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単純な好奇心

「ミナトもランキングに入ってんの?」


聞いてみた。


「うふ」「んー」


ごまかすな。


「なんだよ、ランキングって」


ミナトが訝しげな顔をする。


「隠し事は嫌なんだけどー」


オレの脅しのような言葉にももしおがペロッと舌を出してゲロった。


「抱かれたい男ランキング5位」

「へー。オレが? さんきゅ」

「きゃっ、ステキ」


すっげー上位じゃねーかよ。しかも「抱かれたい男」。


「サッカー部とバスケ部が上位って言ってたじゃん?」

「テニス部ではミナト君だけ入ってるの。他にも7位辺りに将棋部、何位か忘れたけど、理系トップの人も入ってたよ」


ねぎまが説明してくれる。くー。将棋部に成績優秀者まで。なのにどーしてオレは「抱きたい男」に入ってるんだろう。


「うんうん。将棋部の人は駒を指すときの指がセクシーって。理系トップの人は『メガネの向こうからSっぽく命令してほしい』って。ねー、マイマイ」

「しー、シオリン。お口にチャック」


セクシーだと? Sっぽいだと? 清純派のお嬢さんの口からはとんでもない言葉飛び出す。ミナト、引いてるかも。


「へー。Sっぽい命令って例えば何?」


ミナト、ノってるし。


「きゃー。恥ずかしくて言えないよー」


ももしおは両手を頬に持って行く。ノリノリだな。オレのときとテンション違い過ぎ。


「あ、ミナト君と同じ中学だった子から聞いたんだけど、ミナト君って空手やってたの?」


ねぎまが尋ねる。

へ? 初耳。


「あー。幼少のみぎりに少々」

「へー、ミナトって空手できるんだ。知らんかった」

「心強いね、シオリン」


ふわっとねぎまが笑みを浮かべる。同時に笑みの対象がミナトであることにオレの心がざわつく。


「そーだね。頼れるね」


ミナト、スペック高ぇ。ミナトを連れてきたことを少し後悔するオレ。


「宗哲クン、どこまで話したの?」


ねぎまが本題に入ろうとした。


「男の人を調べてほしいとしか伝えてない」


その後、CNPという男が浮浪者風の老人にしていること、その男がももしおの憧れの投資家だったってこと、CNP本人ではなく、浮浪者風の老人から、何をしているのか聞こうとしていることなんかを話した。


「ちょい怖くなってきた」


ミナトがたじろぐ。オレの心の中では黄色の信号がぱかぱか点滅している。

でもさ、ももしお×ねぎまの2人でやらせるわけにいかねーじゃん。どうしてもヤバいってなったら、ストッパーにならなきゃ。例え、空手やってたミナトにかっこいいとこ全部もってかれたとしても。

これだけは言っておこう。


「警察沙汰と判断した時点でオレはバックレるから。通報して犯罪者から恨まれるのも嫌。警察で事情聴取されるのも嫌。家族を心配させるのも嫌」


ももしお×ねぎまを守る立場のはずなのに、オレは堂々とヘタレ宣言をした。ねぎまに見損なわれるかもしれない。それでも、平和をモットーとするポリシーは譲れない。


「もちろん。それくらい、私たちだって同じだもん。ね、シオリン」


ねぎまがジュースの紙パックの細いストローを持つ。指きれー。指先まで柔らかそうじゃん。ジュースで潤った唇も。だめだめ。何に気を取られてるんだよ。

ぺらっとA4の地図がテーブルの上に置かれた。

ポストイット付の横浜駅周辺の地図。


ん?


CNPに憧れているのはももしおのはず。なのに地図を持っているのは今日もねぎま。


「あのさ、ねぎまはどうしたいわけ? ももしおはCNPに投資の世界に戻ってほしいんだろ? ねぎまはさ、ももしおに振り回されてるだけ?」


もうストレートに聞くしかない。


「私?」

「浮浪者風のじーさん達を守りたいのか、ももしおが暴走しないように見張ってるのか。ももしおの言うことなら何でもするのか」

「あはははは。マイマイが? 私に振り回されてるって? 逆逆」


ももしおがケラケラ笑う。


「私はね、知りたいの。単純な好奇心。うふ」


うふっじゃねーよ。


「身を亡ぼす好奇心かもな」

「だって、面白そうじゃん」


オレに言葉を返すねぎま。泣きぼくろを従えて笑う目は悪戯に輝く。たち悪い。


「なんか、ももしお×ねぎまってさ、オレらヤローの想像とちげー」


ミナトが鳩が豆鉄砲喰らったような顔で呟いた。前もって言ったじゃん。ま、オレもねぎまに関しては認識不足だった。


「早速だけど、明日、このコンビニの前で張り込みしない?」

「「へ?」」


提案したのはねぎま。白い人差指が地図の上に置かれた。


「CNPさんはね、ここの通り周辺に現れるの。でね、ここなら繁華街が近いから、4人で長い時間立って喋ってても違和感がないの。こっちのお店の自動ドアが開くたびにエアコンの涼しい風が来るし。ね、マイマイ」


