうな表情をする。
あぁ、心が痛い。
ユリシアのせいで心が!……
「おい、ユリシア次お前だぞ?」
スヴェンがユリシアに声をかける。
前を見ると既に全員終わったようだ。残るはユリシアと俺とセレスだけらしい。
「手を上に置いてくれ」
そう言われてユリシアが魔力測定器の上に手を置くと数字が浮かび上がる。
明らかに今までとは桁が違う数字が。
「なっ! 2583548!?」
スヴェンが椅子を蹴って立ち上がり数字をまじまじと見つめる。
「見間違いじゃ、ない?」
「あれ? 前より上がってる?」
あれ? 前より上がってる? じゃねぇ!
ほぼ倍になってんじゃん!?
上がったとかそうゆうレベルじゃないでしょ!?
「はははっ、俺は夢を見ているらしい。
ありえない、世界最高の魔力量を誇るユリシア・メルヴィを軽く凌駕している。
あぁ、やっぱりこれは夢か……」
そのユリシアが今目の前にいますけどね。
ありえないもの見たといった表情でスヴェンは後ろにある壁に頭を打ち付ける。
ガンッ。
「い、痛い?
まさか、本当に? 一年生でこの魔力量、いったいどこまで上がるんだ?」
「あ、そっか。今の身体は十二歳時のものだから引き継いだ魔力からまた上がり始めてるってわけね」
ユリシアがなるほどと言った表情で俺の方を向いて言ってくる。
「これなら超広範囲攻撃のオリジナルとか作れそうね」
「試し打ちとかで、王都無くなっちゃった。とか、やめてよ?」
ユリシアなら普通にやりそうで怖い。
「流石にそこまでしないわよ。私のこと少し常識ない目で見過ぎじゃない?」
え? ないでしょ。
ユリシアが俺の言葉に少し頬を膨らませた。
「いや、この魔力測定器が故障した可能性もあるよな」
何かを考えていたらしいスヴェンは自分の世界から帰還して自分の手を魔力測定器に置く。
2840
浮かび上がる数字に変わりはない。
「……故障していないの、か?
だとしたら本当に……?
いや、そんなことは後でいいか。次ステラ、手を置いてくれ」
残り二人だからさっさと終わらせてから考えようとしたのか魔力測定を続けるらしい。
「はい」
俺は返事をして魔力測定器に手を置く。
すると、バキッ。
「「え?」」
「は?」
俺と隣で見ていたユリシアの声が重なり、遅れてスヴェンが声を出す。
魔力測定器の水晶にみるみるうちひび割れが周り、とうとう全体にヒビが回った。
次の瞬間水晶は粉々になり弾け飛んだ。




