52 国王
本が詰め込まれた本棚や部屋の右がわには見るからに高級そうなソファーなどがならんでいるデリウス王国王城の執務室でデリウス国王は執務作業をこなしていた。
コンッコンッコンッ
国王が仕事をしている机の延長線上にある扉がノックされた。
「入って構わんぞ」
国王がそう言うとゆっくりと扉が開かれる。
「何かあったかボルガよ」
国王は執務作業を一旦やめ顔を上げ自分の執事であるボルガへ顔を向ける。
五十代くらいの執事の男性だ。
「デリウス魔法学院の方から連絡がありまして、実技試験に使用された魔法金属であるオリハルコンで加工された的6個が二名の受験者によって破壊されたと連絡がありました。
一応経営者である国王に連絡を入れておこうと思ったらしく」
「ほう、まさかあの的を破壊するとは。ここ15年間使ってきて入学試験で破壊されたことなど一度もなかったと言うのにな。将来有望だな、はははっ。
セレスが主席をとると言って息巻いていたがこれは無理かもしれんなぁ」
「受験前はセレスティナ様なら主席をとるのも難しくないと思いましたが、流石にこれは厳しいかもしれませんな」
「して、その的を破壊したのは貴族か平民か?」
「平民でございます」
「ほう」
国王が感嘆の息をこぼす。
「魔法教育を幼い頃から受けている貴族ならまだしも経済的に魔法についての家庭教師を雇うことが難しい平民からそんな才能のある子がでるとはな」
「卒業後は我が軍に入ってくれないものですかな」
執事ボルガの言葉に国王は首を横にふる。
「周りから見て、天才や逸材と呼ばれるならまだいいが入学試験でオリハルコンで加工してある的を破壊するような人間は規格外、圧倒的、化物そんな様な人間がほとんどだ。SSランク冒険者のようにな。
彼らは強さを持っているからこそなんでもできる。
いくら金を積もうと、どれだけ名誉ある称号を与えようと彼らを縛る事や制御することはできない。その全てが自分の力だけで手に入れられる。それに彼らはそんなちっぽけなものに興味はないさ。
ボルガお前も一人心当たりがあるだろう?」
国王が思い出してため息を漏らす。
「世界最強の魔法使い、ユリシア・メルビィのことですか?」
「あぁ、そうだ。パウル男爵は治めていた街バルカロスでな、孤児院の子供たちを連れ去り子供達の中にいた召喚士のスキルを使い魔物を召喚して隷属させようとしたらしくてな」
「民を守る側でありながら、民を殺そうとしたのですか?」
「あぁ、その通りだ。
その一件をユリシア・メルビィが解決したそうでな。手紙が来たんだよ。
助けた孤児の子で可愛い子がいたらしくてな、手紙に、早く領主をどうにかしないとどうなるか分かってるよね? なんて書いてあってな。
早く対処しないと何をされるかわかったもんじゃないのでな早急にパウル男爵家の取り潰しおよび爵位の剥奪、無一文にしてどこかの街に捨ててくるように手配したのだ」
「あぁ、先日あんなに慌ててパウル家を取り潰したのはそうゆうわけですか」
「ユリシアのことだ早くしなければ王城を吹き飛ばしにくると思ってな」
「本当に現実味があって怖いですな」
「まぁ、そうゆう事だ。
えーと何だったかな……あ、そうそう。そうゆう規格外の人間は適度に関係を持っているだけの方がいい。
前に一度ユリシアに助けて貰ったこともあっただろう?
あのような人間たちにはたまに助けてもらい後は野放しにしておくのが一番だ」
「そうですな。それと王よもう一つ報告がありまして」
「なんだ? 言ってみろ」
すると執事ボルガは部屋から出て行き少しすると何かを抱えて戻ってくる。
「よいしょっと。王よ新しい仕事です」
テーブルに置かれた書類は自分の身長よりも高いのではないだろうかと国王は書類の山を見上げた。
「おい、なんだこの山は?」
「ご自身が一番よくお分かりでしょう? 今までサボりにサボり溜に溜めた書類の山ですよ。
5日後までにはすべて片付けておいてください」
「ボルガ、お前は余に死ねと言うんだな?」
「いえいえ、滅相もございません。では、私はこれで」
そう言ってボルガは頭を下げて部屋を後にする。
残された国王は。
「こんなのできるわけがないだろぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉお!」
机に積み上げられた書類の山を見て誰に向けたでもない叫び声を上げたのだった。