ももしおは嬉しそうに話す。あまりに具体的なとこから「やったことある」って分かってしまう。そういえば、昨日初めて2人を見かけた通りは、指定された場所と目と鼻の先。張り込んでたんだな。


「あのさ、長時間ってのが気になるんだけど。まさか何時間も?」


オレの抗議に、ねぎまはぽってりとした厚めの唇を動かす。


「宗哲クン、地道な努力が実を結ぶの」


腕で胸を寄せたって、惑わされないからな。


「待つしかないかぁ」


オレのBAKA。


「何時からにする? バド部の部活は?」


夏休みの補講は午前中だけ。午後からは前半と後半に分かれて部活がある。前半は1時から3時半。後半が3時半から6時。テニ部の男子は明日は前半。前半なら昼食後に部活をしてその後は横浜駅周辺で飲み食いして帰るってコース。


後半のとき、オレの場合は教室で自習してから部活に参加。部活の後は前半のときと同様に、横浜駅周辺で飲み食いして帰る。

進学校らしく、教室で自習する者は大勢いる。でもって、オレは行ってないが塾の夏期講習に参加する者も多い。優先順位は大抵、学校の夏期講習 > 塾の夏期講習 > 部活動。


「ウチラも前半。男テニも前半でしょ?」

「ももしおちゃん、もう調べた?」


ミナトはももしおを「ちゃん」付け。あだ名に「ちゃん」っておかしいだろ。


「うん。カレシが男テニの子から聞いたの」

「みんなで一緒に帰る?」


ねぎまがステキな提案をする。が、目立ってはいけない。男の嫉妬はメンドクサイ。ももしお×ねぎまとオレが一緒に帰るなんて、姫が平民と並ぶなんて許されない。


「現地集合」


これ絶対。


「宗哲クン、用事でもあるの?」


とねぎま。


「いや。目立つって良くねーよ。事が事だけに」

「目立つ?」

「自分らが学校で目立ってるってことくらい自覚あるんじゃね?」


オレの言葉にちょっと不愉快そうに口元をへの字にするねぎま。ももしおはタコみたいな口元になってる。


「学校で4人で固まるのはやめとくか」


ミナトも同意してくれた。


「そーだね。宗哲君やミナト君に近づいたら何言われるか」

「「へ?」」

「特に宗哲クンは3年のお姉様方の間でも待ち受けにするの流行ってるしね」

「はあああああ!?」

「え、宗哲ってモテんの?」


失礼な確認をするミナト。そこはスルーしてくれ。


「抱きたい男ランキング1位」


⤵⤵ ああ、言っちまった。ももしお、恨む。


「ははははははっは、あははははっは。分かる分かる。すっげー分かる。反応良さそうんだもんな」


ミナト、ウケすぎ。


「きゃっ、ミナト君たら。////// 」

「反応って?! ////// 」


両手を頬に当て赤くなるももしお。ねぎまは首まで赤くしてオレを見つめる。ねぎまと目が合ったオレの顔が発火した。


「もーやめて。恥ずい」


いたたまれなくなったオレはテーブルに突っ伏した。


「悪い、宗哲。羞恥刑しちまった? はははは。な、反応が可愛いだろ? 宗哲って」


ミナトのヤローは、突っ伏したままのオレの頭をわしゃわしゃする。


「やめろって」


頭の手を払いのけ、髪を整えながら顔を上げれば、至近距離にオレを覗き込むねぎま。

! 息止まりそう。

オレはぷるぷると頭を振って、手櫛で髪を整えた。一応頭のてっぺんが立つように毎日ワックスでやってるんだよ。


弄られたけど、まあ、和やかな初顔合わせだよな。偶然だったけど、ミナトを選んで大正解。


ここまで色々話したのに、もおしおは「ぴょんぴょんうさぎ」のことを割愛した。昨日笑われたことを気にしてるんだろな。悪かったよ、笑って。


「あ、そーいえばさ、2人ってカレシいるの?」


さりげなくミナトが聞きやがった。「そーいえば」じゃなくて、きっと1番気になってるくせに。


「「いないよ」」

「じゃヨカッタ」


にっと笑うミナト。無駄に爽やか。


「なんだよ。ヨカッタって」


オレが聞くとミナトは風に髪をなびかせながらもっともらしいことを言った。


「こんな危ないことカノジョがしようとしたら、オレだったら止めるから」

「なんだよ、それ」


けっ。かっこつけてさ。

でもこれって、目の前の2人の超絶美少女はカノジョ枠に入ってないってこと? それとも、好きになったら止めるからねって予告? 恋愛経験値の高いヤツのテクニックは高等過ぎて分からん。


「とにかく決まり! 明日、部活が終わったら集合」


ビシッとももしおが地図の一点を指差した。


「「うぃぃぃぃ」」

「はーい」


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