16 孤児院の食事
「確かにその方が安全ですね!」
俺は心の中で、おい!と思った。だってこんなにも簡単に決めてしまうのだから。
ルシアの件をレティシアさんに話したら、即許可が降りた。仮にもここの責任者なのだからそんなにも簡単に送り出していいのか?と思う。
レティシアさんから見たら(今は)俺は子供なのに。
さぁ、どうしようか。これで後は俺が決めるだけでルシアが冒険者になるか決まってしまう。責任重大だ。今日一日使ってゆっくり考えよう。
「ねぇ、ステラさん。俺と勝負してよ!」
やんちゃ坊主のヴィルが服を引っ張って、木の棒を渡してくる。短剣くらいの長さだ。俺にチャンバラをしろと言うことか?レックスはどこに行ったんだ?
見てみると、レックスはグロリアとノーラに本を読んでいる最中だった。男の子には本より身体を動かす方がいいのだろう。
「俺はこの孤児院を出たら冒険者になるからきたえてるんだよ」
自慢げに胸を張ってくる。この子も冒険者か……なんというか、調子乗って絶対に死にそうな感じがするよ。
テーブルの横はチャンバラをするには十分すぎるくらい広いのでここで大丈夫だ。
「じゃあ、俺に一回でも攻撃を当てられたらヴィルの勝ち。それでいい?」
「一回なんて直ぐに当たっちゃうよ?本当にいいの?」
「うん、良いよ」
「やぁぁぁぁぁぁあ!」
木の棒を叩きつけてる。俺より身長が十数センチ低いので何ともやりにくい。
俺は遊びといえど負けてやる気は無いので、身体強化を使って全て受け止める。
そして、それを繰り返すこと数十分。
「うっ、うっ」
涙目になってしまいました。
いや、男の子なんだからそれくらい我慢しようよ。メンタル弱すぎじゃない?
結局レックスが来て、
「本物の冒険者に当たるわけ無いだろ?」
と言って慰めていた。子供相手に身体強化を使うのはやり過ぎかな?
その後は、子供に遊ぼと言われることもなく、端っこの方で壁にもたれかかっていると、だんだん意識が遠くなって眠ってしまった。
◇
「ステラさん、ステラさん」
「…………ん、どうしたのレックス?」
「夕飯ができました、冷めないうちにと思って」
あぁ、もうそんな時間か。一時間くらい寝てしまった。夕飯は自分で買いに行くつもりだったのに作ってもらってしまうとは申し訳ない。
「えぇー、今日もこんだけ?」
ヴィルの不満げな声が聞こえてくる。
「ごめんね、我慢してね……」
ヴァルの謝るレティシアさんの声も聞こえてくる。
テーブルに着くと、あまり具の入っていないスープに、拳程しかないパンがあった。
これは俺が想像したザ、ファンタジーの食事とほぼ一緒だった。
でも、孤児院って貴族とかから補助金を貰って経営してるんじゃないの?流石にこれは少な過ぎる。当然育ち盛りの子供はもっと食べたいだろう。
「レティシアさん、孤児院って貴族から補助金とか出ないんですか?」
「基本はでますよ。この孤児院も一年前くらいまではしっかりと普通の暮らしが出来るくらいには貰っていたんです」
「何かあったんですか?」
俺が聞くと、少し表情を曇らせて話し始めた。
「一年前までは、ここを建てた院長が責任者をしていました。その院長の時は貴族の方もしっかりと補助金を出してくれていたのですが、院長が亡くなって責任者が私に変わってから補助金が出なくなったんです。
家族の方に補助金を出してほしいと頼んだら、『俺のものになるなら出してやる』と言われました。その後も何度も孤児院に来て、同じことを……」
なんだよその貴族、キモッ。
「身体が目的ですか……」
俺がそう言うとレティシアさんは否定した。
「いえ、違うんです。身体も少なからず目的かもしれないですが、それ以上に欲しいのは私の魔力です」
魔力?確か魔力は誰にでもあるって言ってたよな。何か特別な魔力なのか?
「それはどう言うことですか?」
「召喚魔法というのを知っていますか?」
「初めて聞きました」
「召喚魔法というのは基本術者の流し込んだ魔力によって何が召喚されるか決まるんです。だけど、私のスキル『召喚者』はごく僅かな魔力で強力なものを召喚することができます。
普通の召喚でも、人数を増やせば強力なものを召喚することはできる。だけど、召喚されたものは一人の魔力によって召喚されないとその人を主人とは認めない。
私のスキルには、少ない魔力で召喚する以外にももう一つ、強制的に隷属させる効果もあるんです」
そう言うことか、ごく僅かな魔力しか使わないから一般人のレティシアさんでも強力なものを召喚できる。そして、召喚したものを自分に隷属させれば強力な兵器になる。
自分の護衛、近くの魔物の討伐、街付近の警備、場合によっては暗殺とかも可能だろう、使い道は多いな。
ルシアが冒険者になりたい理由はこれか?貴族の援助がないなら自分で稼ぐって考えたのか。
それにしても、流石にこれは……あ、そういえばアイテムボックスにレッドボア肉が入ってるな。
「レティシアさん、これレッドボアの肉なんですが、使ってください」
「え!?何処から!?……そんなの貰うわけにはいきませんよ。こちらは返すものもありませんし」
「流石に、これを見たらちょっと……べつに買ったわけでもないので大丈夫ですから」
すると、ヴァルが「肉だぁぁあ!!」と叫んでいたり、グロリアがずっと肉を見つめていたり、したこともあって肉を焼いてくれた。一人70グラム程度しかないが少しは食卓がマシになった。
「本当に良いんですか頂いても?」
「遠慮せず食べてくれていいよ。てか、レックス目茶目茶よだれ出てるぞ」
肉が出てきてから、レックスのヨダレが半端ない。どれだけ肉食ってないんだよ。
ルシア達は出てきた肉を何も言わずに食べてくれた。
それにしても、思った以上にこの孤児院は問題を抱えているみたいだ。このまま放って置くには俺の心が痛む。特にルシアに対して。
「レティシアさん、当分の間ここに補助金を出させてもらえませんか?」
きっと、1日大銀貨1、2枚もあれば食事に関してはどうにかなると思う。
「流石にそこまでお世話にはなれません!ステラさんに負担が!」
本当にレティシアさんはうるさい人だ。人の好意を素直に受け取ればいいのに。
この後、レックスとルシアに手伝ってもらい説得した。
「お姉ちゃん、ここが私の部屋だからここで寝てね」
夜はルシアの部屋のベットで寝ることになった。二人で。
ずっと抱きついてくるのであんまり眠れなさそうです。




