10 魔物の買取
「レッドボアを狩っただと!?」
相変わらず髪の毛のないアドルフの声がギルド内に響く。
「うん、だからそう行ってるじゃん。高価な部分とか分からなかったから全部持って帰って来たけど」
「どうやって持って帰って来たんだ?相当重かっただろ?」
全然重くなかったよ。アイテムボックスに入れて後は歩いて帰って来ただけだから。
「アイテムボックスに入れて帰って来たから重くはなかったな」
別にバレても構わないので正直に言う。この世界にアイテムボックス持ちは珍しいが居るらしいし大丈夫だろう。どうせ隠したところでいつかバレるし、隠していると不便だ。
いちいち町の近くで魔物を出して引きずって来るのはめんどくさい。
「アイテムボックスまで持ってるのか!?」
いちいち驚くなよ、話が進まないだろ。
「それで、ボアも入っているから依頼の達成の確認とレッドボアの買取をしてもらいたい。あと、レッドボアの肉少しだけ貰えない?」
レッドボアの肉は美味しいらしいので、今度魔物狩りに行った時にバーベキューでもして食べようかな。それまでに腐ったりしたら嫌だけどそれはなんとかしよう。
「あぁ、肉をやるのは構わないが買取価格から肉の分を差し引いた金額になるぞ?」
「全然いいよ」
「なら、こっちに来てくれ」
アドルフについて行くと、ギルドの右側の通路に入って行く。奥には広い空間があり、何名かの人が魔物を解体していた。
「ここに出してくれるか?」
言われたとうりにボアとレッドボアをアイテムボックスから出す。
ん?レッドボアから血が流れ出している。絶命してから30分は経っているはずだ。こんなに綺麗に血が流れ出すものだろうか。まるで今倒されたばかりの様だ。なんていうか新鮮な気がする。
アイテムボックスに時間停止機能でもついているのだろうか。
「ボアは一発で仕留めたのか、でもレッドボアの方は結構傷ついてるな」
そりゃ、雷矢で死ぬまでブスブス刺しましたから。
「まぁ、ボアの方は依頼達成だな。レッドボアの肉はどれくらい欲しい?」
「そうだなぁ」
どうせ俺一人でしか買わないだろうし、バーベキューの肉の量は大体男性が500g、女性が300gぐらいだった気がする。まぁ、500gぐらいでいいかな。
「500gぐらいでお願いします」
「分かった。じゃあギルドの方で待っててくれ、解体が終わったら呼ばれると思うから」
そう言われたので、ギルドの方へ戻って酒場のテーブルではなく横に、待っている人が座る椅子が並べらていたのでそこに座ることにする。
酒場の方を見れば、酒を飲んで騒いでいる連中が多数。確か昨日もこんな感じだった。昼からこんなに酒ばっか飲んで、本当に働いているのか?と聞きたくなる。
「あれは……亜人か……」
首輪をしている。タヌキの耳が生えた、肩くらいの髪の長さの女の子。10代後半といったところか。酒を飲んでいる4人組冒険者の後ろに立っており、明らかに仲間という雰囲気ではない。
アイテムボックスが珍しいなら、荷物持ちか、それとも一緒に戦わされているのか。あるいは囮か。危険になった時、奴隷をエサにして逃げれば魔物からは逃げ切れるか。
この国は亜人に対して優しくないみたいだな。でも、亜人が奴隷って事は、亜人の国では人間が奴隷だったりするのかな?
「おい、嬢ちゃん買取が終わったぞ」
「え?もう終わったの?」
まだあれから10分弱しか経っていないんだが。
「あいつらも解体のプロだからなあれぐらいの魔物そう時間はかからねぇよ」
「依頼の報酬が大銀貨3枚、レッドボアは牙と毛皮、肉を合わせて金貨2枚と大銀貨5枚。両方で金貨2枚と大8枚だ」
結構な量の金になるんだなぁ。それでも、冒険者って金必要そうだからすぐ消えそうだな。何かにつけてかかりそうな気がする。
「そういえば、ゴブリンは買取できるの?」
どうせ買い取りできないと思いおいて来たが、もし買取してくれるなら次から持ってくるが。
「ゴブリンは買取不可だが、討伐報酬が出てるぞ。あいつら繁殖力が強いからすぐ増えるんだ。倒したなら冒険者カードに記録されてると思うが、確認が取れたら報酬が出るが、どうする?」
やっぱり無理か。肉も食えそうにないし、てか食いたくないし何も取れなさそうだよな。
「じゃあ、確認してくれ」
俺は冒険者カードを渡す。アドルフが、カウンターの方で何かにカードをかざしている。バーコードの様なものでもついているのか。
程なくして戻ってきたアドルフに銀貨1枚を手渡される。ゴブリン一匹あたり銅貨2枚ってことか。1日生活するのに宿と昼ごはんが必要だとしても銀貨5.6枚は必要だからゴブリンを1日25匹くらい倒さないと生活できないんだ。辛っ。初心者に優しくないよこの世界!
「アドルフ、アイテムボックスを持ってないパーティーって倒した魔物どうしてるの?」
これは気になった。ボアの依頼は持って帰って来なければいけなかったのに、何も言われなかった。普通なんか声かけるだろ。もしかして引きずって来いとか?
「アイテムボックスが無くても、魔法で作られた拡張バッグがある。値段によって入る量も違うが、バッグと同じ大きさなのに、でかいのが4.5匹入るぜ。
それでも、遠くに行くときは腐らない様に解体して、肉は置いてくるがな」
そんな便利なものがあるのか。
「じゃあ、俺がそれを持っていると思ってたの?」
「いいや、前にアランと戦った時に身体強化を使ってたし、魔法も使えるんだから魔力もあるだろ?だから引きずって来れるかなぁと思ったんだ。本当は貸し出し用の拡張バッグを貸すはずだったんだが……」
忘れてた、というわけか。
「それにしても、まさかギルドに登録して次の日にレッドボアを狩ってくるとは思わなかった」
あ、話題をあからさまに変えやがった。まぁいいかなんとかなったし。
「そんなに珍しい?」
「いや、レッドボアは突進しかして来ないから比較的Dランクでも狩りやすい魔物なんだ。Eランクのウルフとかの方が厄介だな。でも、こんな小さな嬢ちゃんが狩って来たのは初めてだ」
嬢ちゃんでも中身は男だし、若干チート持ちだしただの嬢ちゃんではないのだ。てか、嬢ちゃんじゃねぇよ。あと、突進だけじゃなくて魔法も使って来たよ!
そのあと少し喋ってレッドボアの肉をもらい俺はギルドを出る。まだ、昼過ぎだが宿でも取りに行くか。
◇
宿に向かって歩く、昨日と同じ宿にするつもりだが、今朝ちょっと絡まれて蹴り飛ばしたし大丈夫かな。危険物リストに入ってないよね?
歩いていて思ったんだけど、ワンピースってなんか楽だな。
「おいガキ、何ぶつかったんだよ!鎧に傷がついちまったじゃねぇーか?あぁ?」
歩いていると男の怒鳴る声が聞こえてくる。内容から察するに、日本でもよくある汚れてもないのにぶつかっただけで、買い換えろやこの野郎!!と言ってくるやつだろう。
少し見に行ってみるか。




