60 髪
「んっ……もう8時かそろそろ起きないとな」
目が覚めたので時計を確認すると既に授業開始一時間前だったのでそろそろ起きないとまずい。
いくら通学にかかる時間がゼロと言っても寸前まで寝ていたら遅刻なんてことになりかねない。
この世界では目覚まし時計なんて便利なものはないのだ。二度寝なんてしたらきっと昼過ぎまでは起きないだろう。
「ユリシア、朝だよ。起きて」
本来ユリシアが寝ているはずのベットではなく俺の隣で寝ているユリシアに声をかける。
結局ユリシアと一緒に寝てしまったが、一度寝たらもうこの寮で生活してるうちはずっと同じベットで寝てくるんだろうな……
「……もう? 眠たいからもうちょっと」
「ダメです!」
ユリシアから布団を引き剥がしす。
「朝食どうする?」
この寮には一室一台冷蔵庫があるようなので昨日のうちに買い物は済ませてある。
軽い朝食くらいなら作る余裕もあるはずだ。
「いらないわ。そんなにお腹減ってないし」
「じゃあ、私もやめとく」
寮の中でも誰かに聞かれると面倒なのでユリシアと二人の部屋でも俺とは言わないことにしている。
朝ごはんが要らないとなると学校の準備をするか。
とは言っても、まだ教科書も配られてないし特に持っていくものもないんだよな。
歯を磨いて、制服きたら準備完了か。
洗面台は無いのでキッチンで歯を磨いてクローゼットを開けて俺とユリシアの制服を取り出す。
「ユリシア、はい」
少し着替えるには早いが制服を渡しておく。
俺はパジャマを脱いで制服に着替えるとやる事も無くなったので椅子に座って少し時間が経つのを待つことにした。
そういえば入学試験の時ユリシアが自分の想像した魔法を作れるとか行ってたよな。
高度な魔力コントロールと莫大な魔力が必要とか行ってたけど、どうやったら魔力のコントロールとかうまくなるんだろ?
「ねぇ、ステラ」
「どうかした?」
「もしかしてそのまま学校行く気?」
「え、うん、そうだけど」
「はぁ……」
ユリシアがため息をつきながらベットから起き上がり引き出しからくしを取り出した。
「ちょっと今日はいつも以上に寝癖が付いてるわよ。とかしてあげるからこっちきなさい」
え?
そんなに寝癖ひどいか?
所々跳ねてるけど髪サラサラのままだし気にすらほどでもないような気がするけど。
「はーい」
とかしてくれると言うのならやって貰おう。
俺は朝から降りてユリシアの隣に座る。
ユリシアが髪の上の方からくしを入れていく。
「綺麗な髪なんだからもったいないでしょ?」
確かに綺麗だよなぁ。この髪。
初めて見た時は性別変わっててそれどころじゃなかったけど。
「と言っても、髪を見てもらいたい人とかいるわけじゃないし」
今も今後も。
「そういう問題じゃないわよ」
優しい手つきで上から順にくしを入れていく。
「慣れてるみたいだけど人の髪とかす機会なんてあったの?」
冒険者のイメージ的にそんな場面なさそうだけど。
「……昔妹がいたのよ。毎朝毎朝、学校に行く前には私のところにくしを持ってきてたから、やってるうちに覚えちゃったのよ」
妹がいた。
今の言い方を聞く限りもうこの世にはいない感じの喋り方か……
そもそもそんなに懐いてる妹がいたら妹にぞっこんで冒険者になって放浪なんてしてないだろうしな。
「はいっ、お終い。寝癖も無くなって整った髪になったじゃない」
「ありがと、ユリシア」
「そろそろ行くわ。制服着るからちょっとまってて」
それからユリシアが制服を着てから寮を出て校舎へと歩く。
校舎までは二、三分くらいだ。
教室に着くともうすでにほとんどの生徒が登校済みだった。
「ステラ、ユリシア、おはよう!」
入るとセレスがこちらに気づいて駆け寄ってくる。
「おはようセレス」
「おはよう」
「今日ってどんな授業あるのかな? 楽しみだよね〜」
「授業内容聞いてないしね」
セレスと喋り始めると後ろドアが開く。
「はーい、全員席につけー」
スヴェン先生が入ってきて声をかける。
時間的に余裕だったような気がするが随分と髪をとかす時間が長かったらしい。
俺たちはそれぞれ昨日と同じ席に座る。
「さて、今日の授業を先生は伝え忘れていました」
いや、ダメじゃん。
「なので今伝えます。
入学してから第一回目の記念すべき授業は、演習場で魔法訓練をします」




